抗HER2療法を含む術前療法後に浸潤性病変が残存したHER2陽性早期乳癌患者において、 トラスツズマブ エムタンシン (T-DM1) による術後療法の効果を、 トラスツズマブ単独療法を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験KATHERINEの結果より、 浸潤性疾患のない生存期間 (IDFS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼解析結果
Trastuzumab Emtansine for Residual Invasive HER2-Positive Breast Cancer. N Engl J Med. 2019 Feb 14;380(7):617-628. PMID: 30516102
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KATHERINE試験の概要
対象
抗HER2療法を含む術前療法後に浸潤性病変が残存したHER2陽性早期乳癌患者
方法
1,486例を以下の2群に1:1で割り付けた。
T-DM1 3.6mg/kgを3週毎に14サイクル投与
トラスツズマブ6mg/kgを3週毎に14サイクル投与
評価項目
主要評価項目:IDFS
副次評価項目:無病生存期間 (DFS) 、 全生存期間 (OS) 、 無遠隔再発生存期間 (DRFS) 、 安全性
KATHERINE試験の結果
患者背景
- 両群で同様であった。
- 年齢中央値は49歳、 アジア人は8.6-8.7%、 エストロゲン受容体陰性かつプロゲステロン受容体陰性または不明27.3-28.1%
治療状況
- 14サイクルの治療がすべて完了したのは、 T-DM1群71.4%、 トラスツズマブ群81.0%
- T-DM1を早期に中止した133例のうち、 71例はトラスツズマブに切り替え、 そのうち63例はトラスツズマブ治療を14サイクル完了した。
追跡期間中央値
- T-DM1群:41.1ヵ月
- トラスツズマブ群:40.9ヵ月
3年時のIDFS率
- T-DM1群:88.3%
- トラスツズマブ群:77.0%
HR 0.50 (95%CI 0.39-0.64)、 p<0.001
3年時のDFS率
(95%CI 73.6-80.1%)
(95%CI 84.9-89.9%)
HR 0.53 (95%CI 0.41-0.68)
OS中央値
未報告
HR 0.70 (95%CI 0.47-1.05)、 p=0.0848
3年時のDRFS率
(95%CI 80.1–85.9%)
(95%CI 87.4–92.0%)
HR 0.60 (95%CI 0.45-0.79)
有害事象 (AE)
- Grade3以上の主なAEは、 T-DM1群では血小板数減少 (5.7%) 、 高血圧 (2.0%) であり、 トラスツズマブ群では高血圧 (1.2%) 、 放射線関連皮膚障害 (1.0%) であった。
- 重篤なAEは、 T-DM1群12.7%、 トラスツズマブ群8.1%に発現した。
- 投与中止に至ったAEは、 T-DM1群18.0%、 トラスツズマブ群2.1%に発現した。
治療関連AE (Grade3以上、 Gradeを問わないAE) の発現率
- T-DM1群:25.7%、 98.8%
- トラスツズマブ群:15.4%、 93.3%
著者らの結論
抗HER2療法を含む術前療法後に浸潤性病変が残存したHER2陽性早期乳癌患者において、 T-DM1による術後療法は、 トラスツズマブ単独療法と比べて、 浸潤性乳癌の再発または死亡のリスクを50%低減させることが示された。