【一挙解説】ASH 2024の注目演題は?-DLBCL、 他リンパ腫編-
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HOKUTO編集部

2ヶ月前

【一挙解説】ASH 2024の注目演題は?-DLBCL、 他リンパ腫編-

【一挙解説】ASH 2024の注目演題は?-DLBCL、 他リンパ腫編-
2024年12月7日~10日に米・サンディエゴで開催された第66回米国血液学会 (ASH 2024) について、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (DLBCL) を始めとする各種リンパ腫に関する注目トピックスを紹介します (解説 : 大阪国際がんセンター 藤重夫氏) 。
※記事内Absrtactへのリンクは全てASH公式サイトに遷移

DLBCL

BCL-2陽性未治療高リスク例へのベネトクラクス+Pola-R-CHP併用療法

Pola-R-CHP療法 (抗CD79b抗体薬物複合体ポラツズマブ ベドチン+抗CD20抗体リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン併用) にBCL-2阻害薬ベネトクラクスを上乗せする単群試験。 単群であるため、 成績がどの程度良いかがわかりにくいものの、 期待できる結果とはいえるであろう。 投与法については検討が必要である。

Abstract #577の詳細はこちら

Final Analysis of the Safety and Efficacy of Venetoclax in Combination with Pola-R-CHP for Untreated High-Risk BCL-2-Positive B-Cell Lymphoma Including Double/Triple Hit Lymphoma

R-CHP療法への抗ROR1抗体薬物複合体zilovertamab vedotin併用

ROR1標的の抗体薬物複合体 (ADC) であるzilovertamab vedotinをR-CHP療法に組み込んだ治療法の検討。 期待できる結果を示し、 第Ⅲ相試験に進むという報告であった。 ROR1はこれまであまり標的としての開発が進んでこなかった抗原であり、 他の抗体との併用など今後の発展を期待したい。

Abstract #578の詳細はこちら

Waveline-007: Dose Escalation and Confirmation, and Efficacy Expansion Trial of Zilovertamab Vedotin in Combination with Cyclophosphamide, Doxorubicin, and Prednisone Plus Rituximab in Patients with Diffuse Large B Cell Lymphoma

未治療高リスクアグレッシブBCLへの新規CELMoD、 golcadomide併用

新規のセレブロンE3リガーゼモジュレーター (CELMoD) golcadomideについて、 R-CHOP療法 (リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン) への上乗せ効果を検証した研究報告。 0.4 mg投与群は0.2mg投与群に比べて効果が高いことが示され、 今後第Ⅲ相試験が行われるという。 CELMoDであれば他のリンパ腫で同じストラテジーも可能かもしれない。

Abstract #579の詳細はこちら

Golcadomide (GOLCA) Plus R-CHOP Has High Minimal Residual Disease (MRD) Negativity across High-Risk, Untreated Aggressive B-Cell Lymphoma (a-BCL)

再発・難治例へのgolcadomide±リツキシマブ : パートB長期成績

ASH 2024でもCELMoDに関する報告は多く、 本研究はgolcadomide+リツキシマブ併用療法に関する研究だった。 試験デザインは単群であるため解釈には注意を要するが、 難治例を対象とした試験の中では、 奏効率は高いと感じられた。

Abstract #869の詳細はこちら

Longer Follow-up of Golcadomide (GOLCA), a Cereblon E3 Ligase Modulator (CELMoD™) Agent ± Rituximab (RTX), in Patients with Relapsed/Refractory (R/R) Diffuse Large B-Cell Lymphoma (DLBCL)

未治療高リスク例への新規PI3K阻害薬上乗せ

PI3K阻害薬parsaclisibの標準免疫化学療法への上乗せ効果を検証した研究である。 PI3K阻害薬は毒性の関係でなかなか開発が進んでいない状況だが、 今回の報告ではそこまで毒性の問題が出ていなかったようである。 今回のように短期投与に留めるというのも1つの方法なのかもしれない。

Abstract #580の詳細はこちら

A Phase 1/1b Study of Parsaclisib Plus Standard Immunochemotherapy for Newly Diagnosed High-Risk Diffuse Large B-Cell Lymphoma

未治療高リスク例へのエプコリタマブ上乗せ : Epcore NHL-2長期成績

CD20/CD3二重特異性抗体エプコリタマブをR-CHOP併用療法に上乗せする研究。 新たな毒性の問題は発生せず、 治療効果に関しても期待できる結果を示している。 こちらも第Ⅲ相試験が進められている。

Abstract #581の詳細はこちら

Fixed-Duration Epcoritamab + R-CHOP Induces High Complete Response Rates in Patients with Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma Withhigh-Risk Features: Long-Term Results from the Epcore NHL-2 Trial

再発・難治例への固定期間glofitamab単剤療法 : 3年追跡結果

固定期間における抗CD20/CD3二重特異性抗体glofitamab単剤療法の3年フォローアップ結果。 完全奏効 (CR) 達成例は、 長期間再燃なしで経過している例も多いことが確認された。

Abstract #865の詳細はこちら

Fixed-Duration Glofitamab Monotherapy Continues to Demonstrate Durable Responses in Patients with Relapsed or Refractory Large B-Cell Lymphoma: 3-Year Follow-up from a Pivotal Phase II Study

アントラサイクリン不適格未治療高齢患者へのエプコリタマブ単剤療法

アントラサイクリン系抗癌薬すら投与不適と考えられた高齢DLBCLに対するエプコリタマブ単剤療法の固定期間投与による治療が検討された。 治療効果という点では、 短期的には良好な結果と考えられたが、 45例中5例が奏効判定前の早期に死亡しており、 やはり高齢でフレイルを有する症例の初回導入における毒性を減らす工夫、 あるいはどの程度フレイルな症例なら本当に適格となるかについて検討を要する。

Abstract #867の詳細はこちら

Epcore DLBCL-3 First Disclosure: Fixed-Duration Epcoritamab Monotherapy in Older (≥75 y), Anthracycline-Ineligible Patients with Previously Untreated Large B-Cell Lymphoma

再発・難治例への新規BiTE抗体 : FIH試験

新規CD19/CD3二重特異性T細胞誘導 (BiTE®) 抗体AZD0486のファースト・イン・ヒューマン試験についての報告である。 第Ⅰ相試験で用量設定段階のデータではあったが、 難治例を対象にした奏効率としては期待できる結果であった。

Abstract #868の詳細はこちら

Evaluation of AZD0486, a Novel CD19xCD3 T-Cell Engager, in Relapsed/Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma in an Ongoing First-in-Human Phase 1 Study: High Complete Responses Seen in CAR-T–Naive and CAR-T–Exposed Patients

再発・難治例へのザヌブルチニブ+レナリドミド : 第Ⅰ相最終解析

新規BTK阻害薬ザヌブルチニブ+レナリドミド併用療法という忍容性が高そうなレジメンの第Ⅰ相試験最終解析であり、 半数で奏効が得られていた。 最近の流れだとこれにさらに薬剤を追加していくというような非古典的抗癌薬の多剤併用療法のバックボーンとなる可能性がある。

Abstract #986の詳細はこちら

Final Analysis of a Phase 1 Study of Zanubrutinib Plus Lenalidomide in Patients With Relapsed/Refractory Diffuse Large B-cell Lymphoma

ASCT/CAR-T療法適応再発例へのglofitamab+R-ICE併用療法

リツキシマブ+イホスファミド+カルボプラチン+エトポシド併用(R-ICE)療法にglofitamabを上乗せした試験。 自家移植 (ASCT) やCAR-T細胞療法へのつなぎとしての位置付けであり、 長期的な成績は細胞療法に影響されることが予測される試験設定であるが、 高い奏効率を示した。

Abstract #987の詳細はこちら

Glofitamab in Combination with Rituximab Plus Ifosfamide, Carboplatin, and Etoposide Shows Favorable Efficacy and Manageable Safety in Patients with Relapsed or Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma, Eligible for Stem Cell Transplant or Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy: Results from a Phase Ib Study

再発・難治性LBCL/HGBCLへのglofitamab+ポラツズマブ ベドチン

glofitamabとポラツズマブ ベドチンを組み合わせたレジメンで、 大細胞型B細胞リンパ腫 (LBCL) や高悪性度B細胞リンパ腫 (HGBCL) など、 幅広いB細胞リンパ腫で高い奏効を示していた。 高齢者に対しても忍容性の高そうなレジメンである。

Abstract #988の詳細はこちら

Glofitamab in Combination with Polatuzumab Vedotin Maintains Durable Responses and a Manageable Safety Profile in Patients with Heavily Pre-Treated Relapsed/Refractory (R/R) Large B-Cell Lymphoma (LBCL) Including High-Grade B-Cell Lymphoma (HGBCL): Extended Follow-up of a Phase Ib/II Study

形質芽球性リンパ腫

新規診断PBLへのDA-EPOCH+ダラツムマブ上乗せ

非常に希少な形質芽球性リンパ腫 (PBL) において、 抗CD38抗体ダラツムマブをDA-EPOCH療法 (用量調整のエトポシド+プレドニゾロン+ビンクリスチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン) に上乗せしたレジメンの検討であった。

評価可能症例では有望な結果を示していた。 ただ、 このような非常に希少な疾患ではこれ以上の規模の試験遂行が難しい。 同様の問題で日本の保険診療のシステム上は、 本レジメンをそのまま使うのは難しいかもしれない。

Abstract #870の詳細はこちら

Daratumumab with Dose-Adjusted EPOCH Is Feasible in Newly Diagnosed Plasmablastic Lymphoma: AIDS Malignancy Consortium

濾胞性リンパ腫

再発・難治例へのリツキシマブ+loncastuximab tesirine

loncastuximab tesirineは国内未承認の抗CD19抗体薬物複合体で、 本研究では再発・難治性濾胞性リンパ腫 (FL) に対するリツキシマブとの併用療法が評価された。 思いの外奏効率も高く、 フォローアップは長くないもののその後の再発も少ないようで期待を持てる結果であった。

Abstract #337の詳細はこちら

Loncastuximab Tesirine with Rituximab Induces Robust and Durable Complete Metabolic Responses in High-Risk Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma

新規診断例へのモスネツズマブ単剤療法

初発のFLにおける抗CD20/CD3二重特異性抗体モスネツズマブ単剤療法に関する検討。 初発のFLの場合、 既存治療でも成績が良好であるため、 既存治療に比べてどの程度優れるかについて評価は困難であるが、 基本的には安全性も高い治療ではないかと感じられた。

提示された症例では、 PET-CTで病勢進行 (PD) が認められたため外科切除したもののFLは認められなかった。 最近の二重特異性抗体を含め、 免疫系に作用する薬剤ではpseudoprogression (偽性進行) が比較的多く報告されており注意を要することが再認識された。

Abstract #340の詳細はこちら

Single-Agent Mosunetuzumab Produces High Complete Response Rates in Patients with Newly Diagnosed Follicular Lymphoma: Primary Analysis of the Mithic-FL1 Trial

再発・難治例への新規二重特異性抗体、 用量漸増投与の成績

再発・難治性FLにおけるCD19/CD3二重特異性抗体AZD0486の成績が中国のグループから報告された。 非常に高い奏効率を示しており、 今後の奏効期間 (DOR) が期待される。

Abstract #341の詳細はこちら

Escalating Doses of AZD0486, a Novel CD19xCD3 T-Cell Engager, Result in High Complete Remissions with Rapid Clearance of Minimal Residual Disease in Patients with Relapsed/Refractory Follicular Lymphoma

再発・難治例へのR2+エプコリタマブ上乗せ : Epcore NHL-22年成績

リツキシマブ+レナリドミド (R2) 併用療法へのエプコリタマブ上乗せにおける単群試験Epcore NHL-2の長期追跡結果の報告。 既報のR2と比べ、 奏効が深く長かった。 このほかにも再発・難治性FLの治療選択は非常に増えており、 どのレジメンが広く使われるようになっていくのか関心がもたれる。

Abstract #342の詳細はこちら

Fixed-Duration Epcoritamab + R2 Drives Deep and Durable Responses in Patients with Relapsed or Refractory Follicular Lymphoma: 2-Year Follow-up from Arm 2 of the Epcore NHL-2 Trial

中等度~高リスク例へのPola-R-CHP : POLARIX試験5年成績

POLARIX試験の5年の長期成績データの報告。 基本的にはこれまでの報告内容が変わることなく、 Pola-R-CHP投与群において、 PFSでの優越性が示された。

Abstract #469の詳細はこちら

Five-Year Analysis of the POLARIX Study: Prolonged Follow-up Confirms Positive Impact of Polatuzumab Vedotin Plus Rituximab, Cyclophosphamide, Doxorubicin, and Prednisone (Pola-R-CHP) on Outcomes

中枢神経系原発リンパ腫

中枢神経系原発リンパ腫へのアカラブルチニブ+デュルバルマブ

中枢神経系原発リンパ腫 (PCNSL) におけるBTK阻害薬アカラブルチニブ+抗PD-L1阻害薬デュルバルマブ併用療法の安全性、 有効性、 中枢神経系への浸透を検証した第Ⅰ相試験。 PCNSLに対してデュルバルマブは国内未承認であるが、 日本でも使用可能なアカラブルチニブが脳脊髄液 (CSF) でも検出されている点は参考となった。

Abstract #985の詳細はこちら

Phase I Results of Acalabrutinib in Combination with Durvalumab in Primary Central Nervous System Lymphoma: Safety, Efficacy, and Central Nervous System Penetration

マントル細胞リンパ腫

未治療高齢MCLへのイブルチニブ+リツキシマブ併用療法

高齢マントル細胞リンパ腫 (MCL) における初回治療としてBTK阻害薬イブルチニブ+リツキシマブ併用 (IR) 療法とリツキシマブ+化学療法の比較を行った研究。 全体結果としてはIR療法がリツキシマブ+化学療法に比べて優れていた。 ただ、 最近はほとんど用いられないR-CHOP療法と比しては有意に優れるが、 ベンダムスチン+リツキシマブ併用療法 (BR) と比するとほぼ同等であった。

Abstract #235の詳細はこちら

Ibrutinib-Rituximab Is Superior to Rituximab-Chemotherapy in Previously Untreated Older Mantle Cell Lymphoma Patients: Results from the International Randomised Controlled Trial, Enrich

若年MCLへの化学免疫療法+アカラブルチニブ上乗せ : ECOG-ACRIN EA4181

70歳以下の若年MCLに対し、 化学免疫療法 (CIT) にアカラブルチニブを組み込む試験。 第Ⅱ相試験であるため、 3群間で適切な投与法を検討している段階である。 全体の成績はいずれの群でも優れていた一方で、 アカラブルチニブ上乗せのメリットが示されなかった。 今後は効果を高めつつ、 毒性の増加がない投与法の再検討が、 より詳細な解析後に報告されてくるかもしれない。

Abstract #236の詳細はこちら

Addition or Substitution of Acalabrutinib in Intensive Frontline Chemoimmunotherapy for Patients ≤ 70 Years Old with Mantle Cell Lymphoma: Outcomes of the 3-Arm Randomized Phase II Intergroup Trial ECOG-ACRIN EA4181

若年未治療MCLへのリツキシマブ維持療法 : TRIANGLE試験データ解析

TRIANGLE試験での後付けでのリツキシマブ維持療法に関する検討。 PFSにおいてはどのarmでもリツキシマブ維持療法により延長されることが示された。

Abstract #237の詳細はこちら

Impact of Rituximab Maintenance Added to Ibrutinib-Containing Regimens with and without ASCT in Younger, Previously Untreated MCL Patients: An Analysis of the Triangle Data Embedded in the Multiply Project

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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