寄稿ライター
5ヶ月前
美容医師がグアムでの解剖研修の様子をSNSに投稿し、 「不謹慎」 「倫理観が欠如」 と批判を浴びました。 批判はその通りなのですが、 今回は投稿した狙いなどについて考えてみましょう。
テレビやインターネットのニュースで取り上げられ、 SNSでもトレンド入りしました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241225/k10014678421000.html
実名や投稿画像はあえて伏せますが、 美容医師の投稿は、 「いざFresh cadaver (新鮮な御遺体) 解剖しに行きます!」 や 「頭部がたくさん並んでるよ」 などのコメント付きでした。
写真にはモザイク処理が不十分な遺体の一部が写っていました。 批判を受けて削除されましたが、 多くの医師 (美容医師含む) や著名人から 「医師免許をはく奪すべき」 と多くの批判が寄せられました。
クリニックの統括院長は、 この問題に関する声明を発表しました。 謝罪と退職などで終わると思いきや、 「新鮮なご遺体を初めて見て感動し、 それを伝えようとした」 と説明した上で 「動機は善であり、 悪意はなかった」 と擁護。 さらには 「Fresh cadaverも知らない不勉強な医師に批判されたまま解雇することはできない」 とコメントし、 火に油を注ぐ形となりました。
今回の批判は 「遺体に対する誠意の有無」 「医師としての倫理観」 が論点であるにも関わらず 「解剖は外科医にとって重要です」 「日本ではなく海外のグアムでの写真です」 とズレた言い訳をしました。
院長の声明は、 医療倫理と一般社会の感覚との乖離を示しており、 信頼を大きく損なう可能性があります。 SNSでは美容医療だけでなく、 まじめに保険診療をしている医師を含めた批判も多いです。 業界全体で倫理教育の徹底や情報発信のあり方を見直す必要性が高まっています。
なぜこのような投稿や発言をするのでしょうか。 「倫理観の欠如」 で片付けることは簡単ですが、 実はある種の 「宣伝効果」 を狙っている可能性があります。
美容外科のメインターゲットとされる夜職の人は、 技術向上を重視する傾向があり、 Fresh cadaverの投稿に対して激怒しないかもしれません。 ネガティブな炎上とはいえ、 「技術に真摯に向き合っている」 ことをアピールする機会になったという見方もできます。
様々なメディアで取り上げられ、 その宣伝効果はすさまじいものがあります。 医道審議会でも自由診療は罰しにくいこともあるでしょう。 もしわざとズレたコメントをしているのであれば、 正直同じ医師とは思いたくないです。
最近、 直美 (ちょくび) 問題も取りだたされている中で起きたこの事件。 2024年に医師が起こした事件としては間違いなく最大級だと思います。 医師への信頼がただでさえ揺らいでいるこのご時世、 、 とんでもないことをしでかしてくれました。
美容医療に国のメスを入れ、 美容医療に対する抜本的な組織改革と倫理教育の徹底を図るとともに、 医療機関におけるSNS利用のガイドラインを整備することなどが求められそうです。
>> Xアカウント : @drkotatsu
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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