「岩手出身の学生に返済不要の奨学金を届ける」 仙台内科総合クリニック院長・イーハトーブ育英会理事長・鎌田和彦医師(前編)
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インタビュー

5日前

「岩手出身の学生に返済不要の奨学金を届ける」 仙台内科総合クリニック院長・イーハトーブ育英会理事長・鎌田和彦医師(前編)

「岩手出身の学生に返済不要の奨学金を届ける」 仙台内科総合クリニック院長・イーハトーブ育英会理事長・鎌田和彦医師(前編)
仙台市の風景
宮城県仙台市の医師が、 私財を投じて設立した 「イーハトーブ育英会」 が話題を呼んでいる。 岩手県に本籍を置く学生を対象に、 返済不要の奨学金を給付するという。 インタビュー前編では、 設立者である仙台内科総合クリニックの院長・鎌田和彦医師に、 奨学財団設立の経緯を聞いた。 

目的

開業医が私財を投じ奨学財団を設立

イーハトーブ育英会は、 2025年12月に設立された一般財団法人だ。 岩手県に本籍があり、 国内外の大学・大学院に自宅外から通学する学生を対象に、 家賃半額相当の返済不要な奨学金を給付する。

「イーハトーブ」 は、 岩手出身の詩人・童話作家の宮沢賢治による造語だ。 故郷をモチーフに描いた心象世界における 「理想郷」 を意味する。

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※写真はイメージです

財団の設立者は、 岩手県花巻市出身の鎌田先生だ。 現在は、 宮城県仙台市で診療所を営んでいる。

「高校卒業まで過ごした岩手は、 私にとって正真正銘の故郷。 その地にゆかりのある人たちへの感謝を込め、 ささやかな恩返しをしたい。 それが私の思いです」

奨学金の応募には、 英語4技能試験 「IELTS (アイエルツ) 」 で6.0以上のスコアを有することも求められる。 ただし、 扶養者の所得による制限は設けていない。

医師として働き、 子育ても終えた。 その先の人生の使い道とは

私財を投じた奨学財団を設立した経緯を、 鎌田先生はこう語る。

「開業前の勤務医時代、 妻子を連れて2年間ロンドンに留学しました。 その後、 2人の子どもを英国留学させるため、 教育費を稼ごうと開業したんです。 子どもたちは無事に社会人になり、 子育ても終わりました。 ただ、 それと同時に、 自分の生きがいを失うことになりました」

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留学先の聖トーマス病院食堂から、 テムズ川対岸の眺望

鎌田先生は、 息子を4年間、 娘を12年間英国で学ばせたという。 海外留学は国内よりもはるかに多くの教育費がかかったが、 自身の 「英国びいき」 も高じて、 張り合いのある日々を送ってきた。

親としての役目を果たした後、 それまで子どもたちに充ててきた 「教育費」 の新たな届け先として、 奨学財団を設立した。 今度は“イーハトーブ”の若者たちに、 収入の一部を教育費として届けたい――。 鎌田先生は、 「この活動を、 これからの人生の働きがいにしたい」 と話す。

反響

令和の学生たちが直面する現実

イーハトーブ育英会では、 年4回のスケジュールで奨学生を募集している。 2026年3月に第一期の募集を開始し、 選考を経て6月に2人採用し、 既に奨学金の支給がスタートした。

「応募者は首都圏で暮らす学生が大半でした。 家賃は6万~7万円台が中心で、 相場よりも安い物件を選び、 倹約しながら頑張って生活しているようです」

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物価高が続くなか、 親からの仕送りだけでは学費や生活費をまかなえず、 アルバイトをしながら学業に励む学生も多い。

「物価高の時代ですから、 家賃も例外ではありません。 アルバイトを増やさざるを得ない学生も少なからずいるのでは。 できることなら、 奨学金で学業に専念できる時間を増やしてあげたい。 ましてや、 海外留学となれば、 円安の影響に加えて家賃も高く、 支払いに苦労する学生がいるのではないかと心配です」

周囲から寄せられた反響

奨学財団の設立に対する反応について、 鎌田先生はこう明かす。

「クリニックに泣きながら電話をかけてきて、 『お前は偉い!』と絶賛してくれた人もいました (笑)。 患者さんや地域の方々も、 好意的に受け止めてくれているようです」

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鎌田先生が奨学財団を立ち上げたことは、 地元紙にも取り上げられた。 記事を読んだ患者やその家族から、 応援の声をかけられることもあるという。

「私自身は立派な人物ではなく、 ごく普通の人間です。 週末には東京へ出かけ舞台や美術・音楽を鑑賞したり、 年に2~3回はヨーロッパ等の海外にも出かけたりして息抜きしています。 2022年にはホノルルマラソンにも参加しました。 大それたことはできませんが、 自分なりのペースで仕事も続けていきたいと思っています」

展望

公益財団法人を目指し、 支援の間口を広げたい

鎌田先生の今後の目標は、 イーハトーブ育英会を、 一般財団法人から公益財団法人にすることだ。 前者は一定の財産を拠出し、 登記することで設立できる。 一方後者は、 公益性などについて行政庁の認可を受けなければならない。

公益財団法人には税制上の優遇措置があり、 一定の条件を満たせば、 寄付者は寄附金控除を受けられる。 しかし現状は、 寄付者にメリットを還元できないため、 個人や法人からの寄付は受け付けていない。

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「奨学財団の継続性を高め、 より多くの学生に役立ててもらうためにも、 公益財団法人への移行を目指したいと考えています。 私もいつかは引退しますから、 将来的には寄付金による運営も視野に入れています。 支援の対象も、 岩手県にゆかりのある学生だけでなく、 日本全国の学生へと広げていければという夢を抱いています」

まずは奨学財団として、 最初の一歩から着実に実績を積んでいきたいと鎌田先生は話す。

「必ずしも当財団でなくても構いません。 医師に限らず子育てを終えたりして私財に余裕のある方々が、 その一部を拠出して、 日本の将来を担う学生を支援しようとする輪が広がることを切に願っています」

(>>後編につづく)

一般財団法人 イーハトーブ育英会の概要

2025年12月設立。 岩手県に本籍があり、 日本国内および海外の大学・大学院に自宅外通学をする学生を対象に、 家賃半額分相当を支給する。 給付型奨学金のため返済は不要。 応募条件は英語力 IELTS (アイエルツ) Academic 6.0以上のスコアを有すること。 募集人数は若干名。 奨学金の支給期間は卒業まで。

一般財団法人 イーハトーブ育英会HPはコチラ

仙台内科総合クリニックの概要

宮城県仙台市に位置する内科クリニック。 外来診療と訪問診療に対応し、 平日の午前7時30分~午後9時まで診療を行う。 院長を含む医師1人とスタッフ14人の体制で運営。 1日約40人の外来患者を診療するほか、 訪問診療では約180人の患者を支えている。

プロフィール

「岩手出身の学生に返済不要の奨学金を届ける」 仙台内科総合クリニック院長・イーハトーブ育英会理事長・鎌田和彦医師(前編)
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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