「極小折り鶴の実技試験が話題に、 人気病院の新たな挑戦」 倉敷中央病院副院長・福岡敏雄医師(前編)
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インタビュー

4日前

「極小折り鶴の実技試験が話題に、 人気病院の新たな挑戦」 倉敷中央病院副院長・福岡敏雄医師(前編)

 「極小折り鶴の実技試験が話題に、 人気病院の新たな挑戦」 倉敷中央病院副院長・福岡敏雄医師(前編)
岡山県倉敷市の倉敷中央病院は、 西日本有数の大規模な民間急性期病院だ。 初期研修医の採用試験にユニークな実技を導入したことで話題を呼び、 現在では全国から毎年300人以上の応募者が集まる人気研修病院に発展した。 インタビュー前編では、 同院における医学教育の中心人物である、 副院長の福岡敏雄医師に採用試験の意図を聞いた。 

目的

「極小折り鶴」 を作る試験、 本当に見たかったものは?

 「極小折り鶴の実技試験が話題に、 人気病院の新たな挑戦」 倉敷中央病院副院長・福岡敏雄医師(前編)
「極小折り鶴」 を作る実技トライアウト

倉敷中央病院では、 2015年から初期研修医の採用試験に 「実技トライアウト」 を導入。 1.5センチ四方の折り紙で作る 「極小折り鶴」、 昆虫の組み立て、 1粒の米にネタを乗せる 「米粒寿司」 など、 ユニークな試験内容が話題となった。

 「極小折り鶴の実技試験が話題に、 人気病院の新たな挑戦」 倉敷中央病院副院長・福岡敏雄医師(前編)
タマムシを組み立てる挑戦者 (写真はデモンストレーションの様子)

これは、 受験者の 「手先の器用さ」 だけを見る試験では決してないという。 斬新な実技トライアウトの意図について、 副院長の福岡先生はこう説明する。

受験者の能力や、 “素”の部分を見ようと実技を導入しました。 個人の人柄や個性は、 画一的な筆記や面接ではわかりません。 色々な物差しを当てることで、 その人のポテンシャルを見出せるのではと考えています

実技トライアウトの課題は毎年変更される。 これまでも、 「極小蝶結び」 や 「輪つなぎ」 などさまざまな試験が実施されてきた。

努力の痕跡からそれぞれの個性を見出す

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実技は一発勝負。 作り方や作品にも個性が出る (写真はデモンストレーションの様子)

実技を終えた後の 「対話」 の時間も重要だ。 自分がつくったプロダクトを前に、 試験官と受験者の面接が行われる。

「難なく実技をこなす人もいれば、 気まずい顔でやや“無惨”な作品を持ってくる人もいるわけです (笑) 」

出来栄えの良し悪しを問わず、 成果物そのものが会話の糸口になる。 「何をしようとしたのか?」 「どのような意図があるのか?」 といった切り出しで、 実技トライアウトを振り返る。 努力の痕跡から、 本人の狙いや意図、 それぞれの人柄、 個性がうかがえると福岡先生は話す。

医学生の多様さに応じた 「物差し」 が必要

研修医採用を始めた当初は、 他の病院と同じく、 一般的な面接や筆記試験を実施していた。 しかし、 面接時の成績が良くても 「良い医師」 になるとは限らない。

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※写真はイメージです

例年、 25~30⼈の研修医を採用してきたので、20年で本当に多くの医学生を見てきました。 中には面接では好印象だったのに、 医師として働き始めると崩れてしまう人もいます。 医学生も多様ですから、 採用側にも多面的な物差しが必要です

一発勝負の実技では、 事前準備や対策が難しい。 精密な作品を作る人、 自分の強みを表現する人、 粘り強く作業する人など、 それぞれのキャラクターが反映される。

経緯

実技導入により、 低迷したマッチ率がV字回復

新研修医制度がスタートした2004年から、 研修医自らが希望する病院を選べるマッチングシステムが本格導入された。 それにより、 市中病院を研修先に選ぶ人も増加している。

倉敷中央病院が研修医採用を始めたのは、 新研修医制度が始まる2年前の2002年からだ。 全国有数の大規模病院が公募を始めたという話題性もあり、 出だしは好調だった。

しかし次第にマッチ率は低迷し、 2014年には70%を割るなど、 定員枠を埋めるのに苦労する年が続く。

知名度の頭打ちや、 応募者数の減少を解消するテコ入れが必要な局面でした。 『優秀な研修医を採用するため学力試験を導入すべき』という意見もありましたが、 多様性を重んじる当院らしさを打ち出した試験内容にしました

当時の病院長を筆頭に、 福岡先生を含む病院幹部や職員、 チームに加わった広告代理店の意見も取り入れ、 新しいスタイルの採用試験が2015年から開始された。

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2015年に東京ビッグサイトで行われたデモンストレーション。 参加者からも好評だった

研修医の募集に先駆けてメディア向けにプレスリリースを配信した研修病院合同説明会では、 実技トライアウトのデモンストレーションを実施。この一連のタイミングや内容についても、外部の助⾔を受け⼯夫を凝らしたという。 また、 特設サイトやSNSを通じた情報発信も話題を呼び、 2015年の応募者は前年の2倍に増えた。

その後も、 マッチ率は毎年ほぼ100%で推移している。

病院側の意図が正しく伝わるか?世間の反応は

前例のない試みに、 病院内では慎重な声もあったという。 「折り鶴を折れれば採用される病院だと誤解されるのでは」 という意見もあった。

初回の採用試験を終えるまでは、 正直不安もありました。 しかし、 実技トライアウトを受けて入職した研修医からは非常に好評だったんです。 『面白かった、 来年もぜひやってほしい』と前向きな感想をもらいました

一連の広報戦略はカンヌの国際的な広告祭でも高く評価され、 医療・ヘルスケア部門で金賞を受賞。 国内外のマスコミにも取り上げられ、 世間から高評価で受け止められた。

変革

2027年度から試験的に実技を廃止。 次なるチャレンジは

10年前から続けてきた実技トライアウトだが、 2027年度から試験的に廃止するという。 2026年8月に実施する試験では、 「グループディスカッション」 が導入される。 試験内容の転換について、 福岡先生は次のように話す。

今年から実技を廃⽌し、 課題に基づくグループディスカッションの導⼊を決めました。もちろん新たなチャレンジです。 今後の検討次第で、 以前の選抜⽅法に戻すかもしれません」

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※写真はイメージです

採用プロセスも含めて、 今後も模索を続ける考えだという。 人の個性や長所を見る方法に正解はないからだ。

「採用試験の目的は欠点探しではなく、 長所を発掘することです。 そこで使う尺度にも柔軟性・多様性が必要なはず。 受験者との対話を深める方法を探っていきたいです」

昨年、 医師教育研修部の責任者は救急科の越後谷良介医師にバトンタッチされた。

「中堅・若手の目線で研修そのものを含め変えていってくれることに、 大きな期待を寄せています」

2026年は、 医学生だけではなく、 病院にとっても新たなチャレンジの節目になりそうだ。

(>>後編につづく)

倉敷中央病院の概要

岡山県倉敷市にある民間の急性期病院。 標榜診療科36科、 病床数1172床。 年間約1万台の救急搬送、 4万人以上の救急患者を受け入れる。 2026年4月1日時点での医師数は533人。

1923年 (大正12年)、 倉敷紡績株式会社社長の大原孫三郎によって創設。 「治療本位」 「病院くさくない明るい病院」 「東洋一の理想的な病院」 を設計思想とする。

「診療科や症例数が多くチャンスが豊富な環境です。 また、 民間病院のため自由な雰囲気です。 本人が望めば、 経営やマネジメントも幅広く学べます」 (福岡先生)

プロフィール

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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