COURAGE
8ヶ月前
4月20日に開催された 「第4回COURAGEの集い」 にて行われた 「陰茎癌 (講師 : 虎の門病院 三浦裕司先生) 」 をご紹介します。
陰茎癌の推計年齢調整罹患率は低く、 非常に稀な疾患である。 また、 高所得地域と低所得地域で罹患率に差がある点が興味深い。 所得により差が生じる理由には諸説あるが、 明らかにはなっていない。
推計年齢調整罹患率 (1万人あたり)
- 高所得の地域 : 0.1~1.0
- 低所得の地域 : 3~7
所属リンパ節転移の有無と拡がりを示すN分類は、 臨床診断によるN分類(cN)と病理学的診断によるN分類 (pN) に区別される¹⁾。
可動性がなければcN3となるため、 触診が重要である。 また、 節外進展・骨盤リンパ節転移ありでpN3となり、 5年CSSが20%未満であることから、 骨盤リンパ節郭清の重要性も高い。
NCCNやEAU-ASCO、 日本泌尿器科学会などがガイドラインを発刊している¹⁻³⁾。 リンパ節転移がある場合の推奨は各ガイドラインで異なる。
▼リンパ節転移あり
NCCN (2023) : N2-3で、 NACとしてTIP療法推奨。 安定または奏効の場合、 根治手術へ [N/A]
EAU-ASCO (2023) : cN2では、 up-front surgeryの代替として、シスプラチンとタキサンをベースとしたレジメンを推奨。 cN3ではシスプラチンとタキサンをベースとしたNAC後、 手術へ。 [Week]
日本泌尿器科学会 (2021) : cN1~2は、up-front surgeryとリンパ節郭清を行う。 その結果を踏まえ、 ステージが上がった時等は骨盤リンパ節郭清+術後療法もしくは放射線療法の検討を推奨。 N3はTPFやTIPなどの術前療法を推奨。[Week]
▼リンパ節転移なし・局所進行 (T3~4)
どのガイドラインも陰茎部分切除術または全摘術を基本とし、 大きな違いはない。
リンパ節転移を有する陰茎癌患者を対象した、 2段階の無作為化によるmultiple-arm (複数群) の比較試験*である。 ただし、 これまで第Ⅱ相試験のみであった領域での第Ⅲ相試験だが、 患者登録が進んでいない。
免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬等の開発が行われているが、 あまり進んでいない。
▼免疫チェックポイント阻害薬
単群の第Ⅰ/Ⅱ相試験、 抗PD-1/PD-L1抗体単剤か、 化学療法/放射線併用との比較試験が進行中。
▼分子標的薬
EGFR阻害薬*、 Pan-HERチロシンキナーゼ阻害薬**の臨床試験が進行中。
▼HPVを標的とした治療
ワクチンやT細胞療法の開発が進行中。
● 各ガイドラインで、 内容は少しずつ異なる
● 術前療法としてのTIP療法は、 リンパ節転移を有する陰茎癌患者に一般的に推奨される
● 術後・導入化学療法はオプションである
● 周術期化学療法と新規薬剤に関する、 レベルの高いエビデンスの創出が必要
三浦 TIP療法は40~50代の患者でも大変な場合があり、 高齢者ではかなり注意深く行う必要があります。 減量することもありますが、 術前療法・術後療法いずれも、 intensityを保つためなるべく減量したくないので、 G-CSFによる二次予防を行いながら実施することも多いです。
<出典>
泌尿器腫瘍を扱う腫瘍内科医が集い、 知識を共有する場として設立された勉強会です。
日常診療で泌尿器腫瘍を診ている医師のみならず、 腫瘍内科医を目指す医師などにも泌尿器腫瘍の魅力に触れてもらい、 そのような人たちを「エンカレッジ」するような組織になることを目指しています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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