HOKUTO編集部
15日前
利尿薬とは主に腎臓に作用し、 尿量を増やす薬剤の総称である。 そのため、 使い時は 「体液量過剰」 と認識しておく必要がある。
シンプルに言えば、
- 体液量過剰にはループ利尿薬、トルバプタン
- 高血圧にはサイアザイド系利尿薬
- 心・腎の臓器保護にはK保持性利尿薬
と、 臨床上はとらえておくと分かりやすい。 今回は、 体液量過剰に使うループ利尿薬とトルバプタンについて解説する。
利尿薬は、 「尿量が少ない」 という事象に使うものではない。 急がないのであれば、 減塩で経過をみることは妥当である。 浮腫の原因は、 カルシウム (Ca) チャネル拮抗薬の使用や甲状腺機能異常などさまざまである。
体液量過剰で薬物療法が必要と判断した場合には、 ループ利尿薬を処方する。 ループ利尿薬が無効である場合の次の一手は、 トルバプタンあるいは血液透析となる。
"まずはフロセミド"と覚える
ループ利尿薬は、 フロセミドだけで覚えておけば良いと考えられる。 長時間作用であるアゾセミドや抗アルドステロン効果があるトラセミドなどを好んで使う人もいるが、 最近の研究¹⁾²⁾ではこれらの薬の優位性は否定的であるため、 フロセミドが使えれば十分である。
フロセミドは 「十分量を、 空腹時に投与」
また、 フロセミドを使う場合の注意点は、 十分量を空腹時に投与することである。 ループ利尿薬は"Thresh hold drug"と呼ばれ、 閾値を超えて利尿効果を出す薬である。 事前にどの量が効くかを考えることは難しいが、 経験的には、 Cr値×40mg程度で効かない場合には次の一手を考えることになる。
💡Dr. 長澤の視点
耳障害を気にする人がいるが、 耳障害は2,000~3,000mgという量で報告されており、 通常心配する必要はない。 気にするのであれば、 耳鼻科に聴力検査を依頼する。
空腹時に薬が飲みにくい患者であれば、 アゾセミドやトラセミドが選択肢になる。 この場合は、 よく使われる量の力価が相対的に低いことを意識して、 必要な量を投与する。
フロセミドを1週間以上投与する場合には、 カリウム (K) 値・マグネシウム (Mg) 値のモニタリングが必要になる。 不足している場合には利尿薬を中止できないかを、 中止できない場合にはKあるいはMgの補充を考える。
意外と多いのが痛風発作である。 利尿薬で脱水並びに尿酸値が上昇するためにしばしば生じる。 この点は患者に伝えておいたほうが良い。
効果の判定は難しいが、 尿量を基準に
「フロセミドが効いている/効いていない」 を判断するのは意外と難しい。 簡単に言えば 「尿量が200mL/2h程度確保できない場合」 に、 次の一手を考えるのが良い。
なお、 フロセミドが十分に効いていない状態を 「利尿薬抵抗性」 と呼ぶ。
💡Dr.長澤の豆知識
最近、 利尿薬抵抗性に対して、 アセタゾラミドやサイアザイド系利尿薬、 腹膜透析、 SGLT2阻害薬などをadd onする研究が盛んである。 ただし、 どの薬剤をどの患者に使うべきかは明らかになってはいない。
上記のことが理解できていれば、 「どのループ利尿薬でもOK」 ということになる。 過去の論文でフロセミドよりも他のループ利尿薬が好成績だったのは、 バイオアベイラビリティが高いために効果が高かったのでは?と考えている (事実、 これらの論文ではフロセミドの副作用少ない印象がある)。
利尿薬抵抗性にも効果がある可能性
ループ利尿薬で効果が不十分な場合にはトルバプタンあるいは血液透析を検討する。
トルバプタンはループ利尿薬と作用機序が異なる*ため、 ループ利尿薬が十分に効かない場合でも効果がある場合がある。 ただし、 残念ながら事前に予測することは難しい。
高K血症に注意
注意点は、 トルバプタンは必ず低張尿が出るために、 高Na血症になることがある。 そのため、 血清Na濃度の測定が必須である。
トルバプタンでは、 心不全などでさまざまな臨床研究がある。 ただし、 体重減少や尿量の確保、 うっ血解除、 QOLの改善のデータはあるが、 死亡率などは改善していないことには注意が必要である。
💡Dr.長澤の豆知識
利尿薬を使うときには、 毎日飲ませる必要はない。 例えば、 「体重が62㎏超えた時に内服」 のように指示を出しておくと、 飲ませすぎで脱水ということが避けられる。 そのためにも、 ベストな体重を見極める力が重要である。
ヒットを狙え!Dr. 長澤に聞く
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X : @RealTNagasawa
note : Dr.長澤の腎臓内科ラジオ
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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