「抗がん薬を使うかどうか」 を患者さんと話すときの考え方~後編~
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HOKUTO編集部

3ヶ月前

「抗がん薬を使うかどうか」 を患者さんと話すときの考え方~後編~

 「抗がん薬を使うかどうか」 を患者さんと話すときの考え方~後編~
本連載は4人の腫瘍内科医による共同企画です。 がん診療専門医でない方でもちょっとしたヒントが得られるようなエッセンスをお届けします。 第15回は虎の門病院・三浦裕司先生から、 「抗がん薬を使うかどうかを患者さんと話すときの考え方」 です! ぜひご一読ください。  
 「抗がん薬を使うかどうか」 を患者さんと話すときの考え方~後編~

効果とリスクの2軸で推奨を検討

中編では、 標準治療と禁忌の中間を円で記載しましたが、 もう少し考えやすくするために、 今回は 「効果」 と 「リスク」 の2軸の分布で記載しました。

 「抗がん薬を使うかどうか」 を患者さんと話すときの考え方~後編~
(三浦裕司氏提供)

低リスク×高い効果=「標準治療」

左上の緑で囲まれた部分は、 効果が証明された標準治療であり、 かつ臨床試験に参加できるような元気でリスクの低い患者さんが当てはまります。

高リスク=「禁忌」

図の赤で囲まれた逆L字の部分は、 抗がん薬を投与することにより、 患者さんにデメリットが生じる可能性が高い状況です。

縦軸の部分は、 患者さんの状態が悪いもしくは禁忌の状態など、 抗がん薬治療が患者さんにデメリットを与えることが強く予想される状況です。 例えば、 全身状態(PS)が4、 意識が保たれていない、 肝臓や心臓、 肺などの臓器機能が保たれていないなどの状態が該当します。

効果が期待できない=「根拠のない治療」

同じく赤で囲まれた逆L字の横軸の部分は、 エビデンスがないだけではなく理論的にも効果が期待できない治療法になります。 例えば、 保険適応になっていない多くの民間療法がこれにあたります。

このような治療法を患者さんから提案されたときは、 なぜその治療を行いたいのか、 そして、 なぜ我々がそれを勧めないのかについて、 時間を取ってしっかりと話し合う必要があります。

効果・リスクとも 「許容範囲の治療」

緑枠と赤枠の中間に位置するオレンジ色の逆L字の部分は、 何かしら問題があるが、 患者さんにメリットが得られる可能性があると考えられる状況です。 この部分はさらに細かく3種類に分けることができます。

高い効果が期待できるが、 ある程度リスクを有する状態

さまざまながん種において効果が期待できる早期ラインのセッティングであるものの、 臓器機能がやや低下している、 および/または高齢である、 PSが適応ギリギリ、 などの状態が図内①に当てはまります。

例えば、 40-50歳代の原発不明がんで、 腫瘍の影響でPSが悪化している患者で生検にて胚細胞腫瘍が疑われる場合、 標準治療であるブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン (BEP) 併用療法は中等度のリスクが想定されますが、 非常に高い効果が得られる可能性があるため、 勧められるかもしれません。

効果のエビデンスレベルは高くないが、 リスクは標準治療の範疇内で投与可能な状態

第III相無作為化比較試験など質の高いエビデンスはないものの、 通常のリスクの範疇で実施できる状態がここに当てはまります。

例えば、 全身状態、 臓器機能ともに問題ない患者さんにおいては、 多くのがん種における3次治療、 4次治療など後期ラインの治療や希少がんの1次治療などは、 ガイドラインなどのエキスパートオピニオンを参考に実施を検討できる可能性があるといえるでしょう。

と②の混ざった状態

キャンサーボードなどを開催し、 複数の職種、 専門家で検討した上で、 患者さんとしっかりメリットとデメリットを話し合い、 治療の是非を検討する事が勧められます。

安全・有効な治療選択のために

知識・経験の積み重ねが何より重要

このように、 標準治療と禁忌の間に位置する 「許容範囲」 の患者さんに対して、 いかに安全で効果的な治療を行うのかについては、 システマティックな腫瘍内科の“知識”と、 一人ひとりの患者さんを丁寧に診る“経験”の積み重ねが何よりも必要となります。

ここまで3回にわたり、  「抗がん薬を使うかどうか」 を患者さんと話すときの考え方を解説しました。 本稿の考え方がその際の参考になれば幸いです。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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