【GABARNANCE】ボーダーライン膵癌の術前療法、ゲムシタビン+nab-PTX vs S-1+RT
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HOKUTO編集部

16日前

【GABARNANCE】ボーダーライン膵癌の術前療法、ゲムシタビン+nab-PTX vs S-1+RT

【GABARNANCE】ボーダーライン膵癌の術前療法、ゲムシタビン+nab-PTX vs S-1+RT
ボーダーライン膵癌に対する術前療法としてのゲムシタビン+nab-PTX併用療法およびS-1併用RTの有効性および安全性について比較検証した第II/III相多施設共同非盲検無作為化比較試験GABARNANCEの結果より、 両群間のOSに有意差は認められなかったものの、 18ヵ月以降のKaplan-Meier曲線は継続的にS-1併用RT群が上にあった。 国立がん研究センター東病院肝胆膵内科長の池田公史氏が発表した。 

BRPCへの標準的術前療法の検討

境界切除可能な膵癌 (Borderline resectable膵癌 、 以下、 BRPC) は、 重要な血管に一定の範囲で接するため根治切除が難しく、 切除後も予後不良な疾患である。

BRPCに対し術前療法が有効であることは知られているものの、 全身化学療法と化学放射線療法を比較した無作為化比較試験はこれまで実施されておらず、 BRPCに対する標準的な術前療法の確立が求められていた。 本研究では、 BRPCに対する術前療法として、 どちらが標準的な治療法として確立され得るかが検討された。

主要評価項目はOS

対象

画像中央診断による中央判定でBRPCと判定された、 前治療歴のない20~79歳の腺癌または扁平癌*患者

*膵癌取扱い規約第7版に基づく

介入

112例が1 : 1の割合で以下の2群に無作為に割りつけられた。

  • GEM+nab-PTX療法群 : 56例
術前療法 (ゲムシタビン1,000mg/m²+nab-パクリタキセル[PTX]125mg/m²を1、 8、 15日目に4週毎に投与、 計2サイクル実施) →手術→術後療法 (S-1 40 mg/m²を1~28日目に1日2回、 6週毎に投与、 計4サイクル実施)
  • S-1併用RT群 : 56例
術前療法 (放射線療法[50.4Gy/28分割]+照射日1日あたりテガフール・ギメラシル・オテラシル[S-1] 40mg/m²を2回投与) →手術→術後療法 (S-1 40 mg/m²を1~28日目に1日2回、 6週毎に投与、 計4サイクル実施)

評価項目

第II相における主要評価項目

R0切除率

第III相における主要評価項目

全生存期間 (OS)

第III相における副次評価項目

無増悪生存期間 (PFS)、 R0切除率、 客観的奏効率 (ORR)、 病理学的奏効率 (pRR)、 安全性、 治療完了率

両群間のOSに有意差認めず

患者背景

(GEM+nab-PTX療法群、 S-1併用RT群の順に記載)

両群間で概ね一致していた。

  • 年齢中央値 : 66歳、 68歳
  • 男性 : 52%、 54%
  • ECOG PS 0 : 89%、 93%
  • リンパ節転移あり : 21%、 16%
  • CA19-9≧100U/mL : 61%、 61%

原発腫瘍部位

  • 膵頭部 : 86%、 70%
  • 膵体部 : 14%、 27%
  • 膵尾部 : 0%、 4%

主要評価項目

OS

OSの中間解析は計画/実施されず、 CA19-9 (≧100U/mL) を主要解析の層別化因子として、 log-rank検定により両側p値が算出された。

【追跡期間中央値】

22.7ヵ月

(範囲 14.8-34.7ヵ月)

【中央値 (95%CI) 】

両群間に統計学的有意差は認められなかったが、 Kaplan-Meier曲線は18ヵ月以降に大きく離れてS-1併用RT群が上となり、 この状態は観察期間の最後まで継続した。
  • GEM+nab-PTX療法群 : 23.1ヵ月
  • S-1併用RT群 : 31.5ヵ月
HR 0.786 (95%CI 0.489-1.265)、 p=0.3206

【2年OS】

2年OSの17%の差 (HR 0.70) を検出するためには両側アルファ値10%、 検出力70%、 合計110例 (65イベント) が必要であり、 検出力は70%だった。
  • GEM+nab-PTX療法群 : 48.2%
  • S-1併用RT群 : 62.8%
群間差 14.6%

【サブグループ解析】

S-1併用RT群で優位なサブグループが多い傾向にあったものの、 統計学的有意差が示されたグループはなかった。

副次評価項目

PFS中央値

  • GEM+nab-PTX療法群 : 12.6ヵ月
  • S-1併用放射線療法群 : 11.1ヵ月
HR 0.778 (95%CI 0.514-1.178) 

R0切除率 (95%CI)

  • GEM+nab-PTX療法群 : 60.7%
(46.8-73.5%)
  • S-1併用放射線療法群 : 57.1%
(43.2-70.3%)
p=0.8478

ORR (95%CI)

  • GEM+nab-PTX療法群 : 16.1%
(7.6-28.3%)
  • S-1併用放射線療法群 : 8.9%
(3.0-19.6%)
p=0.3922

pRR (95%CI)

  • GEM+nab-PTX療法群 : 14.3%
(6.4-26.2%)
  • S-1併用放射線療法群 : 30.4%
(18.8-44.1%)
p=0.0682

安全性評価

Grade3以上の有害事象 (AE) 発現率

【白血球減少】

  • GEM+nab-PTX療法群 : 38%
  • S-1併用放射線療法群 : 7%

【好中球減少】

  • GEM+nab-PTX療法群 : 62%
  • S-1併用放射線療法群 : 5%

【血小板減少】

  • GEM+nab-PTX療法群 : 0%
  • S-1併用放射線療法群 : 0%
(参考) Grade1/2の血小板減少発現率 : 91%、 64%

【食欲不振】

  • GEM+nab-PTX療法群 : 4%
  • S-1併用放射線療法群 : 7%
(参考) Grade1/2の食欲不振発現率 : 33%、 45%

有意差なしもS-1併用放射線療法は生存期間延長示す

池田氏は 「BRPCに対する術前療法として、 ゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法とS-1併用放射線療法を比較検証した結果、 OSおよびPFSに有意差は示されなかった。 ただし、 S-1併用放射線療法は新たな毒性の負担もなく、 治療後期における生存期間の優位性を認めた。 治療後期におけるOSの両群の差と晩期毒性に関するより確実なデータを得るために、 さらなる解析が計画されている」 と報告した。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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