HOKUTO編集部
4ヶ月前
ボーダーライン膵癌に対する術前療法としてのゲムシタビン+nab-PTX併用療法およびS-1併用RTの有効性および安全性について比較検証した第II/III相多施設共同非盲検無作為化比較試験GABARNANCEの結果より、 両群間のOSに有意差は認められなかったものの、 18ヵ月以降のKaplan-Meier曲線は継続的にS-1併用RT群が上にあった。 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科長の池田公史氏が発表した。
境界切除可能な膵癌 (Borderline resectable膵癌 、 以下、 BRPC) は、 重要な血管に一定の範囲で接するため根治切除が難しく、 切除後も予後不良な疾患である。
BRPCに対し術前療法が有効であることは知られているものの、 全身化学療法と化学放射線療法を比較した無作為化比較試験はこれまで実施されておらず、 BRPCに対する標準的な術前療法の確立が求められていた。 本研究では、 BRPCに対する術前療法として、 どちらが標準的な治療法として確立され得るかが検討された。
画像中央診断による中央判定でBRPCと判定された、 前治療歴のない20~79歳の腺癌または扁平癌*患者
112例が1 : 1の割合で以下の2群に無作為に割りつけられた。
第II相における主要評価項目
R0切除率
第III相における主要評価項目
全生存期間 (OS)
第III相における副次評価項目
無増悪生存期間 (PFS)、 R0切除率、 客観的奏効率 (ORR)、 病理学的奏効率 (pRR)、 安全性、 治療完了率
両群間で概ね一致していた。
原発腫瘍部位
OS
【追跡期間中央値】
22.7ヵ月
【中央値 (95%CI) 】
HR 0.786 (95%CI 0.489-1.265)、 p=0.3206
【2年OS】
群間差 14.6%
【サブグループ解析】
S-1併用RT群で優位なサブグループが多い傾向にあったものの、 統計学的有意差が示されたグループはなかった。
PFS中央値
HR 0.778 (95%CI 0.514-1.178)
R0切除率 (95%CI)
p=0.8478
ORR (95%CI)
p=0.3922
pRR (95%CI)
p=0.0682
Grade3以上の有害事象 (AE) 発現率
【白血球減少】
【好中球減少】
【血小板減少】
【食欲不振】
池田氏は 「BRPCに対する術前療法として、 ゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法とS-1併用放射線療法を比較検証した結果、 OSおよびPFSに有意差は示されなかった。 ただし、 S-1併用放射線療法は新たな毒性の負担もなく、 治療後期における生存期間の優位性を認めた。 治療後期におけるOSの両群の差と晩期毒性に関するより確実なデータを得るために、 さらなる解析が計画されている」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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