Ballouzらは､ スイス・チューリッヒ州の一般住民を対象に､ SARS-CoV-2感染後の長期症状と健康転帰を前向き縦断コホート研究で検討｡ その結果､ 感染前にワクチンを接種していない人の約18%が､ 感染後2年まで新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の罹患後症状が認めさら､ 感染者は未感染者に比べ､ 症状の過剰リスクがあることが示された｡ 本研究はBMJ誌において発表された｡

📘原著論文

Recovery and symptom trajectories up to two years after SARS-CoV-2 infection: population based, longitudinal cohort study. BMJ. 2023 May 31;381:e074425. doi: 10.1136/bmj-2022-074425. PMID: 37257891

👨‍⚕️監修医師のコメント

やはりワクチン接種をしていない群のみの研究なのでワクチン接種を行なった群のデータがないと真の解釈が難しいです｡

🔢 関連コンテンツ

4C mortalityスコア

研究デザイン

対象

スイス､ チューリッヒ州の一般住民｡

• ワクチン未接種でSARS-CoV-2に感染した成人：1,106例
• 未感染者：628人

主要評価項目

• 感染後6､ 12､ 18､ 24カ月の自己報告による健康状態とCOVID-19関連症状の軌跡
• 未感染者との比較による感染後6カ月時点の症状の過剰リスク

研究結果

感染後の健康状況

SARS-CoV-2に感染した個人の22.9％ (95%CI 20.4-25.6％) は､ 6カ月までに完全に回復していないと報告した｡ その後､ 回復していないと回答した割合は､ 感染後12カ月で18.5％ (16.2-21.1％)､ 24カ月で17.2％ (14.0-20.8％) に減少した｡

自己報告による健康状態の変化

自己報告による健康状態の変化を評価したところ､ ほとんどの参加者は､ 時間の経過とともに､ 回復が続いている (68.4％､ 95％CI 63.8-72.6％) か､ 全体的に改善している (13.5％､ 95％CI 10.6-17.2％) ことがわかった｡ しかし､ 5.2% (95％CI 3.5~7.7%) は健康状態が悪化し､ 4.4% (95％CI 2.9-6.7%) は回復と健康障害が交互に繰り返されていると報告した｡

COVID-19関連症状の点有病率および重症度

COVID-19関連症状の点有病率および重症度も時間の経過とともに減少し､ 24カ月時点で症状を訴えたのは18.1％ (95％CI 14.8-21.9％) であった｡

感染者の8.9% (95％CI 6.5-11.2%) は､ 4つのフォローアップ時点すべてで症状を報告し､ 12.5% (95％CI 9.8-15.9%) では無症状と有症状の時期が交互に繰り返された｡

症状有病率

症状有病率は､ 6カ月時点で感染している参加者の方が感染していない参加者よりも高かった｡

調整後リスク差 17.0％ (95％CI 11.5-22.4％)

感染者における症状の過剰リスク

感染者における個々の症状の過剰リスク (調整後リスク差) は2~10％であった｡

最も過剰リスクが高かった症状

• 味覚・嗅覚の変化：9.8％ (95％CI 7.7-11. 8％)
• 労作後倦怠感：9.4％ (95％CI 6.1-12.7％)
• 疲労：5.4％ (95％CI 1.2-9.5％)
• 呼吸困難：7.8％ (95％CI 5.2-10.4％)
• 集中力低下：8.3％ (95％CI 6.0-10.7％)
• 記憶障害：5.7％ (95％CI 3.5-7.9％)

結論

感染前にワクチン接種を受けていない人の最大18％が､ 感染後2年までCOVD-19の罹患後症状を有しており､ 未感染者と比較して過剰な症状リスクがあることが証明された｡ COVD-19罹患後症状の負担を軽減するために､ 効果的な介入策が必要である｡