胃癌取扱い規約が9年ぶり改訂、 Tis導入・国際分類との整合性強化など
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HOKUTO編集部

1ヶ月前

胃癌取扱い規約が9年ぶり改訂、 Tis導入・国際分類との整合性強化など

胃癌取扱い規約が9年ぶり改訂、 Tis導入・国際分類との整合性強化など
胃癌取扱い規約が9年ぶりに改訂された。 TNM分類第9版およびWHO分類第6版との国際整合を目的に、 壁深達度・進行度分類から組織型分類・薬物療法評価まで複数の改訂が行われた。 第98回日本胃癌学会総会にて、 日本胃癌学会胃癌規約委員会委員長の九嶋亮治氏 (滋賀医科大学病理学講座教授 [現・客員教授] ) が発表した。 

主な改訂点

第16版はTNM分類第9版およびWHO分類第6版との整合性確保を重視し、 外科、 薬物療法、 内視鏡、 病理の4部会体制で改訂が進められた。 改訂点は以下の16項目に整理される。

胃癌取扱い規約が9年ぶり改訂、 Tis導入・国際分類との整合性強化など

以下では、 壁深達度および病理学的所見における改訂点について詳述する。

壁深達度における改訂点

Tisを新たに導入

胃癌取扱い規約が9年ぶり改訂、 Tis導入・国際分類との整合性強化など

第16版における主な改訂点の1つはTisの導入である。 粘膜内の癌について非浸潤 (Tis) と浸潤 (T1a) を区別し、 粘膜固有層への浸潤がない上皮内癌をTisと定義した。

組織学的には、 ESDなどの切除検体で浸潤像が明らかでない高分化型管状腺癌 (tub1) や、 遺伝性びまん型胃癌における上皮内印環細胞癌 (signet-ring cell carcinoma in situ) でin situ病変だけの症例もpTisに該当する。

Tis導入の意義と保険診療への影響

Tis導入の意義として、 九嶋氏は癌登録がUICC TNMに準拠していること、 および海外の診断との整合性が図れることを挙げた。 また、 pTis導入に伴う保険診療上の懸念について、 日本病理学会社会保険委員会に事前確認を行った結果を報告した。

公的医療保険においてはpTisと診断された症例のESD等の治療行為が査定されることはない。 一方、 民間がん保険については上皮内癌の取扱いが保険商品ごとに異なるため、 個別の確認が必要とされた。

進行度分類の更新

Tisの導入に伴い、 病理学的進行度分類にStage 0が新設された。 質疑応答では、 UL陽性のtub1でサイズ基準により外科切除適応となる症例がStage 0に分類される一方、 pT1aのESD治癒切除例がStage IAとなる逆転現象について質問があった。 がん研有明病院の佐野 武氏は、 「Stage 0/Tisは国際基準であり、 治療適応とは独立したステージング体系として適用されるべき」 との見解を示した。

病理学的所見における改訂点

組織型分類の国際対応表を作成

第16版では、 病理に限らず内視鏡や外科の臨床医からも質問の多かった分化型/未分化型の分類について、 中村・管野分類、 Laurén分類、 WHO分類との対応関係を一覧化し、 国際的な翻訳可能性を高めた。

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九嶋氏は対応表の読み方について以下の点を補足した。

組織混在型の導入

以前から、 優勢像から全ての組織型を列記し (例: tub2>por2>sig)、 最も優勢な組織型を主組織型としているが、 分化型と未分化型の癌成分が混在する症例について、 内視鏡チームからの要望もあり 「組織混在型」 として明記した。 WHO分類のmixed adenocarcinomaと対応する概念である。

por1の位置付け

por1 (充実型低分化腺癌) は、日本では未分化型癌に位置づけられているが、 WHO分類ではpoorly differentiated tubular (solid) adenocarcinomaとして管状腺癌の延長線上にあり、 Laurén分類ではdiffuse typeに含まれていない。 por1はリンパ球浸潤癌、 神経内分泌癌、 胎児消化管型腺癌 (肝様腺癌)、 未分化癌との鑑別を要する。

胃癌取扱い規約のsig/por2と、 WHO分類のPCC

WHO分類では胃癌取扱い規約のsig (印環細胞癌) とpor2 (非充実型低分化腺癌) に相当する組織型をpoorly cohesive carcinoma (PCC) とし、 signet-ring cell PCCとnon-signet-ring cell PCCに分類している。 por2はWHO分類のnon-signet-ring cell PCCに読み替えることができる。

PCCをめぐっては、 欧州を中心にsig成分が90%以上をsignet-ring cell carcinoma、 10%未満をPCC-NOS、 その間をPCC with signet-ring cellとする亜分類がGastric Cancer誌に提唱され、 WHO分類第6版にもこの考え方が一部盛り込まれている。 また、 粘膜内で層構造を呈する典型的 (純粋) なsigが、 深部浸潤にともなってpor2 (non-signet-ring cell PCC) に変化していくという日本からの報告がWHO分類に記載されている。

質疑応答では、 がん研有明病院の佐野氏が、 PCCという用語が欧米で既に標準的に用いられている現状に言及し、 「日本の臨床医もこの概念を理解しておかないと、 今後論文作成や国際的なやり取りに支障が生じる可能性がある」 と指摘。 これに対し九嶋氏は、 WHO分類や欧米の教科書においてPCCの項にpor2との対応関係が明記されていることを説明し、 日本の分類との接続可能性が担保されているとの認識を示した。

出典

Kushima R. The 16th Edition of the Japanese Classification of Gastric Carcinoma: Publication and Perspectives. Plenary Session 1: PS1、 第98回日本胃癌学会総会、 2026年3月4–6日、 沖縄.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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