HOKUTO編集部
3ヶ月前
未治療の局所進行性または転移性尿路上皮癌 (la/mUC) に対する抗ネクチン4抗体薬物複合体エンホルツマブ ベドチン+抗PD-1抗体ペムブロリズマブ (EV+P) 併用療法の有効性、 プラチナベースの化学療法 (PBC) を対照に検証した第Ⅲ相国際共同非盲検無作為化比較試験EV-302の患者報告アウトカムの結果より、 EV+PはPBCと比べてQOLや疼痛を悪化させることなくPFSおよびOSを改善させることが示された。 聖マリアンナ医科大学腎泌尿器外科主任教授の菊地栄次氏が発表した。
第Ⅲ相EV-302試験では、 未治療のla/mUC患者において、 EV+PはPBCと比較し、 無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) をほぼ2倍に延長した¹⁾。 安全性に関しては概ね管理可能で既報の結果と一致しており、 EV+Pは2023年12月に米国食品医薬品局 (FDA) からla/mUC患者の1次治療として承認を取得し、 現在新たな標準治療と考えられている。 また、 本邦においても承認申請中である (2024年8月現在) 。
今回、 同試験の患者報告アウトカムの結果が報告された。
第Ⅲ相EV-302試験で無作為化された前治療歴のないla/mUC患者を対象に886例のうち、 731例 (EV+P群 : 376例、 PBC群 : 355例) がベースラインのPRO評価アンケートに回答した。
患者報告アウトカムは、 EORTC Quality of Life Questionnaire-Core 30 (QLQ-C30) *、 Brief Pain Inventory Short Form (BPI-SF) **を用いて評価された。 評価は①ベースライン時、 ②その後12週間は週1回 (~4サイクル)、 ③生存期間のフォローアップまで3週間ごとに実施された。
事前に規定された評価項目は、 痛みの増悪までの期間 (TTPP)、 BPI-SFを用いた26週時の最も強い痛みのベースラインからの平均変化量だった。
記述的解析にはベースラインから26週目までの痛みの平均変化、 および悪化が確認されるまでの期間 (TTCD) が含まれた。
患者報告アウトカム評価の遵守率は両群間で異なり、 PBC群では17週まで、 EV+P群では29週まで70%超の患者で評価が継続された。
ベースライン時、 両群のいずれもおよそ3分の1の患者 (EV+P群 : 34%、 PBC群 : 36%) が中等度~重度の疼痛 (疼痛スコアが5以上/10点満点) を訴えていた。
TTPP中央値 (95%CI) は以下の通りで、 EV+P群はPBC群に比べて中央値で4.2ヵ月長かったものの、 両群に有意差はなかった。
HR 0.92 (95%CI 0.72-1.2)、 両側p=0.48
26週時の 「最も強い痛み」 のLS平均変化量
「この24時間にあなたが感じた最も強い痛みはどの位でしたか? 0 (痛くない) ~10 (これ以上の痛みは考えられない) 点で評価してください」
BPI-SFに基づく上記の質問に対する回答結果では、 両群のいずれも事前に規定された臨床的意義のある変化は認められなかったが、 EV+P群はベースラインと比較して痛みの改善が見られ、 その差はPBC群よりも大きかった。
最小二重 (LS) 平均差
-0.58 (95%CI -1.05~-0.11)、 両側p=0.015
中等度~重度の疼痛を訴えた患者の平均変化
EV+P群とPBC群の両群のいずれも、 臨床的に意義のある痛みの改善が示され、 特にEV+P群では、 治療開始後3~26週目にかけて、 「最も強い痛み」 がベースライン時から大幅に改善した。
LS平均差 -0.5 (95%CI -1.0~-0.02) 、 p=0.04
「この1週間のあなたの健康状態は全体としてどの程度だったでしょうか。 」
「この1週間、 あなたの全体的な生活の質はどの程度だったでしょうか。 」
EORTC QLQ-C30 GHS(global health status)/QOLスコアに基づく上記の質問に対する回答の結果、 EV+P群では、 治療3週目で一過性のGHS/QOLスコア悪化 (-6.3) が示されたが、 4週目にはベースライン時まで戻った。 一方でPBC群では、 治療1~17週目まで同スコアが悪化(範囲-1.2~-7.1)し、 20週目にベースライン時まで戻った。
TTCD中央値はEV+P群で5.9ヵ月、 PBC群で3.2ヵ月だった(HR 0.98 [95%CI 0.79-1.2])。
EORTC QLQ-C30の機能ドメインの解析結果では、 ベースラインから26週目までの変化で、 EV+P群はPBC群と比較し、 全機能ドメインにおいて改善を示した。
菊地氏は 「未治療の進行la/mUC患者において、 EV+PはQOLや疼痛、 機能を悪化させることなく、 PBCと比較してPFSとOSを改善した。 ベースライン時に中等度~重度の疼痛を訴えたEV+P群においては、 臨床的に意義のある最悪の疼痛の改善が見られた。 本試験の患者報告アウトカムの結果は、 既に報告されているEV+Pの有効性と安全性のデータに加えて未治療のla/mUCへのEV+Pの使用を支持するものである」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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