海外ジャーナルクラブ
3ヶ月前
Chanらは臨床的適応のある冠動脈CT血管造影 (CCTA) を受けた患者を対象に、 炎症性リスクが心血管イベントに与える影響について、 多施設縦断的コホート研究ORFANで検討した。 その結果、 CCTA画像から算出した血管周囲脂肪減弱指標 (FAI)スコアに基づいた冠動脈の炎症評価を行った場合、 閉塞性冠動脈疾患(CAD)の発症有無にかかわらず予後予測に役立つことが明らかにされた。 本研究はLancet誌で発表された。
著者らはCCTA画像からFAIスコアを考案し、 さらにアテローム性プラークの負荷と臨床的危険因子 (糖尿病、 喫煙、 高脂血症、 高血圧) をFAIスコアに組み入れてAI-Riskを構築して最後に外部検証しています。 2~3個の論文が1つに凝縮されている感があります。
冠動脈CT血管造影 (CCTA) は、 胸痛患者に対する第一選択の検査である。 CCTAの普及により、 閉塞性冠動脈疾患 (CAD) を有しておらず予後が不明確な患者が多数存在することが明らかになった。
血管周囲脂肪減弱指標 (FAI) スコアを用いたCCTAによる冠動脈炎症の測定は、 心血管リスクの予測と閉塞性CADを有さない患者管理の指針に役立つ可能性がある。
目的
本試験の目的は、 以下の3点である。
1.英国国民保健サービス (NHS) の日常診療の一環としてCCTAを受けた患者の、 リスクプロファイルとイベント発生率を評価すること
2.「CADの有無にかかわらず、 冠動脈炎症が心疾患による死亡や主要な有害心イベント (MACE) に起因する」 という仮説を検証すること
3.人工知能(AI)-Risk予後予測アルゴリズム*の性能を外部検証すること
対象
目的1の検証にはコホートA、 目的2と3の検証にはコホートBを対象とした。
コホートA
英国の8病院で、 臨床的適応のあるCCTAを受けた全患者4万91例
コホートB
コホートAの対象患者のうち、 2病院でCCTAを受け、 かつ追跡期間中央値が長かった*3,393例
全体の追跡期間中央値は2.7年であった。 結果を以下に示す。
コホートAを用いて、 患者のリスクプロファイルとイベント発生率を評価した。
CAD患者の心疾患死亡・MACE・心筋梗塞などのリスクは、 CADではない患者に比べて高かった。
一方、 CADではなかった3万2533例のうち、 2,857例がその後にMACEを発症し、 1,118例が心疾患で死亡していた。
コホートA全体のMACE総数
4,307例、 そのうち閉塞性CADのない患者数 : 2,857例 (66.3%)
心疾患による死亡総数
1,754例、 そのうち閉塞性CADのない患者数 : 1,118例 (63.7%)
コホートBを用いて、 「CADの有無にかかわらず、 冠動脈炎症が心疾患による死亡やMACEに起因する」 という仮説を検証した。
その結果、 3本の冠動脈すべてでFAIスコアが増加すると、 心疾患による死亡リスクおよびMACEリスクに相加的な影響を与えることがわかった。
心疾患による死亡
HR 29.8 (95%CI 13.9-63.9、 p<0.001)
MACE
HR 12.6 (95%CI : 8.5-18.6、 p<0.001)
コホートBを用いて、 AI-Risk予後予測アルゴリズムの性能を検証した。 その結果、 心疾患による死亡率、 MACEに強い相関が認められ、 AI-Risk分類は有効な予後予測ツールであることが確認された。
心疾患による死亡率
HR 6.75 (95%CI 5.17-8.82)、 p<0.001
MACE
HR 4.68 (95%CI 3.93-5.57)、 p<0.001
著者らは 「FAIスコアは、 CCTAで閉塞性CADが認められなかった患者においても臨床的なリスク層別化や炎症性リスクを捉えている。 また、 AI-Riskは同スコアを予後予測のアルゴリズムに統合し、 従来の危険因子に基づくリスク予測の代替として使用できることが示唆された」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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