海外ジャーナルクラブ
2年前
Chenらは, アトピー性皮膚炎患者を対象に, JAK阻害薬治療に伴う静脈血栓塞栓症 (VTE) のリスクについて系統的レビューとメタ解析で検討. その結果, 現在利用可能なエビデンスでは, アトピー性皮膚炎またはJAK阻害剤による治療に関連したVTEリスクの増加は検出されないことが示唆された. 本研究は, JAMA Dermatol誌において発表された.
JAK阻害薬による血栓症発生の機序は解明されていないことから, まずは大規模データセットで関連性が認められないという本研究成果は臨床現場に安心を与えると思います.
アトピー性皮膚炎患者におけるVTEのリスク, 特にJAK阻害薬の治療を受けている場合のリスクは不明である.
アトピー性皮膚炎とVTE発症との関連を検討したコホート研究, およびJAK阻害剤を投与されたアトピー性皮膚炎患者におけるVTE発症を報告したRCTが対象.
主要評価項目は、 JAK阻害薬群と対照群 (プラセボまたはデュピルマブ投与) とのアトピー性皮膚炎に関連するVTE発症のHRとリスク差とした.
2件のコホート研究および15件のRCTが含まれ, 合計466,993人が参加した.
メタ解析では, アトピー性皮膚炎とVTE発症との有意な関連は認められなかった.
HR 0.95, 95%CI 0.62-1.45, VTE発症率:0.23イベント/100患者年.
JAK阻害薬群:0.05% (5,722名中3名)
対照群:0.03% (3,065人中1名)
100人年当たりのVTE発生率
この結果は, 4種類のJAK阻害剤 (アブロシチニブ, バリシチニブ, ウパダシチニブ, SHR0302) でほぼ同様であった.
この系統的レビューとメタ解析の結果は, 現在利用可能なエビデンスでは, アトピー性皮膚炎またはJAK阻害剤による治療に関連したVTEリスクの増加は検出されないことを示唆している. これらの知見は, 臨床医がアトピー性皮膚炎患者に対してJAK阻害剤を処方する際の参考となり得る.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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