Fratらは, COVID-19 による呼吸不全患者を対象に, 高流量鼻カニューレ (高流量酸素) 療法の有効性を検討する無作為化臨床試験を実施 (SOHO-COVID試験) . その結果, 高流量経鼻カニューレ酸素は標準酸素療法と比較して, 28日死亡率を有意に低下させないことが明らかとなった. 本研究は, JAMA誌において発表された.
📘原著論文
Effect of High-Flow Nasal Cannula Oxygen vs Standard Oxygen Therapy on Mortality in Patients With Respiratory Failure Due to COVID-19: The SOHO-COVID Randomized Clinical Trial. JAMA. 2022 Sep 27;328(12):1212-1222.PMID: 36166027
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
本研究成果を含め, COVID-19に対する酸素療法のエビデンスは混沌としています. 現時点で本研究成果を踏まえて言えることは, 仮に高流量鼻カニュラ酸素療法デバイスが不足してしまった特殊な状況下において, 通常の酸素療法しか選択できない場合でもその選択は許容されうる, ということかと思います.
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4C mortalityスコア
COVID-19入院患者の予後予測スコア
ROX 指数
HFNC 高流量鼻腔カニューレ患者の予後指標
背景
COVID-19による呼吸不全患者において, 高流量鼻カニューレ酸素療法が挿管や死亡率改善の点で有益かどうかは議論のあるところである.
研究デザイン
- 対象:COVID-19 による呼吸不全で, 動脈血酸素分圧と吸入酸素分率の比が 200mmHg以下の患者:711名
- 患者は以下の2群に無作為に割り付け.
- 高流量酸素群:357名
- 標準酸素群:354名
- 主要評価項目:28日時点の死亡率
- 副次評価項目:気管挿管を必要とした患者の割合, 28日時点の人工呼吸器離脱期間, 90日時点の死亡率, 死亡率およびICU入室期間, 有害事象など13項目を設定.
研究結果
有効性評価
- 28 日時点の死亡率
- 高流量酸素群: 10% (357名中36名)
- 標準酸素群:11% (354名中40名)
絶対差:-1.2%, 95%CI -5.8%-3.4%, P=0.60
- 13の副次的転帰のうち, ICU入室期間と死亡率, 90 日時点までの死亡率を含む 12 の転帰に有意差は認められなかった.
- 気管挿管率は, 標準酸素群よりも高流量酸素群のほうが有意に低かった.
- 高流量酸素群:45% (357名中160名)
- 標準酸素群:53% (354名中186名)
絶対差:-7.7%, 95% CI -14.9%--0.4%, P=0.04
- 28日時点の人工呼吸器離脱期間は, 群間で有意差はなかった.
中央値 28 vs. 23日, 絶対差:0.5日, 95%CI -7.7-9.1, P=0.07
安全性評価
- 最も多かった有害事象は人工呼吸器関連肺炎であった.
- 高流量酸素群:58% (160名中93名)
- 標準酸素群:53% (186名中99名)
結論
COVID-19による呼吸不全患者において, 高流量経鼻カニューレ酸素療法は標準酸素療法と比較して, 28日死亡率を有意に低下させなかった.