HOKUTO編集部
3ヶ月前

抗PD-1抗体またはBRAF/MEK阻害薬による治療で病勢進行 (PD) が認められ、 投与が中止された進行期悪性黒色腫 (メラノーマ) を対象に、 両剤再投与 (リチャレンジ) の有効性を比較評価した後ろ向きコホート研究において、 DCRおよびPFS中央値は抗PD-1抗体群と比べてBRAF/MEK阻害薬群で有意に改善したものの、 長期有効性はいずれの治療群でも得られなかった。 この理由に関する既存研究との比較による考察も併せて、 静岡がんセンター皮膚科の堀崎健氏が発表した。
免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) およびBRAF/MEK阻害薬は現在、 進行期メラノーマに対する標準治療となっている。 しかし、 アジア人ではサブタイプとして末端型・粘膜型が多いこと、 皮膚原発であっても腫瘍遺伝子変異量 (TMB) が低いことなどから、 ICIが奏効しにくい傾向がある。 また日本人では、 BRAF変異陽性率が低く、 アジア人に限ったことではないがBRAF/MEK阻害薬は1年以内に腫瘍抵抗性を生じる可能性があることから、 治療選択肢がなくなるケースが少なくない。
近年、 同薬のリチャレンジにより再び奏効が得られたという報告が多数みられるが、 日本の報告は限定的である。 そこで堀崎氏らは、 同センターにおいて、 リチャレンジの有効性を後ろ向きコホート研究で評価した。
対象は、 2012~24年に抗PD-1抗体またはBRAF/MEK阻害薬の初回治療後にPDとなりリチャレンジした切除不能または再発性メラノーマ患者であった。
48例が投与された治療薬を基に以下の2群に分類された。
主要評価項目は客観的奏効率 (ORR)、 病勢コントロール率 (DCR)、 無増悪生存期間 (PFS) であった。
ベースライン時の患者背景として、 粘膜原発は抗PD-1抗体群で50%、 BRAF/MEK阻害薬群で0%、 予後不良のマーカーであるLDH上限値超 (≧ULN) がそれぞれ79.4%、 42.9%と抗PD-1抗体群で多く、 初回治療からリチャレンジまでの期間中央値も4.3ヵ月、 2.4ヵ月と抗PD-1抗体群で長かった。
一方で、 ECOG PS≧2はそれぞれ11.8%、 28.6%、 BRAF変異陽性率は20.6%、 100%とBRAF/MEK阻害薬群で多かった。 それに伴い、 BRAF/MEK阻害薬群では皮膚原発が100%と両群間で偏りがみられた。
ORRはBRAF/MEK阻害薬群が14.3%であり、 抗PD-1抗体群の0%と比べて数値的な改善が認められた (p=0.08)。
DCRはBRAF/MEK阻害薬群が50.0%であり、 抗PD-1抗体群の8.8%と比べて有意な改善が示された (p=0.003)。
抗PD-1抗体群においてリチャレンジにより病勢安定 (SD) が得られた割合は8.8% (3例) に留まり、 それ以外の91.2%はすべてPDであった。 SDの3例はいずれも初回治療でPRを獲得しており、 PFS中央値が2年以上の患者だった。
一方で、 BRAF/MEK阻害薬群ではSDが35.7% (5例)、 部分奏効 (PR) が14.3% (2例) であり、 PRの2例はいずれも初回治療でPRを獲得し、 SDの5例も概ねPRが得られていた。 それ以外の50.0%はPDであった。
PFS中央値はBRAF/MEK阻害薬群が3.0ヵ月であり、 抗PD-1抗体群の2.1ヵ月と比べて有意に改善した (p=0.025) ものの、 いずれの治療群においても長期的な有効性は得られなかった。
上記の結果および既存報告との比較を踏まえて、 ICIおよびBRAF/MEK阻害薬によるリチャレンジの成功因子について、 堀崎氏は以下のとおり考察した。
フランスの多施設共同後ろ向きコホート研究では、 メラノーマにおけるICIのリチャレンジによりORRは54%、 DCRは75%、 PFS中央値は21ヵ月と良好であった。 ただし、 対象は初回治療において病勢コントロールを達成し、 計画中止された患者だった¹⁾。 また、 イタリアの多施設共同後ろ向きコホート研究でも、 ICIのリチャレンジによりORRは21%、 PFS中央値は19.4ヵ月と良好であったが、 対象は初回治療において病勢コントロールを達成し、 その後、 PDが認められた患者としていた²⁾。
その他の多くの研究も含め、 ICIによるリチャレンジの成功因子として以下の2点が示唆された。
一方で、 前述のとおり日本人ではICIが奏効しにくい傾向がみられるため、 今回の研究はPDで初回治療を中止した患者を主な対象としていた。 これが欧米の報告と比べて奏効率が低かった一因と考えられる。
欧米のメタ解析³⁾、 オランダの多施設共同後ろ向きコホート研究⁴⁾、 スペインの多施設共同後ろ向きコホート研究⁵⁾では、 BRAF/MEK阻害薬のリチャレンジによるORRはおよそ30~40%、 DCRは60%前後、 PFS中央値はおよそ5ヵ月であった。
これらの研究から、 BRAF/MEK阻害薬によるリチャレンジの成功因子として以下の3点が示唆された。
一方で、 今回の研究ではリチャレンジまでの期間中央値が2.4ヵ月と短く、 PS≧2の患者が30%近くを占めていた。 これらの好条件が揃わなかったことが、 欧米の報告と比べてやや劣る成績となった一因と考えられる。
堀崎氏は 「抗PD-1抗体およびBRAF/MEK阻害薬のいずれにおいても、 リチャレンジは初回治療の有効性や中止理由、 リチャレンジまでの間隔に基づいて検討すべきである」 と報告した。
¹⁾ Cancers (Basel). 2023 Jul 10;15(14):3564.
²⁾ J Clin Oncol. 2025 Jun;43(16_suppl):e18754.
³⁾ Cancers (Basel). 2023 Jul 25;15(15):3754.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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