海外ジャーナルクラブ
1ヶ月前
Reissらは、 重症血友病Bの患者を対象に、 アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療 (scAAV2/8-LP1-hFIXco) の長期的な有効性と安全性を検討した。 その結果、 13年にわたるフォローアップにおいて、 持続的な臨床的利益と安全性が確認された。 本研究はNEJM誌において発表された。
13年間にわたる長期フォローアップが実施された点は本研究の大きな強みであり、 極めて意義深い成果と評価されます。
近年、 血友病Bに対するアデノ随伴ウイルス (AAV) を用いた遺伝子治療が注目されており、 長期効果と安全性に関するデータの蓄積が求められていた。 本論文では、 scAAV2/8-LP1-hFIXco 遺伝子治療が成功した患者群の長期追跡結果が報告された。
対象は重症血友病Bの男性10例で、 scAAV2/8-LP1-hFIXcoベクターの単回静注 (低用量群2例 : 2×10¹¹ ベクターゲノム [vg] /kg 、 中用量群2例 : 6×10¹¹ vg/kg、 高用量群6例 : 2×10¹² vg/kg) が行われた。 有効性評価項目は、 第 IX 因子活性、 年間出血率、 第 IX 因子濃縮製剤使用量などであり、 安全性評価項目は、 臨床症状、 肝機能、 画像評価などであった。
追跡期間の中央値は13.0年 (範囲11.1-13.8年) であった。
第 IX 因子活性平均値は、 低用量群1.7 IU/dL、 中用量群2.3 IU/dL、 高用量群4.8 IU/dLであり、 すべての用量において追跡期間中安定していた。
年間出血率の中央値は、14.0件 (IQR 12.0–21.5件) から1.5件 (IQR 0.7–2.2件) に減少した。 第 IX 因子濃縮製剤使用量は、 12.4分の1 (IQR 2.2分の1–27.1分の1) に減少した。
ベクター関連有害事象は15件発生し、 主に一過性のアミノトランスフェラーゼ上昇であった。 第 IX 因子インヒビター、 血栓症、 慢性肝障害の発生はなかった。 癌の発症は2例に認められたものの、 ベクターとの因果関係はなかった。 静注後10年で1例に肝生検が行われ、 肝細胞における導入遺伝子発現 (転写活性あり) が認められたが、 線維化・異形成は認められなかった。 なおAAV8に対する中和抗体価は高値を維持し、 ベクター再投与の障壁となる可能性が示された。
著者らは、 「scAAV2/8-LP1-hFIXco遺伝子療法の単回投与は、 13年間にわたる持続的な第IX因子発現、 持続的な臨床的利益、 および遅発性安全性の懸念なしを実現した。 これらのデータは、 重症血友病Bに対するAAV遺伝子療法の長期的な有効性および安全性を支持している」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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