メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
9日前
治療の対象は、 頻尿、 排尿時痛、 尿意切迫感、 腰痛、 CVA叩打痛*、 発熱などの尿路感染を疑う症状がある患者に限られる。
尿培養をオーダーする前に、 そもそも尿路感染症を疑わない限り尿培養を提出すべきではない。
基本的なことであるが、 尿培養が陽性であることによる感染症コンサルトは意外に多い。 症状がなければ無症候性細菌尿として扱い、 「6.無症候性でも治療すべき疾患がある」 で示す例外を除き治療は不要である。
検査を行う尿は、 中間尿か、 新しく交換したカテーテルから採取した尿でなければ、 正確な評価ができない。
古いカテーテルからの尿やバッグから提出された培養では、 真の起因菌を反映しない。
尿中の白血球やグラム染色を確認することで、 起因菌を早期に推定できる可能性がある。
これらは、 培養結果が出る前の初期治療選択の判断材料となる。
尿路感染は、 下部尿路感染と上部尿路感染に大別される。
下部尿路感染症は、 膀胱炎が代表的である。 膀胱炎は、 一般的には発熱を伴わず、 排尿時痛や頻尿などが主症状である。
上部尿路感染症の一例として、 腎盂腎炎が挙げられる。 腎盂腎炎は、 発熱やCVA叩打痛、 悪寒、 全身倦怠感など全身症状を呈することが多い。 それぞれ治療期間が異なるため重要である。
尿路結石や腫瘍による閉塞性腎盂腎炎では、 泌尿器科的な尿管ステントや腎瘻造設が必要になることもある。
初期から全例に腹部CTや腎エコーが必要とはされていないが、 上記の既往がある患者や抗菌薬治療に反応しない場合は積極的に推奨される。
ベッドサイドでの腎エコーは、 非侵襲的かつ迅速に水腎症の有無の評価が可能である。 そのため、 初期からの実施は有用である可能性が高いと筆者は考える。
「1. 症状がなければ治療は不要」 で述べたように、 基本的には無症候性細菌尿に対して治療適応はない。
しかし、 例外として治療適応がある疾患が3つあるので理解しておく¹⁻⁴⁾。
1. 妊婦
2. 泌尿器科手術・処置前 (粘膜出血を伴うもの)
3. 腎移植患者 (術後1ヵ月以内 : 弱い推奨)
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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