仲野 兼司(がん研有明病院 総合腫瘍科)
11ヶ月前

画像診断や病理検査の進歩にもかかわらず、 原発不明がん (CUP: Cancer of Unknown Primary) は依然として全悪性腫瘍の3~5%を占め、 診断と治療の難しさが際立つ疾患です。 近年では、 がんゲノムプロファイリング (CGP) や機械学習の活用によって、 より精緻な診断や個別化治療が試みられています。 本稿では、 CUPに対する最新の薬物療法戦略として注目される遺伝子パネル検査の意義と、 原発臓器推定に基づく個別治療の可能性を示した臨床試験の結果を概説します。
全身検索の進め方は国内外のガイドラインで示されており、 最新レビューでは、 画像診断や病理組織評価の要点が網羅されています。
予後不良の非扁平上皮CUPにおいて、 CGPに基づく分子標的治療 (MGT) の有用性を検証した第II相無作為化比較試験CUPISCOが実施されました。
主要評価項目であるPFS中央値は、 MGT群で6.1ヵ月、 化学療法群で4.4ヵ月となり、 MGT群において有意な延長が認められた (HR 0.72、 p=0.0079)。 一方で、 スクリーニングされた全患者のうち、 登録に至ったのは約4割にとどまり、 割り付け前の段階での脱落も多かった。 対象集団に選択バイアスが含まれる可能性を踏まえると、 別途報告されているベースラインの変異プロファイルや患者背景の把握が、 本結果を実臨床に応用する上で重要となる。 全体の約32%に治療可能な遺伝子異常が認められたことからも、 CGPの早期導入は今後の診療判断に資する可能性がある。
中国・復旦大学が実施した第III相無作為化比較試験Fudan CUP-001では、 未治療の原発不明がん182例を対象に、 90遺伝子発現アッセイを用いて推定された原発臓器に基づく治療 (サイトマッチ療法) と、 経験的化学療法との比較が行われました。
主要評価項目であるPFS中央値は、 サイトマッチ群で9.6ヵ月であり、 経験的化学療法群の6.6ヵ月と比べて有意に延長した (HR 0.68、 p=0.017)。 推定された原発部位としては、 胃食道・肺・卵巣・子宮頸部・乳腺などが多くを占めた。 Grade 3以上の有害事象は両群で類似しており、 主に好中球減少や白血球減少が報告された。 遺伝子発現アッセイを活用した原発推定は、 疾患理解と治療選択の拡充に寄与する可能性が示された。
近年、 病理検体のDNAメチル化情報や胸水・腹水の細胞診画像、 遺伝子変異情報に機械学習やAIを応用し、 原発臓器の推定や予後予測を行う複数の研究が報告されています。 これらの技術は、 診断精度の向上と治療戦略の個別化に大きく貢献する可能性があります。
AIの進歩が著しい現在、 採用するツールや学習データに関する情報を共有し、 その妥当性を評価することの重要性も高まっており、 今後の展開が注目されます。
原発不明がん (CUP) の診断精度向上を目的に、 6臓器 (乳腺・肺・婦人科・結腸・腎・精巣) に特化したDNAメチル化情報を用いた深層学習モデルが開発された。 平均93%の高い識別精度を示し、 原発臓器の推定に有用であることが示された。
J Neuropathol Exp Neurol. 2025 を確認する
胸水・腹水を対象とした5万7,000例超の細胞診画像から、 原発推定AIモデルTORCHが開発された。 原発同定精度は最高82.6%、 予後予測とも相関し、 初期治療がTORCH予測と一致した群では全生存期間が延長していた。
次世代シーケンシング (NGS) データを用いた原発推定AIモデルOncoNPCが開発され、 CUP患者の41.2%で高信頼の予測が可能であった。 予測に基づく治療は生存延長と関連し、 ゲノムに基づく治療候補は2.2倍に増加した。
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専門 : 腫瘍内科 (骨軟部腫瘍、 頭頸部腫瘍、 原発不明癌、 希少がん、 その他がん薬物療法全般)
一言 : がん薬物療法に関する論文を中心に、 勉強した内容を記事にしています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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