メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
7ヶ月前
Optimal Duration of Antibiotic Therapy in Patients With Hematogenous Vertebral Osteomyelitis at Low Risk and High Risk of Recurrence
研究デザイン
後ろ向き観察コホート研究。
実施施設、 研究期間
韓国国内の5つの3次医療施設において、 2005~2012年に実施。
対象
微生物学的に証明されたHVO患者370例をスクリーニングし、 最終的に345例が対象となった。
除外基準には非血行性感染、 菌陰性例、 手術後1年以内のHVO、 または治療期間が4週間未満の症例が含まれた。
評価項目
再発率 (微生物学的再発および臨床的再発)
抗菌薬による治療期間、 手術の有無、 リスク因子の影響
MRSA感染などが再発リスク因子
多変量解析により、 MRSA感染 (aOR 2.61、 95%CI : 1.16–5.87、 p=0.02)、 未排膿の傍脊椎/大腰筋膿瘍 (aOR 4.09、 95%CI : 1.82–9.19、 p=0.001)、 末期腎不全 (aOR 6.58、 95%CI : 1.63–26.54、 p=0.008) が独立した再発リスク因子として特定された。
高リスク患者は8週間以上の治療で再発率低下
高リスク患者では抗菌薬治療期間が短いほど再発率が高く、 4~6週間で34.8%、 6~8週間で29.6%、 8週間以上で9.6%だった (p=0.002)。
低リスク患者では4~6週間で12.0%、 6~8週間で6.3%、 8週間以上で2.2%と、 再発率がさらに低かった (p=0.02)。
病原菌はS. aureusが最多、 うち約半数はMRSA
分離された病原菌の中で最も多かったのはS. aureusで全体の58.8%を占め、 そのうち43.3%がMRSAだった。 また、 グラム陰性菌は21.7%、 ストレプトコッカス属は11.3%が検出された。
初期治療は静脈内抗菌薬、 約4割が手術実施
全患者で初期治療に静脈内抗菌薬が使用され、 治療期間の中央値は49日間だった (IQR : 34–67日)。 さらに、 51.3%の患者に経口抗菌薬が追加され、 総治療期間の中央値は68日間 (IQR: 46–100日) であった。
153例 (44.3%) では手術的デブリードマンが実施され、 再発率の低下が確認された。
フランスで実施された無作為比較試験では、 化膿性椎体炎の治療期間は6週間と12週間で非劣性が確認されており¹⁾、 これを基に米国感染症学会のガイドラインでは6週間の治療が推奨されています²⁾。
一方で、 その後の韓国からの本研究では、 MRSA感染、 未排膿の傍脊柱筋膿瘍や腸腰筋膿瘍、 末期腎不全患者において再発率が高いことから、 最低8週間の治療が推奨されました。
したがって、 椎体炎の治療期間は一般的には6週間が標準とされますが、 本研究をもって高リスク患者においては、 治療期間を8週間に延長することが再発リスクの低下につながる可能性があります。 治療期間については臨床経過を踏まえ、 個別に判断されるべきです。
さらに、 点滴静注から内服治療への切り替えに関しては、 大規模な研究が不足しているため、 現時点では明確な結論は得られていません³⁾。 今後の研究によるエビデンスの蓄積が期待されます。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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