HOKUTO編集部
1年前
外来化学療法を受けるがん患者さんの摂食障害に焦点をあて、 スマートフォンを活用した新たに「WASHOKU」研究が立ち上げられました。 2回目はWASHOKU研究の特長であるクラウドファンディングやスマホを用いた研究手法について解説していただきました (全3回連載)。
臨床現場で行われる診療はエビデンスに裏付けられた治療が行うことが原則ですが、 日々これまでのエビデンスでは解決が困難な場面に遭遇します。 これらがクリニカルクエスチョンとなり研究へと繋がりますが、 研究を行うためには一定の資金が必要となります。 ケースレポート、 ケースシリーズ、 観察研究など、 多くの資金を必要とせずに完遂することが可能な研究にも十分に有意義なものが多く存在します。
しかし、 介入を必要とする臨床試験となると例えば第Ⅰ相試験や第Ⅱ相試験などの比較的小規模な試験ですら所属する機関のリソースのみで研究を完結することは難しく、 外部研究費を必要とすることが多くなります。 外部資金の大半は製薬会社などの企業および政府の2つが主要な供給源ですが、 今回のWASHOKU試験ではこれらにも該当しない外部研究費の選択肢のひとつとしてクラウドファンディングによる資金をもとに運用されています。
クラウドファンディングとは、 群衆を意味するcrowdと資金調達を意味するfundingを組み合わせた造語です。 これは医学研究に特化したものではなく、 インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達することを指すものでありその用途は多彩です。
2000年代に米国で始まったとされるこの仕組みは、 2012~13年ごろには科学領域にも拡がり、 Nature誌にも「慈善家が科学を支援する」として記事に取り上げられています¹⁾²⁾。 アイデアを持つ実行者とそのアイデアに共感、 活動に支援をしたいという支援者の関係に基づくものです。 WASHOKU試験は2022年8月から約1ヵ月間にわたり資金提供を呼びかけ、 260名を超える支援者からの資金提供をいただくことができました(https://readyfor.jp/projects/washoku_cancer)。
いずれの研究資金にもメリットとデメリットがあり、 クラウドファンディングによって得られる研究資金についてもその特徴を十分に理解する必要があります。 しかし、 研究者間で議論を深めた上で行われたクラウドファンディングはおそらく研究者にとって研究の大きな後押しとなることが期待されます。
前回の記事に執筆したように、 WASHOKU試験はがん患者さんの”食“ (特に摂取熱量) と有害事象に関する情報を国内どこからでも集めることを目指しています。 すでに公開されている健康管理アプリである「カロミル」 (ライフログテクノロジー株式会社) を使ってがん患者さんの日々の”食“の写真を撮影いただき、 カロミル独自の画像解析技術で食事を自動で栄養素計算します。
これと並行して患者・被験者データ収集システムとして開発された3H P-Guardian (3Hクリニカルトライアル株式会社) を用いて、 がん患者さんの症状に関するデータを収集します。 これまでの臨床研究では、 施設毎に医療者ががん患者さんの詳細なデータを入力する必要がありましたが、 WASHOKU試験ではがん患者さんだけで試験への参加からデータの入力まで完結できるような形をとっています。
データの信頼性などさまざまな課題があることは承知していますが、 WASHOKU試験の主たる目的はがん患者さんの実際の”食“とがん患者さんの評価する有害事象との関連を明らかにすることです。 この研究が電磁的方法を用いた新たな臨床研究の試金石となることを研究者一同願っています。
外来化学療法を受けるがん患者の食に関する観察研究(WASHOKU)ホームページ
参加を希望される患者さま、 ご協力をいただける医療施設の皆さまがおられましたら以下のアドレスまでお気軽にお問い合わせください。
【第一回】【臨床研究解説】WASHOKU試験とはなに?―その背景と狙い―
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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