HOKUTO編集部
12ヶ月前
薬剤性難聴は薬剤副作用の一つである。 難聴は認知機能の低下や社会的孤立、 うつ病などと関連すると報告されており、 QOLに及ぼす影響は大きい¹⁾。 薬剤性難聴の原因薬剤としては、 アミノグリコシド系抗菌薬、 白金製剤、 サリチル製剤、 ループ利尿剤などが知られているが、 本項では癌治療 (主に白金製剤) に伴う難聴について記載する。
各薬剤の発症頻度は割愛するが、 シスプラチンを投与された患者の最大80%の患者に難聴がみられるとの報告もある¹⁾。
投与開始直後から生じ、 投与反復により進行する³⁾。 治療完了の数ヵ月後まで発症が遅れることもある⁴⁾。
プラチナ製剤は、 不可逆的な感音性難聴をきたし⁴⁾、 一旦難聴になると回復は困難である³⁾。
両側性、 対称性、 永続的であることが特徴である¹⁾。 具体的には以下の症状が挙げられる。
− 騒音下での聞き取りにくさ¹⁾
− コミュニケーションパートナーからの指摘³⁾
− 耳鳴り (ピー、 キーンなどの高周波音)³⁾
− 耳閉感³⁾
蝸牛の外有毛細胞損傷で感音性難聴発症⁵⁾
▼具体的な原因薬剤
高線量 (≧30Gy) の放射線照射を受けることで、 聴覚器官が損傷され、 難聴発症⁵⁾
▼照射部位と原因
小児 (特に<5歳⁵⁾)、 高齢者、 腎機能障害、 頭部への放射線照射例、 投与前の感音難聴の存在³⁾、 糖尿病、 高脂血症、 高血圧、 喫煙歴、 難聴の家族歴、 シスプラチンの高累積投与¹⁾など
シスプラチンは1日投与量80mg/m²以上で、 総投与量では300mg/m²を超えると難聴出現の傾向は顕著となる³⁾。 1日投与量が150mgを超えるとほとんどの症例で難聴が出現すると報告されている。
プラチナ製剤による難聴は、 高音域 (4000Hz以上) からの聴力低下がみられ、 時間の経過とともに低周波数へと進行する⁵⁾。
あらかじめ製剤投与の計画 (量および期間) を耳鼻咽喉科医に知らせ、 聴覚検査などを依頼する。 また難聴出現時には再度連絡し、 検査を依頼する³⁾。
症状や障害が軽微なうちに本難聴を診断し、 原疾患との兼ね合いで可能であれば白金製剤投与を中止することが望ましい³⁾。
中等度難聴に関しては補聴器、 補聴効果の認められない高度難聴に関しては人工内耳が適応となる³⁾。
放射線照射による滲出性中耳炎や耳垢栓塞に伴う伝音難聴の場合は、 耳鼻咽喉科医による治療で聴力は改善する可能性が高い。
言語やコミュニケーション能力を獲得する過程にある幼児では、 軽度から中等度の高周波数の難聴であっても、 影響は大きく (言語発達の遅れ等)、 早期発見、 介入 (補聴器の導入等)、 可能な場合は薬剤の変更を検討する必要があり、 適切なモニタリングが推奨される⁵⁾。
最終更新日:2023年12月15日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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