海外ジャーナルクラブ
20時間前
Neilsonらは、 聴力診断で難聴と診断された患者を対象に、 パーキンソン病 (PD) の新規発症リスクをコホート研究で検討した。 その結果、 難聴の重症度が高いほどPD発症リスクが高く、 補聴器の早期の使用が発症リスクを軽減させる可能性があることが明らかとなった。 本研究はJAMA Neurology誌にて発表された。
単なる疫学研究にとどまらず、 重症度と発症リスク増加の関連や、 介入と発症リスク軽減の関連を見ている点で素晴らしい研究です。
PD発症リスクに対する難聴の影響は明確でない。 従来の自己申告に基づくデータでは感度が低いという課題があり、 客観的なデータが不足している。
米国退役軍人局のデータを基に、 1999~2022年に聴力検査を受けた退役軍人を抽出し、 聴力検査の結果により対象者 (359万6,365例) を軽度難聴、 中等度難聴、 中高度難聴、 重度難聴に分類した。 なお、 すでにPDと診断されている者や、 純粋な伝音難聴患者については除外した。
主要評価項目はPDの累積発生率*とした。
難聴の重症度が高いほど、 1万人・年当たりのPD発症率 (3.69~11.6) および死亡率 (103~1,140) が上昇した。
また、 聴力検査から10年後のPD累積発症者数は、 正常聴力者と比較して、 軽度難聴群で6.1人 (95%CI 4.5-7.79)、 中等度難聴群で15.8人 (同12.8-18.8)、 中高度難聴群で16.2人 (同11.9-20.6)、 高重度難聴群で12.1人 (同4.5-19.6) 多かった。
難聴患者を、 PD前駆期のマーカー、 耳鳴り、 外傷性脳損傷 (TBI) の既往に基づいて層別化して解析した結果、 PDの発症率は、 難聴のみと比較し、 難聴かつPD前駆期マーカー陽性の患者、 難聴かつTBI歴のある患者において有意に高かった。
難聴者に補聴器を提供すると、 提供しなかった場合に比較して10年間のPD発症者が21.6例 (95%CI 19.5-23.6) 減少することが示された。
著者らは、 「難聴はPD発症の独立した危険因子であり、 補聴器の使用がそのリスクを低減させる可能性がある。 したがって、 難聴者に対する早期スクリーニングと補聴器の適切な提供は、 PD発症リスクを抑えるための重要な手段となると考えられる。 難聴とPDの関連性の根底にあるメカニズムを解明するため、 今後さらなる研究が求められる」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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