Sadeghipourらは、 中間リスクまたは高リスクの肺塞栓症 (PE) 患者を対象に、 従来のカテーテル血栓溶解療法 (CDT) +抗凝固療法と抗凝固療法単独療法の有効性を非盲検無作為化臨床試験で検討 (CANARY試験)。 その結果、 抗凝固療法単剤群と比較して、 CDT群の方がその後の転帰が改善されることが示唆された。 本研究は、 JAMA Cardiol誌において発表された。
📘原著論文
Catheter-Directed Thrombolysis vs Anticoagulation in Patients With Acute Intermediate-High-risk Pulmonary Embolism: The CANARY Randomized Clinical Trial. JAMA Cardiol. 2022 Oct 19;e223591.PMID: 36260302
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
循環不全なしで右心不全ありの場合には現在のスタンダードでは抗凝固療法が選択されますが、 本研究結果では抗凝固療法に加えてカテーテル血栓溶解療法をした方が転帰が良さそうです。 結論では仮説レベルと書いていますので、 もう少し更なる研究成果の結果を待ちたいところです。
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背景
中間リスク、 または高リスクのPEに対する最適な治療法は、 いまだ不明である。
研究デザイン
- 対象:中間~高リスクのPE患者
- 患者を以下の2群に無作為に割り付け
- CDT群: (アルテプラーゼ 0.5mg/カテーテル/h、 24時間) +ヘパリン
- 抗凝固療法単剤群
- 主要評価項目:3ヵ月後の心エコーでRV/LV比が0.9を超えた患者の割合。
- 副次評価項目:無作為化後72時間の時点でRV/LV比が0.9を超えた患者の割合と3カ月間の全死亡率。
- 安全性の主要評価項目:大出血 (BARC type 3または5)。
研究結果
- 94例を募集した後、 COVID-19の流行により試験は早期に中止された。
- そのうち85例は3ヵ月の心エコーによるフォローアップを完了した。
有効性評価
主要評価項目
- 3ヵ月後の心エコーでRV/LV比が0.9を超えた患者の割合
- CDT 群:46 例中2例 (4.3%)
- 抗凝固薬単剤群:39 例中5例 (12.8%)
OR:0.31、 95%CI 0.06-1.69、 P=0.24
- 3ヵ月後のRV/LV比の中央値 (IQR) は、 抗凝固療法単剤群よりもCDT群で有意に小さかった。
- CDT群:0.7 (IQR:0.6-0.7)
- 抗凝固療法単剤群:0.8 (IQR:0.7-0.9)
P=0.01
副次評価項目
- 無作為化後72時間の時点でRV/LV比が0.9を超えた患者の割合は、 抗凝固療法単剤群よりも、 CDT群の方が少なかった。
- CDT群:27.0% (48例中13例)
- 抗凝固療法単剤群:52.1% (46例中24例)
OR:0.34、 95%CI 0.14-0.80、 P=0.01
- CDT群では、 3ヵ月後の死亡またはRV/LV比が0.9より大きいという複合項目に該当する患者は少なかった。
- CDT群:4.3% (48例中2例)
- 抗凝固療法単剤群:17.3% (46例中8例)
OR:0.20、 95%CI 0.04-1.03、 P=0.048
安全性評価
結論
中間リスク・高リスクのPE患者において、 抗凝固療法単剤と比較して、 CDTはいくつか有効性と許容可能レベルでの大出血を認めているため、 この仮説を検証する決定的な臨床結果試験が必要である。