HOKUTO編集部
1年前
HOKUTOユーザーの医師57名に聞きました。
アンケート結果:S-1療法が最多で、 次点はS-1+オランザピン (SOX) 療法となりました。
国立がん研究センター 中央病院
頭頸部・食道内科
こちらも以前のQ&Aでも取り上げたが、 現在のHER2陰性の切除不能進行胃がんに対する標準的な初回薬物療法は、 CheckMate 649試験¹⁾やATTRACTION-4試験²⁾の結果より、 ニボルマブと2剤併用化学療法である。
しかし、 上記のような切除不能進行胃がんを対象とした重要な臨床試験には、 高齢者の登録数は限定的であり、 2021年に発刊された『胃癌治療ガイドライン』のクリニカルクエスチョン(CQ)18では、 「高齢の切除不能進行・再発胃癌症例に対して化学療法は推奨されるか?」と記載され、 「高齢の切除不能進行・再発胃癌症例では、 患者の状態を慎重に評価したうえで、 状態良好 (fit) であれば、 化学療法を行うことを強く推奨する。 それ以外の場合 (vulnerable/unfit) は状況が多彩であるため、 明確な推奨ができない。 」との推奨文が記載されるにとどまり、 具体的な薬物療法の種類に関しては明確な記載がない³⁾。
そのような中、 先日の第20回日本臨床腫瘍学会(JSMO 2023)において、 西日本がん研究機構(WJOG)が主導した、 HER2陰性の70歳以上の切除不能進行胃がんの初回治療を対象に、 S-1療法とSOX療法を比較したランダム化第II相試験WJOG8315Gの結果が報告された。
結果、 主要評価項目である全生存期間中央値に関して、 SOX療法群の優越性が示された〔S-1: 13.0カ月、 SOX: 16.2カ月、 HR 0.73(95%CI 0.63-0.84)〕。 また有害事象に関しても両群とも新たな所見は認めず、 許容範囲であった⁴⁾。
この試験結果を考慮すると、 高齢者であっても化学療法の投与が可能と考えられる症例においては、 SOX療法を基軸にした治療戦略を考慮すべきであり、 ニボルマブの忍容性があると判断される場合はSOX+ニボルマブ併用療法が、 経口摂取が難しい場合は、 同じフッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ系薬剤併用療法であるFOLFOX療法も選択肢となり得ると考えられる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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