【EHA 2024】続・注目の13演題を紹介!
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HOKUTO編集部

5ヶ月前

【EHA 2024】続・注目の13演題を紹介!

【EHA 2024】続・注目の13演題を紹介!
2024年6月にスペイン・マドリードで開催された欧州血液学会 (EHA 2024) において発表された注目演題について、 Plenary Abstract SessionおよびLate-breaking Oral Sessionを中心に紹介した前回に引き続き、 Oral Presentationにおける注目の13演題を大阪国際がんセンター血液内科副部長の藤重夫先生にご解説いただきました。
>> 前回の解説はこちら

本校掲載の疾患

・急性骨髄性白血病
・B細胞リンパ腫
・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
・非ホジキンリンパ腫
・T細胞リンパ腫
・末梢性T細胞リンパ腫
・骨髄異形成症候群

急性骨髄性白血病

【第Ⅰ相】KMT2A/NPM1遺伝子異常を有する再発/難治例へのメニン阻害薬JNJ-75276617併用

#Abstract S133

メニン阻害薬は新薬開発が非常に活発な分野の1つであり、 それを反映して今回のEHA 2024では 「Menin inhibitor」 というセッション枠が設けられていたほどである。 既に単剤での成績は多くなってきている状況で、 薬剤によっては米食品医薬品局 (FDA) の承認も近いと報道されているものもある。

今回はさらに、 KMT2A/NPM1遺伝子異常のある再発/難治性急性骨髄性白血病 (AML) に対して、 メニン阻害薬JNJ-75276617と多剤併用での有効性が検討されており、 全奏効率 (ORR) は79%と再発/難治性AMLとしては非常に高く、 さらにKMT2A再配列で62%、 NPM1変異で90%と、 いずれのサブグループにおいても高くなっていた。 特に本試験ではベネトクラクスが併用薬に入っているため、 同薬による治療歴がない例ではORRが94%と、 非常に高い有効性を示していた。 今後の開発が期待される。


【第Ⅰ相】新規診断高齢患者へのメニン阻害薬revumenib併用

#Abstract S134

引き続きメニン阻害薬に関する報告であるが、 初発例を対象にしたrevumenib併用療法まですでに開発が進んでいる点は興味深い。 ORRは100%で、 複合完全奏効 (cCR) は96%と、 第Ⅰ相試験ではあるが、 非常に高い効果が注目される。


【ENHANCE-3】未治療例へのmagrolimab上乗せ

#Abstract S138

未治療AMLに対する抗CD47抗体magrolimabの併用療法は第Ⅲ相試験にまで進んだ期待される治療法だったが、 残念ながらENHANCE-3試験では全く上乗せ効果を示すことはできなかった。 また早期の敗血症等での死亡が多く認められており、 有害事象の対応が課題であると考えられた。


【SIERRA】再発/難治性TP53遺伝子変異例への¹³¹I-apamistamabを用いたHCT

#Abstract S267

抗CD45放射性免疫複合体¹³¹I-apamistamabを用いた新しい同種造血幹細胞移植法の開発に関する報告である。 CD45陽性細胞を除くことで移植を成立させようという興味深い試験で、 今回は特に再発/難治性のTP53遺伝子変異陽性AMLに着目した解析であった。

コンセプトとしてはシアトル型のFluTBI2Gy (フルダラビン+全身放射線照射 [TBI 2Gy] )に¹³¹I-apamistamabを乗せるという、 全体として毒性は抑えられそうなレジメンだった。 ただし長期的な成績は依然として不良であり、 今後どのように本薬剤を組み込んだ移植法を改良していくかが課題である。

B細胞リンパ腫

【第Ⅰ相】未治療アグレッシブBCLへのgolcadomide+R-CHOP

#Abstract S235

セレブロンE3リガーゼモジュレーター (CELMoD) golcadomideをR-CHOP療法 (リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン) に上乗せするレジメンの安全性および有効性が評価されており、 いずれも優れる印象を受ける結果だった。 1年時点のPFSも85%程度と、 短期ではあるが良好な結果が報告された。

また、 現在高リスクびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL) における1次治療としてのgolcadomide+R-CHOPの有効性を検証する第Ⅲ相無作為化比較試験GOLSEEK-1が進行中とのことである。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

【HOVON 151】高リスク例へのアテゾリズマブ地固め療法

#Abstract S236

維持療法的な検討であり有効性を評価することは困難ではあるが、 もともと設定されていた目標 (無病生存期間 [DFS] ) は達成されていた。 また、 再発後に化学療法を受けた症例の奏効率が高いのではないかという結果も示されている。 他の研究でも同様の報告があることから、 患者の免疫状態が次の治療の有効性に影響している可能性もあるのかもしれない。


【EPCORE NHL-5】未治療例へのエプコリタマブ+POLA-R-CHP皮下投与の有効性

#Abstract S239

単群試験であり有効性についての評価は難しいところではあるが、 奏効率は100%、 完全奏効率 (CR) は89% (95%CI 70.8-97.6%) と高い値を示し、 奏効持続期間も現時点では長くなりそうな印象を受ける結果であった。 またこのような研究でも、 だいたいctDNAのデータが示されるようになっている点も興味深い。

非ホジキンリンパ腫

【第Ⅰ相】再発/難治性アグレッシブB-NHLへのenglumafusp alfa+glofitamab

#Abstract S237

二重特異性抗体glofitamabは単剤でも再発・難治性のB細胞非ホジキンリンパ腫 (NHL) に対して効果を示す薬剤であるが、 免疫学的な機序をさらに高めるために抗CD19/4-1BBL標的抗体様融合タンパクenglumafusp alfaを投与するという新しい取り組みである。 示されたデータ的に安全性には大きな問題はなく、 有効性も高い結果ではあったが、 glofitamab単剤と比してどの程度のベネフィットがあるかの検証が必要である。

T細胞リンパ腫

【実臨床データ】自家移植/同種移植の治療成績

#Abstract S245

T細胞リンパ腫においての移植成績は限られており多数例での検討は参考となるものであったが、 単純に自家移植と同種移植で別々に成績を示しただけにとどまっており、 今後の詳細な解析が待たれる。 特に今回は移植後2年までしか結果が示されていないが、 長期的な疾患コントロールも重要なポイントであり、 長期データも示されることを期待したい。

末梢性T細胞リンパ腫

【予後予測評価】新規診断例におけるctDNAモニタリング

#Abstract S246

末梢性T細胞リンパ腫 (PTCL) 症例におけるctDNAをモニタリングした中国の研究である。 ctDNAは測定系によっても差がありそうではあるが、 CHOP-likeレジメンではctDNAは感度以下に低下することが難しいようであり、 そのあたりはB細胞リンパ腫とは異なる点かもしれない。 クローン性造血と関連しそうな遺伝子変異についてはそもそもリンパ腫の微小残存病変 (MRD) 評価としては不適かもしれない。


【VALENTINE-PTCL01】再発・難治例に対するバレメトスタット単剤療法

#Abstract S247

再発・難治性PTCLに対するEZH1/2阻害薬バレメトスタットの有効性および安全性を検証した第Ⅱ相国際共同オープンラベル単群試験で、 治療手段が限られた集団に対して一定の有効性が示された。 本邦においてもバレメトスタットはPTCLに対して保険適用となっており、 今後実臨床での結果も評価していく必要がある。

骨髄異形成症候群

【STIMULUS-MDS2】高リスクMDS/CMML-2へのsabatolimab上乗せ

#Abstract S180

TIM-3阻害薬sabatolimabをアザシチジンに上乗せする効果を検討した大規模な国際共同二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験である。 OS等の結果で傾向としてはsabatolimab群の方が優れていそうではあるが、 残念ながらもともと設定された主要評価項目 (OS) は達成されなかった。


【ENHANCE】未治療高リスク例へのmagrolimab+アザシチジン

#Abstract S181

残念ながらmagrolimab+アザシチジン群ではプラセボ群に比べてOSは悪い傾向にあり、 やはり他の研究と同様に有害事象が問題となったようである。 TP53遺伝子変異例において特に期待されるということが初期の研究では示されていたが、 その点についても再現されず、 小規模研究での結果は大規模研究でも再検証することが重要であると認識させられる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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