T-DXdは脳転移やLMCを有する乳癌にも有効:ROSET-BM試験
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HOKUTO編集部

1年前

T-DXdは脳転移やLMCを有する乳癌にも有効:ROSET-BM試験

T-DXdは脳転移やLMCを有する乳癌にも有効:ROSET-BM試験
ROSET-BM試験では、 脳転移を有するHER2陽性転移性乳癌に対するT-DXdの治療効果について、 脳転移またはLMC症例を含む実臨床において多施設共同レトロスペクティブチャートレビュー研究として実施。 その結果から、 T-DXdは活動性脳転移やLMCを有するHER2陽性乳癌患者にも有効であることが示された。 琉球大学病院第一外科の野村寛徳氏が第31回日本乳癌学会で発表した。 

試験の概要

背景

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd) は、 DESTINI-Breast01試験DESTINI-Breast03試験において、 安定した脳転移を有するHER2陽性転移性乳癌に対して有望な効果を示したが、 活動性脳転移や脳髄膜癌腫症(LMC)を有する患者のデータは限られている。

対象

2020年12月31日時点でHER2陽性乳癌患者の治療にT-DXdを使用した日本国内の医療機関を対象に、 2020年5月~21年4月にT-DXdを受けた脳転移(および/またはLMCを有するHER2陽性乳癌患者のデータを収集した (データカットオフ日:2021年10月31日)。

脳転移(BM)には活動性、 安定性、 放射線照射症例、 症候性/無症候性が含まれた。 またBMに対する局所治療歴を有する患者も対象とされた。

評価項目

1) 全集団に対する解析(担当医評価)

治療成功期間(TTF)、 無増悪生存期間(PFS)、 全生存期間(OS)、 客観的奏効率(ORR)、 CNS転移関連症状の悪化までの期間*

*イベントの定義:ステロイドや抗てんかん薬の追加や増量

2) 脳画像を有する集団に対する解析(ICR評価)

頭蓋内(IC)奏効率(IC-ORR)、 IC-PFS、 CNS進行までの期間、 頭蓋内奏効持続期間(IC-DOR)、 頭蓋内臨床的有用率(IC-CBR)**

**IC-SDまたは6カ月以上のnon-CR/non-PDまたはIC-CR/PRの最良効果

結果

研究対象患者の内訳

国内62施設において適格基準を満たした104例が対象とされた。 うち89例が評価可能な脳画像データを有する患者であった。 観察期間中央値は11.2カ月。

患者背景
65未満/65歳以上=75例(72.1%)/29例(27.9%)
HER2 status(IHC法) 0/1+/2+/3+/不明=0例/18例/84例/2例
転移性乳癌に対する前治療レジメン数の中央値は4.0
ECOG PS 0/1/2/3~4/不明=27例/54例/12例/4例/7例
BMの随伴症状あり 32例(30.8%)
BMの分類 LMC合併なしの活動性/LMC合併ありの活動性/安定性/LMCのみ/画像非分類=73例/17例/6例/2例/6例
脳転移数 1/2-4/5-9/≧10=18例/28例/17例/27例

PFS/OS

PFS中央値: 16.1カ月 [95%CI 12.0-未到達(NR)]

OS中央値: NR (95%CI 16.1-NR)

12カ月時OS率:74.9%(95%CI 64.5-82.6%)

BMの分類別に見たPFS/OS

PFS中央値:

  • 活動性BM:13.4カ月
  • 安定性BM:14.6カ月
  • LMC:NR

12カ月時OS率:

  • 活動性BM:70.4%
  • 安定性BM:78.8%
  • LMC:87.1%

脳画像を有する集団に対する解析結果

  • IC-ORR:62.7%
  • IC-CBR:70.6%

安全性

T-DXdの安全性プロファイルは既報と同様だった (間質性肺疾患/肺障害 18.3%)。

結論

本研究結果から、 T-DXdはBMおよび/またはLMCを有するHER2陽性転移性乳癌患者に対して治療効果を有することが示唆された。  本研究はレトロスペクティブ研究であり、 今後さらなる前向き研究が期待される。

研究のLimitation

  • 脳転移の有無は担当医が判断するため、 すべての脳転移患者で報告されているかどうかについては、 報告バイアスの可能性は否定できない。
  • LMCはICRによる画像診断であり、 髄液中の腫瘍細胞の有無は確認されていない。
  • 画像評価の頻度が明記されていないため、 PFSが過大評価されている可能性がある。

野村寛徳氏のコメント

T-DXdは脳転移やLMCを有する乳癌にも有効:ROSET-BM試験
琉球大学病院第一外科 野村寛徳氏
「今回の研究結果から、 T-DXdはHER2陽性の脳転移、 髄膜癌腫症の患者への強力な治療選択薬になることが示された。 また本研究の対象患者においては、 かつて抗HER2抗体トラスツズマブが登場した時のような驚愕すべき治療効果を示す症例がいることが確認されたことも意義ある結果となったと考えている。」

こちらの記事の監修医師
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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