HOKUTO編集部
3ヶ月前

北里大学北里研究所病院 (北研) IBDセンターの抄読会で実際に交わされた治療判断の視点や議論のエッセンスを凝縮してお届けします。
第2回は、 超加工食品の摂取量と、 潰瘍性大腸炎の症状や腸管炎症との関連を調査した最新エビデンスを取り上げます。
Ultra-Processed Food, Disease Activity, and Inflammation in Ulcerative Colitis: The Manitoba Living With IBD Study.
Am J Gastroenterol. 2024; 119: 1102-1109.
炎症性腸疾患 (IBD) において、 高度に加工された超加工食品の摂取と、 症状の増悪や腸管炎症との関連性は十分に明らかになっていない。
成人IBD患者における超加工食品の摂取量と、 症状および腸管炎症との関連性を調査する。
カナダ・マニトバ州の地域ベースIBDコホート (成人潰瘍性大腸炎 [UC] またはクローン病 [CD] 患者135例) を対象とした、 1年間の前向き観察研究である。
食事評価
ハーバード食品頻度質問票を用いて摂取内容・摂取量を調査し、 NOVA分類システムに基づきGroup 1~4に分類した。

エネルギー摂取に占める超加工食品の割合を算出し、 3つの三分位群 (T1=低;T3=高) に分類した。
活動性の定義
症状はIBD症状評価尺度 (IBDSI) を用い、 CDは14超、 UCは13超を 「活動性」 と定義した1年間にわたり2週間ごと (計27回) 測定し、 基準を超えた回数を 「エピソード数」 とした。
腸管炎症は便中カルプロテクチンを測定し、 250 μg/g超で 「活動性」 と評価した。 0、 26、 52週の計3回測定し、 基準を超えた回数を 「エピソード数」 とした。
対象者のうち47例 (35%) がUC、 88例 (65%) がCDであった。
UC患者
超加工食品摂取量の上位3分位群 (T3) は、 下位群 (T1) と比較して、 1年間の活動性疾患エピソード数および活動性炎症エピソード数が有意に高かった (p<0.05)。 以下にT3群 vs T1群の平均値を示す。
活動性疾患エピソード数 : 14.2回 vs 6.21回
活動性炎症エピソード数 : 1.6回 vs 0.6回
また、 年齢や性別、 疾患タイプ、 罹患期間を調整した多変量解析において、 T1群はT3群と比較して活動性疾患エピソード数、 腸管炎症エピソード数がいずれも有意に低かった。
活動性疾患エピソード数 : β=-7.11、 p=0.02
腸管炎症エピソード数 : β=-0.95、 p=0.03
CD患者
症状、 炎症いずれも両群間で有意差は認められなかった。
超加工食品の摂取は、 UC患者における活動性症状および炎症の予測因子となり得る。 また、 超加工食品摂取量の削減は、 UCの病勢を最小化するための食事戦略として検討に値する。

UCとCDで結果が異なった理由として、 疾患の均一性や炎症分布の違い、 便中カルプロテクチンの感度差などが影響している可能性があります。
本研究は、 食事療法を新たに“処方”する根拠ではなく、 「CDだけでなくUCの患者とも、 食事について話題にしてよい」 というエビデンスの一つと考えます。


まさにご指摘の通り、 本研究の本質的な限界です。 超加工食品摂取量が低い患者は、 生活習慣や社会経済的背景が異なる可能性は十分に考えられます。
プラセボを用いた介入試験が困難なテーマであるため、 因果関係を厳密に証明するのは構造的に難しい部分があります。

その可能性も否定できません。 本解析は、 曝露 (超加工食品摂取) より前に存在していた疾患活動性が結果に混入する構造となっています。
本研究は、 超加工食品と活動性変化が関連する可能性に言及した研究結果ですので、 「初診時に一律に介入する」 というよりは、 「病勢が不安定な際に、 振り返る材料として食事内容を検討する」 というのが現実的でしょう。

ベースラインの疾患活動性は、 多変量解析には組み込まれていません。 また、 観察開始時点の炎症指標がアウトカムに含まれていることから、 曝露 (超加工食品摂取) より前に存在していた疾患活動性が結果に混入する構造となっています。
このためデータのゆがみが出ていることが想定されますが、 実臨床データで、 測定ポイントが限られること、 また解析パワー確保のため、 観察期間1年間を1アウトカムにまとめた結果 (妥協の産物) と推測しています。

年齢別のサブグループ解析は行われていませんが、 年齢そのものは多変量解析の共変量として調整されています。 UC患者では、 年齢を考慮した上でも超加工食品摂取と病勢・炎症に有意な関連が認められました。

日本の食文化、 特に惣菜は加工度に幅があり、 本研究で用いられたNOVA分類を、 そのまま当てはめるには一定の限界があると感じています。 今後は、 日本の食生活に即した評価尺度での検証も必要かもしれません。
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター (IBDセンター)

潰瘍性大腸炎・クローン病を中心とした炎症性腸疾患に対し、 消化器内科を軸に多職種が連携し、 先進的な診療と研究を推進する拠点である。 専門医が高度な治療選択を提供し、 IBD診療の質向上を目指して活動している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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