海外ジャーナルクラブ
3ヶ月前
Hongらは、 早期の非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者を対象に、 術前の血液循環腫瘍DNA (ctDNA) 検出の臨床的有用性について、 術前血漿検体を用いて検討した。 その結果、 術前にctDNAが検出されていた臨床病期Ⅰ期肺腺癌患者では非検出患者に比べて予後不良であったほか、 ctDNA検出状況と腫瘍体積やPD-L1発現率などとの関連が示された。 本研究はJ Thorac Oncolにて発表された。
「臨床病期Ⅰ期の肺腺癌において、 術前のctDNA検出が予後不良に関連する」 とのことです。 昨今、 微小残存病変 (MRD)の評価は注目領域のひとつです。 吉田達哉先生の連載もご確認下さい。
手術前の疾患早期の患者における、 腫瘍情報を利用した (tumor-informed) ctDNA検査は、 組織の入手方法に制限があるほか検査結果が判明するのに時間がかかるため、 使用は限られている。
本研究では、 切除後NSCLC患者の大規模コホートにおいて、 腫瘍検体が不要なメチル化ベースのcell-free assayの臨床的価値について評価することを目的とした。
EGFR野生型およびALK野生型で、 臨床病期が I期またはⅡ期のNSCLC患者895例から得た術前血漿検体を分析した。
ctDNAの状態が、 腫瘍量や代謝活動、 組織学的診断、 臨床的TNM分類から病理学的TNM分類でのアップステージに関連した予後的意義を有するかを評価した。
臨床病期Ⅰ期・II期の肺腺癌の、 2年無再発生存率を以下に示す。 Ⅰ期の肺腺癌でctDNAが検出された患者13%(55例)では、 検出されなかった患者に比べて2年無再発生存率が有意に低かった (p<0.001)。 この2年無再発生存率は、 Ⅱ期肺腺癌患者全体と同等であった。
肺腺癌および非肺腺癌患者の腫瘍体積を以下に示す。 術前にctDNAが検出された患者では、 非検出の患者に比べて腫瘍体積が有意に大きかった (いずれもp<0.001)。
肺腺癌・非肺腺癌のPET-CT検査におけるSUVmaxを以下に示す。 術前にctDNAが検出された患者では、 非検出の患者に比べてSUVmaxが有意に高かった(いずれもp<0.001)。
臨床病期Ⅰ期の肺腺癌・非肺腺癌における、 病理病期が臨床病期からアップステージするリスクを以下に示す。 術前のctDNA検出状況はこのリスクと関連していた。
臨床病期Ⅰ期肺腺癌患者における、 PD-L1の発現率の分布を以下に示す。 術前にctDNAが検出された患者では、 検出されなかった患者に比べてPD-L1の発現率が1%以上である可能性が有意に高かった (p<0.001)。
著者らは 「本研究で得られた知見は、 早期NSCLCにおけるルーチンの診断ワークフローに、 腫瘍組織を要さないctDNA検査を組み込むことを支持するものである。 さらに、 免疫チェックポイント阻害薬による術前療法などの革新的治療が、 有効なハイリスク患者を同定する上での臨床的価値が確認された」 と述べている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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