【RECORD-1試験】腎細胞癌に対するエベロリムス
著者

HOKUTO編集部

1年前

【RECORD-1試験】腎細胞癌に対するエベロリムス

【RECORD-1試験】腎細胞癌に対するエベロリムス
スニチニブ、 ソラフェニブ、 またはその両剤を投与後に進行した転移性腎細胞癌患者において、 エベロリムス投与の効果を、 プラセボ投与を対照に検証した比較試験RECORD-1の結果より、 無増悪生存期間 (PFS) に対する有益性が示された。 

原著論文

▼中間解析結果

Efficacy of everolimus in advanced renal cell carcinoma: a double-blind, randomised, placebo-controlled phase III trial. Lancet. 2008 Aug 9;372(9637):449-56. PMID: 18653228

▼追跡結果

Phase 3 trial of everolimus for metastatic renal cell carcinoma : final results and analysis of prognostic factors. Cancer. 2010 Sep 15;116(18):4256-65. PMID: 20549832

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RECORD-1試験の概要

対象

スニチニブ、 ソラフェニブ、 またはその両剤を投与後に進行した転移性の淡明細胞型腎細胞癌患者

方法

410例を以下の2群に2:1で割り付けた。

  • エベロリムス群 (272例)
エベロリムス10㎎を1日1回経口投与
  • プラセボ群 (138例)
プラセボを1日1回経口投与

評価項目

  • 主要評価項目:PFS
  • 副次評価項目:安全性、 奏効率 (ORR) 、 全生存期間 (OS) 、 疾患関連症状、 健康関連QoL (Quality of Life)*
*European Organization for the Research and Treatment of Cancer (EORTC9) QLQ-3018およびFunctional Assessment of Cancer Therapy Kidney Symptom Index-Disease-Related Symptoms (FKSI-DRS) 質問票を使用し評価

RECORD-1試験の結果

2回目の中間解析の結果、 両群間で有効性に有意差があることが示され、 191件の増悪事象が認められた時点で、 試験は早期に中止された。

患者背景

両群間で同様であった。

PFS中央値

  • エベロリムス群:4.9ヵ月
(95%CI 4.0-5.5ヵ月)
  • プラセボ群:1.9ヵ月
(95%CI 1.8-1.9ヵ月)
HR 0.33 (95%CI 0.25-0.43)、 p<0.001

前治療による分類

  • スニチニブ投与歴あり (184例) 
  • エベロリムス群:3.9ヵ月
  • プラセボ群:1.8ヵ月
HR 0.34 (95%CI 0.23-0.51)
  • ソラフェニブ投与歴あり (124例)
  • エベロリムス群:5.9ヵ月
  • プラセボ群:2.8ヵ月
HR 0.25 (95%CI 0.16-0.42)
  • スニチニブおよびソラフェニブ投与歴あり (108例)
  • エベロリムス群:4.0ヵ月
  • プラセボ群:1.8ヵ月
HR 0.32 (95%CI 0.19-0.54)

ORR

  • エベロリムス群:66.8 %
  • プラセボ群:32.4%

OS中央値

  • エベロリムス群:14.8ヵ月
  • プラセボ群:14.4ヵ月
HR 0.87 (95%CI 0.65-1.17)、 p=0.162

二重盲検治療を終了する前に、 プラセボ群で進行が認められた139例の患者のうち106例 (76.2%) がエベロリムスに移行した。 移行後のPFS中央値は5.1ヵ月 (95%CI 3.7-7.6ヵ月) 、 OS中央値は10.0ヶ月であった。

サブグループ解析

  • Memorial Sloan-Kettering Cancer Center risk scoreによりfavorable、 intermediate、poorリスク群に分類すると、favorable群と比較し、 intermediate群 (HR 1.54、 95%CI 1.08-2.19) とpoor群 (HR 3.38、 95%CI 2.21-5.16) で有意にOS率が低下した。
  • 肝転移、 骨転移、 好中球上昇、 スニチニブによる前治療歴がある場合、 PFSとOSが短縮された。

健康関連QOL

プラセボ群と比較し、 エベロリムス群は治療中もQOLが維持されていた。

有害事象 (AE)

  • プラセボ群よりもエベロリムス群で多く報告されたが、 Grade3-4のAEの割合は両群とも低かった。
  • エベロリムス群では、 プラセボ群に比べて、 Grade3-4の口内炎、 感染症、 非感染性肺炎の発生率が高かった。 

著者らの結論

  • スニチニブ、 ソラフェニブ、 またはその両剤を投与後に進行した転移性腎細胞癌患者において、 エベロリムス投与はプラセボ投与と比較し、 PFSを有意に延長させた。
  • 両群に差を認めなかったOSに関しては、 プラセボ群に割り付けられた患者のほとんどがエベロリムスに移行したことがデータに影響したと考えられる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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