【NIAGARA】筋層浸潤膀胱癌への術前・術後デュルバルマブでEFS・OSが改善
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HOKUTO編集部

2ヶ月前

【NIAGARA】筋層浸潤膀胱癌への術前・術後デュルバルマブでEFS・OSが改善

【NIAGARA】筋層浸潤膀胱癌への術前・術後デュルバルマブでEFS・OSが改善
シスプラチン適格の筋層浸潤膀胱癌 (MIBC) における抗PD-L1抗体デュルバルマブ+化学療法による術前療法およびデュルバルマブ術後投与の有効性について、 術前化学療法単独を対照に検証した第Ⅲ相国際共同オープンラベル無作為化比較試験NIAGARAの結果より、 EFSおよびOSが有意に改善した。 英・Queen Mary University of LondonのThomas Powels氏が発表した。

背景

MIBCへの術前化学療法+膀胱全摘は3年再発率が高く、 新たな治療開発が課題

MIBCにおいて、 術後療法としての免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 単剤療法は、 術後再発高リスク例の無病生存期間 (DFS) を有意に改善した¹⁾²⁾。 また周術期のICIは、 術前に抗腫瘍免疫を活性化し、 術後に微小転移性疾患を根絶することで、 長期的な転帰を改善する可能性がある。

試験の概要

対象はシスプラチン適格のMIBC1,063例

cT2-T4aN0/1M0でシスプラチン投与の適格性があり、 クレアチニンクリアランス (CrCl) ≧40mL/分で根治的膀胱切除術を受けることが確定したMIBCを対象とした。

主要評価はEFSとpCR率

  • デュルバルマブ群 : 533例
術前療法としてデュルバルマブ1,500mg+化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)を3週毎に4サイクル実施→根治的膀胱全摘術→術後療法としてデュルバルマブ1,500mgを4週毎に8サイクル実施
  • 対照群 : 530例
術前化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)のみ3週毎に4サイクル実施

主要評価項目は無イベント生存期間 (EFS) *、 病理学的完全奏効 (pCR) 率であり、 副次的評価項目は全生存期間 (OS) だった。 安全性も評価された。

*EFSは無作為化後、 根治的膀胱全摘術が不可能な病勢進行、 術後の再発、 手術を受けなかった患者の手術予定日、 または何らかの原因による死亡が最初に起こるまでの期間と定義された。

試験の結果

今回は、 2024年4月29日のデータカットオフ時点におけるEFSおよびOSの中間解析結果が報告された。

患者背景は両群で概ね一致

年齢中央値、 性別、 アジア人割合などの患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。 層別因子である腎機能においては、 両群ともCrCl ≧60mL/分は81%、 ≧40~<60mL/分は19%だった。 PD-L1高発現は両群とも73%だった。

術前療法は、 デュルバルマブ群417例、 対照群の389例で完了した。 根治的膀胱全摘術はデュルバルマブ群469例、 対照群441例で実施され、 うちデュルバルマブ群の383例が術後療法を開始し、 288例が完了した。

EFSはNR、 イベント発生リスク32%低減

追跡期間中央値42.3ヵ月 (範囲 0.03-61.3ヵ月) におけるITT集団のEFS中央値はデュルバルマブ群が未到達 (95%CI NR-NR)で、 対照群の46.1ヵ月(同 32.2ヵ月-NR) に比べて有意な改善を示した (HR 0.68 [95%CI 0.56-0.82]、 p<0.0001)。

12ヵ月EFS率、 24ヵ月時EFS率はそれぞれ、デュルバルマブ群で76.0%、67.8%、 対照群で69.9%、 59.8%だった。

また、 膀胱全摘術未施行例を除外したEFS感度分析の結果では、 EFS中央値はデュルバルマブ群で未到達 (95%CI NR-NR)、 対照群でNR (同 53.2ヵ月-NR) であり、 ITT集団と同様に有意な改善を示した (HR 0.69 [95%CI 0.56-0.86] )。

12ヵ月EFS率は、 24ヵ月EFS率はそれぞれ、 デュルバルマブ群で82.3%、 73.5%、 対照群で79.4%、 67.9%だった。

EFSサブグループ解析の結果、 事前に規定された全サブグループにおいて、 デュルバルマブ群の対照群に対する優位性が一貫して認められた。

pCR率は正式解析で有意差示さずも再解析時に改善

2022年1月をデータカットオフとした、 事前規定された正式なpCR解析において、 ITT集団のpCR率はデュルバルマブ群が33.8% (95%CI 29.8-38.0%)、 対照群が25.8% (同 22.2-29.8%) だった (OR 1.49 [95%CI 1.14-1.96]、 p=0.0038)。 事前に規定された閾値の0.001を下回らず、 pCR率に有意差は認められなかった。

ただし、 2024年4月をデータカットオフとした再解析の結果では、 デュルバルマブ群が37.3% (95%CI 33.2-41.6%)、 対照群が27.5% (23.8-31.6%)、 OR 1.60 (95%CI 1.23-2.08)、 p=0.0005となり、 pCRの改善傾向が認められた。

OSも有意に改善

追跡期間中央値46.3ヵ月 (範囲 0.03-64.7ヵ月) におけるITT集団のOS解析においても、 デュルバルマブ群の対照群に対するHRは 0.75(95%CI 0.59-0.93)、 p=0.0106で有意な改善を認めた。

12ヵ月OS率、 24ヵ月OS率はそれぞれ、 デュルバルマブ群で89.5%、 82.2%、対照群で86.5%、 75.2%だった。

OSサブグループ解析においても、 事前に規定された全サブグループにおいて、 デュルバルマブ群の対照群に対する優位性が一貫して認められた。

安全性は管理可能

Grade3~4の治療関連有害事象 (AE) 発現率は、 両群ともに41%だった。 治療中止に至ったAE発現率は、 デュルバルマブ群が21%、 対照群が15%だった。 免疫介在性AEの発現率は、 それぞれ21%、 3%だった。

手術中止 / 遅延に至ったAEの発現率はそれぞれ、 デュルバルマブ群で1% / 2%、 対照群で1% / 1%だった。

結論

術前・術後デュルバルマブ上乗せが新たな標準治療の可能性

Powles氏は 「MIBCにおいて、 デュルバルマブ+化学療法による術前療法およびデュルバルマブ術後投与は、 術前化学療法単独に比べ、 EFSおよびOSを有意に改善した。 術前・術後デュルバルマブ投与に関する忍容性は良好であり、 手術の遅延や患者の耐術性にも影響を及ぼさなかった。 本試験の結果は、 シスプラチン適格MIBCに対する新たな標準治療の可能性として、 術前デュルバルマブ+化学療法に術後デュルバルマブを投与する併用療法を支持するものである」 と報告した。

出典

¹⁾ N Engl J Med. 2021 Jun 3;384(22):2102-2114.

²⁾ J Clin Oncol. 2024; 42(suppl 4; abstr LBA531).

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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