【臨床Q&A】PD-L1 CPS 5未満のHER2陰性進行胃がんに対する初回治療は?
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HOKUTO編集部

2年前

【臨床Q&A】PD-L1 CPS 5未満のHER2陰性進行胃がんに対する初回治療は?

今週の臨床Q&A (オンコロジー)

PD-L1 CPS 5未満のHER2陰性進行胃がんに対する初回治療のファーストチョイスは?

HOKUTOユーザーの医師57名に聞きました。

(実施期間:2023年3月15日から3月22日)
【臨床Q&A】PD-L1 CPS 5未満のHER2陰性進行胃がんに対する初回治療は?
アンケート結果:SOX+ニボルマブ併用療法が最多で、 次点はS-1+オキサリプラチン (SOX) 療法となりました。

専門医の解説

解説医師:山本 駿先生

国立がん研究センター 中央病院
頭頸部・食道内科

切除不能進行胃がんの予後改善を目指して、 本邦も含め世界中で長らく薬剤開発が進められてきたが、 その多くが全生存期間 (OS) の延長を証明できなかった。

当時はSP療法が切除不能進行胃癌の初回治療の標準に

そのような中、 日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) が実施したJCOG9912試験は、 当時の胃がんに対する一次治療の標準治療であった5-FU療法を対照として、 S-1単剤の非劣性およびシスプラチン (CDDP) +イリノテカン (IRI) 併用療法の優越性を検討したランダム化比較試験 (RCT) である。 最終的にOS中央値は5-FU療法で10.8カ月、 CDDP+IRI併用療法で12.3カ月と優越性は証明できなかった (HR 0.85、 95%CI 0.70-1.04) が、 S-1単剤で11.4カ月と非劣性が証明された(同0.83、 0.68-1.01)¹⁾。

同時期にS-1単剤を対照として、 S-1+CDDP併用 (SP) 療法の優越性を検討したRCTであるSPIRITS試験が行われ、 OS中央値はS-1単剤の11.0カ月に対し、 SP療法では13.0カ月と優越性が証明された (HR 0.77、 95%CI 0.61-0.98)²⁾。

これらから、 当時はSP療法が切除不能な進行胃がんの初回治療の標準治療として確立された。

その後、 SOX療法がSP療法とほぼ同等の位置付けに

一方、 第三世代のプラチナ系薬剤であるオキサリプラチンを用いた治療開発も行われ、 SP療法を対照として、 S-1+オキサリプラチン併用 (SOX) 療法の非劣性を検討したRCTであるG-SOX試験が行われた。

OS中央値はSP療法で13.1カ月、 SOX療法で14.1カ月と非劣性は証明されなかった (HR 0.969、 95%CI 0.812-1.157)³⁾。

しかし海外で実施されたREAL-2試験⁴⁾の結果も加味され、 SOX療法はSP療法とほぼ同様の治療効果を示したと考えられた。

現在はニボルマブ併用が標準治療として確立も、 CPS 5未満例では議論の余地あり

またToGA試験⁵⁾の結果から、 HER2 statusによる治療選択が確立され、 約80%のHER2陰性例では前述のエビデンスより2剤併用療法が標準治療とされていた。

そのような中、 後治療で有効性を証明したニボルマブを初回治療に上乗せする治療法の優越性を検討したRCTであるCheckMate 649試験が行われた。 登録された全集団において、 ニボルマブの上乗せがOSを有意に延長することが証明された (HR 0.80、 99.3%CI 0.68-0.94)⁶⁾。

さらにATTRACTION-4試験⁷⁾の結果も踏まえて、 現在ではHER2陰性の初回治療はニボルマブと2剤併用化学療法が標準治療として確立されている。

しかしCheckMate 649試験では、 PD-L1 CPS 1以上のみの症例ではHRが0.77、 PD-L1 CPS 5以上の症例ではHRが0.71⁶⁾とPD-L1 CPSが高い集団で絞るとニボルマブの上乗せ効果が高まる可能性が示唆されている。

そのため、 特にPD-L1 CPS 5未満の症例における初回治療へのニボルマブの上乗せは議論の余地がある。

参考文献

  1. Fluorouracil versus combination of irinotecan plus cisplatin versus S-1 in metastatic gastric cancer: a randomised phase 3 study.Lancet Oncol. 2009 Nov;10(11):1063-9.PMID: 19818685
  2. S-1 plus cisplatin versus S-1 alone for first-line treatment of advanced gastric cancer (SPIRITS trial): a phase III trial.Lancet Oncol. 2008 Mar;9(3):215-21.PMID: 18282805
  3. Phase III study comparing oxaliplatin plus S-1 with cisplatin plus S-1 in chemotherapy-naïve patients with advanced gastric cancer. Ann Oncol. 2015 Jan;26(1):141-148. PMID: 25316259
  4. Capecitabine and oxaliplatin for advanced esophagogastric cancer. N Engl J Med. 2008 Jan 3;358(1):36-46.PMID: 18172173
  5. Trastuzumab in combination with chemotherapy versus chemotherapy alone for treatment of HER2-positive advanced gastric or gastro-oesophageal junction cancer (ToGA): a phase 3, open-label, randomised controlled trial.Lancet. 2010 Aug 28;376(9742):687-97.PMID: 20728210
  6. First-line nivolumab plus chemotherapy versus chemotherapy alone for advanced gastric, gastro-oesophageal junction, and oesophageal adenocarcinoma (CheckMate 649): a randomised, open-label, phase 3 trial.Lancet. 2021 Jul 3;398(10294):27-40.PMID: 34102137
  7. Nivolumab plus chemotherapy versus placebo plus chemotherapy in patients with HER2-negative, untreated, unresectable advanced or recurrent gastric or gastro-oesophageal junction cancer (ATTRACTION-4): a randomised, multicentre, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2022 Feb;23(2):234-247.PMID: 35030335
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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