HOKUTO編集部
26日前
慶應義塾大学薬学部薬物治療学講座の飯田和樹氏らの研究グループは、 胆道癌患者7,773例のゲノム情報や生存期間、 治療内容などの大規模リアルワールドデータ (RWD) を解析し、 KRAS遺伝子変異が、 患者の予後不良および現行の薬物治療に対する抵抗性と強く関連することを明らかにした。 同詳細はESMO Open 2025年6月11日オンライン版に掲載された¹⁾。
難治性疾患である胆道癌は、 近年増加傾向を示しており、 現在日本の癌死亡数の第6位を占めている。 早期発見が難しく、 外科的切除による治療が困難な症例に対しては薬物治療が行われているが、 5年生存率は20%程度とその成績は十分ではない。
胆道癌患者に対する薬物治療の効果が限定的である原因として、 以下の2点があげられる。
国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター (C-CAT) に登録された胆道癌患者7,773例を対象として、 ゲノム情報や生存期間、 治療内容などのデータを解析した。
主要評価項目は全生存期間 (OS) であった。
胆道癌患者全体の23.4%でKRAS変異が認められた。 KRAS変異のタイプ別の内訳は、 G12D変異 (9.0%) が最も多く、 次いでG12V (5.4%)、 Q61H (1.9%)、 G13D (1.6%)、 G12C (1.1%) と続き、 その他が4.4%であった。
切除不能・切除可能胆道癌のいずれでも、 KRAS野生型患者と比べてKRAS変異陽性患者においてOSが有意に低下した (図1)。
肝内胆管癌、 肝外胆管癌、 胆嚢癌別のサブグループ解析を実施したところ、 肝内胆管癌および肝外胆管癌では、 切除不能・切除可能例のいずれでも、 KRAS野生型患者と比べてKRAS変異陽性患者でOSが有意に低下した。
胆嚢癌については、 切除不能例では上記と同様にKRAS変異の有無でOSに有意差が認められたが、 切除可能例では有意差は認められなかった。
切除不能胆道癌に対する薬物治療の効果とKRAS変異の関連について解析を行ったところ、 1次治療としてGCD療法 (ゲムシタビン+シスプラチン+抗PD-L1抗体デュルバルマブ) を実施したKRAS変異陽性患者は、 KRAS野生型患者と比べてOSが有意に低下した (図2)。 その他のGC療法 (ゲムシタビン+シスプラチン) やGCS療法 (ゲムシタビン+シスプラチン+S-1) を実施した患者においても同様に、 KRAS変異がOS低下と有意に関連していた。
また、 多変量解析によってKRAS変異のタイプ別に解析した結果、 特にG12D変異が治療抵抗性と関連していた。
飯田氏らは 「胆道癌患者に関するRWDを解析した結果、 KRAS変異が患者の予後不良および免疫チェックポイント阻害薬を含む現行の薬物治療に対する抵抗性と強く関連することが明らかになった。 本研究の結果を受け、 KRAS変異陽性胆道癌に対しては、 近年開発が進んでいるKRAS阻害薬を用いた個別化治療が効果的であると考えられる」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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