能澤一樹 (名古屋市立大学大学院医学研究科共同研究教育センター臨床研究戦略部)
6ヶ月前
本連載は薬物療法の専門家による、 乳腺領域に役立つ情報をお届けする企画です。 第2回は、「読むべき書籍5選」 の中級~上級編をご紹介します。 (解説医師 : 名古屋市立大学大学院医学研究科 共同研究教育センター臨床研究戦略部 特任講師 能澤一樹氏)
今回は、 第2回 「読むべき書籍5選」 ということで、 中級編のご紹介になります。
今よりさらにワンランク上の診療を目指す時、 頼りになるような書籍を選びました。 主な対象読者は、 後期研修医以降の先生になりますが、 学生や初期研修医のみなさんもぜひ参考にしていただければと思います。
どの分野においても診療ガイドラインが重要であることに議論の余地はありませんが、 乳癌診療ガイドラインは、 他のガイドラインと一線を画すようなスタイルの書籍になっています。 その特徴は、 内容が非常に細やかに記載されていることです。
「こういう時はどう対処すれば良いのか? 治療方針はどうやって決めれば良いのか?」 などの臨床における疑問 (クリニカル・クエスチョン) を解決してくれる、 大事なツールになってくれます。 「疫学・診断編」 と合わせてしっかり読み込みたいですね。
私の持論ですが、 薬物療法を究めるには、 歴史を学ぶことが最も効果的です。 どのような薬剤が開発され、 これまでの標準治療よりどのように優れていたのかを把握することは、 大変そうに聞こえるかもしれませんが、 実は記憶の定着への近道になります。
「薬剤の名前が覚えられない」 「臨床試験の名前が覚えられない」 という先生も、 開発の歴史を学ぶと頭にすっと入ってくるのではないでしょうか。
患者さんの病状を良くするためには、 医師の力だけでは足りないことが多々あります。 本書籍は、 乳癌患者のケアに焦点を当てて、 一つ一つの対応方法について詳細な記載がされています。 そのため、 医師向けというよりは看護師や医療スタッフ向けになっていますが、 医師も内容を知っておくことで、 真の癌診療に近づけると思います (自分に言い聞かせるつもりで)。
薬物療法のちょっとした工夫や注意点について、 エキスパートの先生たちが診療のコツを教えてくれる、 興味深い1冊です。 踏み込んだ内容が多いですが、 乳癌診療全体を網羅した項目にもなっているため、 チームに1冊持っておきたい書籍になると思います。 また、 薬物療法のレジメンを勉強する時に重宝します。
なお同シリーズとして、 『Knack & Pitfalls 乳腺外科の要点と盲点第3版』も発刊されていますので、 乳腺外科医はこちらもご確認ください。
最後に紹介するのは、 乳癌診療に限定されない免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の副作用マネジメントに関する書籍です。
前回の連載 「【乳腺】読むべき書籍5選 (初級~中級編)」 でお伝えした通り、 薬物療法は副作用管理が大事になります。 「免疫チェックポイント阻害薬を使いこなしたい」、 「恐れずに治療したい」 と思われている先生にぴったりの内容になっています。
著者の峯村先生には以前の勤務先でお世話になりました。 当時、 峯村先生は免疫関連有害事象 (irAE) の難治症例を一緒に担当してくださる、 院内の頼れる膠原病内科医でしたが、 今ではirAEマネジメントのエキスパートとして国内第一線で活躍されており、 すっかり遠い存在になりました(初めから遠い存在でしたので変わりないのかもしれません)。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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