HOKUTO編集部
19日前
広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による連載 「けいれん診療ガイド」 です。 第10回は "非けいれん性てんかん重積状態 (NCSE) を疑うポイント" について解説いただきます。
ICUで遷延する意識障害の鑑別に非けいれん性てんかん重積状態 (NCSE: non-convulsive status epilepticus) があります。 具体的には、 血液検査や血液ガス検査、 フィジカル、 脳画像検査で診断が絞れない意識障害というセッティングで想起するのがNCSEです。 ただし、 その診断には脳波検査が必須なので、 NCSEを疑った際には速やかに脳波検査を実施するとともに、 専門医への相談が必要となります。
一方で、 ICUでの緊急の脳波検査については、 ハードルが高いという施設も多いでしょう。 限られたリソースですから有効活用しなければいけません。 そのためにNCSEを漠然と疑うのではなく、 確固たる根拠を持ってNCSEを疑えるようになった方が脳波検査の依頼にも踏み切りやすいのではないでしょうか。 そこで、 本シリーズではどのようなシチュエーションや神経症候があればNCSEを強く疑うべきか、 フィジカルの観点から解説したいと思います。
ICUでの意識障害の鑑別として常にNCSEは意識しておかなければなりませんが、 大事な文脈としては 「臨床経過からは説明が難しい意識障害」 あるいは 「画像検査とは解離する意識障害」 があげられます。
このようなセッティングで求められるのは詳細な診察です。 なぜならNCSEには何かしらの微細な神経症候があることがほとんどだからです。 「意識障害+α」 のαを診察で見つけましょう。 例えば、 よく観察するとミオクローヌスや眼振などが潜んでいることがあります。 一方で、 一点凝視や自動症、 失語症などの表現型としてNCSEを呈することもあります。
注意として、 NCSEの神経症状は必ずしも持続的に出現しているわけではありません。 重症心不全患者で、 VTが頻発するときも、 その不整脈が出ている時とそうでない時間帯がイレギュラーに混在していますよね? それと同じでNCSEという一種の脳機能の不全状態にあるわけですから 「その症候としてのミオクローヌスや失語症状は発作としては出現しては、 一過性に目立たなくなる」 を繰り返しています。
つまり、 そこにはある程度一定のインターバルが存在するのです。 そのため、 診察のタイミングが悪ければNCSEの神経症候を見逃してしまう可能性だってあるでしょう。 逆に、 NCSEを症候面から除外したいのであれば少なくとも数分単位で患者を観察しなければなりません。 経験的には短くても1-3分、 長ければ5-10分程度は必要です³⁾。
ICUでの意識障害患者で、 バイタルサイン的には落ち着いているはずなのに、 誘引なく一過性のバイタルの変化をくり返すことがありNCSEの発作症状としてありえます。
具体的には、 心機能や酸素化、 インアウトバランスも問題ないのに 「誘因なくHRが90/minから120/minに上がってアラームが鳴り、 1分弱で勝手に落ち着く」 というイベントを繰り返します。 NCSEとしての発作が自律神経系を巻き込めば頻脈や血圧上昇などが一過性に出現するのです。 そのようなケースではICUでのモニターのトレンドグラフが参考になるでしょう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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