【Lancet Oncol】多遺伝子リスクスコアで層別化した癌検診の効果は?
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海外ジャーナルクラブ

10ヶ月前

【Lancet Oncol】多遺伝子リスクスコアで層別化した癌検診の効果は?

【Lancet Oncol】多遺伝子リスクスコアで層別化した癌検診の効果は?
Huntleyらは、 多遺伝子リスクスコア (PRS) の性能と、 PRSで層別化した高リスク群に対する癌検診の有用性と有害性についてモデリング解析で検討。 その結果、 新たなPRSで層別化した癌検診が乳癌、 前立腺癌、 大腸癌の検出と死亡の回避において、 限定的な効率改善の可能性があることが示唆された。 本研究はLancet Oncol誌において発表された。 

📘原著論文

Utility of polygenic risk scores in UK cancer screening: a modelling analysis. Lancet Oncol. 2023 Jun;24(6):658-668. PMID: 37178708

👨‍⚕️監修医師のコメント

さまざまな推定のもとに計算されているのでクラスター無作為化試験を行うとしてもサンプルサイズの計算などさらに複雑になりそうです。


背景

現在の癌検診プログラムをより効率的に標的化し、 新たな年齢層や疾患タイプに拡大するため、 高リスクと判定された個人に限定するための多遺伝子リスクスコア (PRS) の利用可能性が提案されている。

研究デザイン

方法

  • 英国のNational Cancer Registration Datasetの情報を基に、 8種類の癌の現在、 将来、 および最適化されたPRSのROC曲線下面積の公表推定値を用いた。
  • PRSで定義された5つの高リスク分位 (上位50%、 20%、 10%、 5%、 1%)、 8つの癌について3つのPRSツール (すなわち、 現在、 将来、 最適化) のそれぞれに従って、 癌が発生する相対的な割合、 英国人口平均と比較した癌が発生するオッズ比、 および生涯癌リスクを算出した。
  • PRSに基づく層別化と癌検診ツールとの組み合わせによる年齢層別の癌発見率の最大達成可能率を検討し、 PRS層別化検診の英国の仮想的な新規プログラムが癌特異的生存に及ぼす最大影響をモデル化した。

研究結果

PRSで定義された高リスク群で検出される癌の割合

  • 乳癌症例:37%
  • 前立腺癌症例:46%
  • 大腸癌症例:34%
  • 膵癌症例:29%
  • 卵巣癌症例:26%
  • 腎癌症例:22%
  • 肺癌症例:26%
  • 精巣癌症例:47%

PRSによって回避できると考えられる年間死亡

英国の癌検診を、 乳癌では40~49歳、 大腸癌では50~59歳、 前立腺癌では60~69歳を含む、 PRSで定義された高リスク群に拡大することで、 それぞれ年間最大102例、 188例、 158例の死亡を回避できる可能性があると推定された。

PRSを用いない場合の年間死亡

乳癌 (48~49歳)、 大腸癌 (58~59歳)、 前立腺癌 (68~69歳) を対象としたPRSを用いない非層別化スクリーニングでは、 同等の資源を使用し、 それぞれ年間最大80例、 155例、 95例の死亡を回避できると推定された。

限界

これらのモデル化された最大数は、 PRSプロファイリングやがん検診の不完全な集団摂取、 インターバルキャンサー、 非ヨーロッパ系祖先、 その他の要因によって大幅に減少する可能性がある。

結論

有利な仮定の下、 新たなPRS層別スクリーニングが乳癌、 前立腺癌、 大腸癌の検出と死亡の回避において、 限定的な効率改善の可能性があることが示唆された。 スクリーニングを高リスク群に制限することは、 低リスク群に多くの癌が発生することを意味する。 現実の臨床的影響、 費用、 有害性を定量化するためには、 英国特有のクラスター無作為化試験が必要である。

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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