亀田総合病院
1年前
救急外来や内科外来に受診する低酸素血症は、 病歴や身体所見、 血液検査、 血液ガス分析、 心エコー検査、 胸部画像検査などの初期評価で、 比較的速やかに診断がつくことの方が多いと思います。 しかし、 実臨床ではこれらの初期評価だけでは診断困難な原因不明の低酸素血症に遭遇します。
原因不明の低酸素血症における重要な3つの鑑別診断として以下をおさえておきましょう。
シャント疾患では、右心から出た静脈血が、肺で酸素化されることなく左心に流れ込みます。 このため、全身に送られる血液の酸素濃度が低下し、 低酸素血症が出現します。
心房中隔欠損症は心エコーで評価し、 肺動静脈瘻は造影CTで肺動脈と肺静脈の接続を確認します。 肝肺症候群は通常重症の肝疾患患者に認め、 肺血流シンチやコントラスト心エコーで肺内シャントを確認することで診断することができます¹⁾。
血管内でリンパ腫細胞が増殖するまれな形態の非ホジキンリンパ腫です²⁾。 不明熱として遭遇することが多いですが、 肺の血管内にリンパ腫細胞が増殖すると、 肺のガス交換が阻害され、 低酸素血症を起こします。
胸部CTは正常あるいはわずかなスリガラス影を呈します。 特に血液検査で、 LDH異常高値を認めることが診断の手がかりになります。 そのため、 「胸部CTが正常あるいはスリガラス影でLDHが高値の場合はIVLを疑う」というクリニカルパールがあります。 IVLを疑ったらランダム皮膚生検、 骨髄生検などで診断を試みましょう。
悪性細胞が肺の毛細血管や小血管に拡がり、 微小肺動脈における腫瘍塞栓、 内膜の線維性肥厚を引き起こす稀な病態です³⁾。 通常は、 進行癌 (特に胃癌や乳癌) の患者で発生します。 肺高血圧症を合併することが多いです。 経気管支肺生検や心臓カテーテル検査による吸引細胞診で診断します。
上記の3疾患は、 原因不明の低酸素血症として時に遭遇します。 救急外来や内科外来における初期評価で診断がつかない場合は、 これら3疾患を想起することが重要です。
呼吸器内科をもっと深く学びたい方は 「レジデントのための呼吸器診療最適解」 (医学書院) でぜひ勉強されて下さい!
一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先 : 主任部長 中島啓
メール : kei.7.nakashima@gmail.com
中島啓 X/Twitter : https://twitter.com/keinakashima1
亀田総合病院呼吸器内科 Instagram : https://www.instagram.com/kameda.pulmonary.m/
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。