HOKUTO通信
1ヶ月前
北海道大学の元総長で、 神経内分泌学の分野で世界的業績を残した医師の廣重力 (ひろしげ・つとむ) 氏が2025年5月22日、 老衰のため逝去した。 94歳だった。
広重氏は1931年、 北海道生まれ。 北海道大学医学部を卒業後、 同大学大学院医学研究科博士課程を修了。 1962年から米・イェール大学医学部に留学し、 最先端の神経科学研究に従事。 帰国後は北海道大学医学部教授に就任し、 生理学教育と研究に長年携わった。
専門は神経内分泌学。 特に、 ホルモン分泌や行動にみられる概日リズム (いわゆる体内時計) の調節機序と中枢神経系の関係解明において、 日本を代表する研究者として知られた。 英文による原著論文・総説・書籍は100編を超え、 国際的にも高く評価されている。
北海道大学によると、 廣重氏は生理学者としての研究業績に加えて、 教育者・制度設計者としても大きな貢献を果たし、 医学部長時代にはカリキュラム改革や研究体制の見直しを進めた。
脳死をめぐる議論が社会的に注目されていた1990年代には、 医学生理学の立場から新たな脳死判定基準のあり方を提案。 臨床倫理をめぐる議論にも積極的に関与した。
1991年には北海道大学長に就任 (1992年に 「総長」 と改称)。 在任中は、 学部一貫教育体制への移行や教養部の廃止のほか、 高等教育機能開発総合センターの創設、 副学長制度の導入などの改革を断行。 研究と教育の質的向上をめざす体制づくりを進めた。
退任後は大学入試センター所長、 北海道医療大学長・理事長などを歴任し、 医療者教育の改善と制度整備に尽力。 臨床現場に立たずとも、 医学の基盤を支えた功績が評価され、 2007年には瑞宝重光章を受章している。
北海道大学 : 本学元総長 廣重 力先生のご逝去を悼む
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。