「TAVI県内初導入から1000例へ。 高齢化が進む高知の地域医療を牽引する循環器医療」 社会医療法人近森会 近森病院心臓血管外科 入江博之理事長 (前編)
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インタビュー

1ヶ月前

「TAVI県内初導入から1000例へ。 高齢化が進む高知の地域医療を牽引する循環器医療」 社会医療法人近森会 近森病院心臓血管外科 入江博之理事長 (前編)

 「TAVI県内初導入から1000例へ。 高齢化が進む高知の地域医療を牽引する循環器医療」 社会医療法人近森会 近森病院心臓血管外科 入江博之理事長 (前編)
2014年に高知県初のTAVI (経カテーテル的大動脈弁置換術) を導入し、 2026年5月14日に実施件数1000例を突破した近森病院。 全国でも数少ないTAVI指導施設へと飛躍を遂げた同院の躍進と今後の展望について、 社会医療法人近森会・入江博之理事長(岡山大卒)に聞いた。 

近森病院 心臓血管外科 概要

心臓大動脈手術では中四国地区有数の症例数を誇る。 多職種が連携するハートチームによる医療の提供と、 術後の早期離床・社会復帰を目指す 「超早期リハビリ」 に注力している。 2014年に 「TAVI (経カテーテル大動脈弁植え込み術) 」 を開始。 2019年には四国初のTAVI専門施設に認定。 2023年にTAVI指導施設に昇格した。

県内でTAVIをいち早く導入し、 累計1000症例に到達

――2014年という早い段階でTAVIを導入されて以来、 目覚ましいスピードで実績を積まれています。

「2015年は年間40例ほどだった症例数も、 右肩上がりに増加を続け、 近年は年間120 例を超える実績を維持しています。 その結果、 2026年5月には累計症例数が1,000件に到達しました。 さらに機能不全を起こした外科生体弁に対し、 カテーテルで新たな生体弁を植え込む『TAV in SAV』や、 TAVI弁の経年劣化などによる再治療として『TAV-in-TAV』なども行っており、 絶えず高度な治療を提供しています」

 「TAVI県内初導入から1000例へ。 高齢化が進む高知の地域医療を牽引する循環器医療」 社会医療法人近森会 近森病院心臓血管外科 入江博之理事長 (前編)
県内初TAVI1例目手技の様子。 記念すべき1例目の治療を担当した入江理事長(写真右)と川井院長(写真左)

「またこの実績の背景には、 患者さんの血管の太さや状態に合わせて4つのアプローチ手法 (経大腿、 経心尖、 経大動脈、 経鎖骨下動脈) を使い分ける技術力と、 それを支えるハートチームの存在があります」

――TAVI導入の背景についてお聞かせください。

「私がTAVIを知ったのは、 2010年に、フランス人の有名心臓外科医の講演を聞きにシカゴへ行った時のことです。 講演の前に新しい術式発表があり、 そこでTAVIが紹介されていましたが、 当時は約3割が死亡するというとんでもない内容でした。 ただ、 開胸手術に比べて患者さんの負担は少ないため、 高齢化が進む高知県では魅力的な医療だという思いもあり、 その後も情報だけは集めていました」

「その後、 当院の病棟を新しくする計画が持ち上がった際に、 思い切ってTAVIの導入を提案しました。 採算が合わない可能性も高かったものの、 前理事長の近森正幸相談役が『将来性のある先端医療は取り入れる』と決断し、 導入に踏み切りました。 あの時の決断があったからこそ、 当院の今があり、 地域の医療にも貢献できていると感じています」

治療を根底で支える 「ハートチーム」

――チーム医療を支えるハートチームについて教えてください。

TAVIの成功を根底で支えているのが、 当院が全国に誇る『ハートチーム』です。 循環器内科、 心臓血管外科、 麻酔科、 放射線科の医師をはじめ、 手術室やカテーテル室の看護師、 臨床工学技士、 放射線技師、 理学療法士など多岐にわたる専門職で構成されています」

 「TAVI県内初導入から1000例へ。 高齢化が進む高知の地域医療を牽引する循環器医療」 社会医療法人近森会 近森病院心臓血管外科 入江博之理事長 (前編)
TAVI1000症例の到達記念写真

「とはいえ、 TAVI導入にあたって新たに特別な組織を作ったわけではありません。 当院では2002年に集中治療室内に『ハートセンター』を開設して以来、 長年にわたり診療科の垣根を越えたチーム医療の土壌を培ってきました」

「もともと当院には、各職種がお互いの専門性を尊重し、 日常的に電話一本でコミュニケーションが完結するほどの風通しの良さがあります。 各職種がお互いの専門性を尊重し、 個々のプロフェッショナリズムを最大限に引き出す文化の土壌があったことも、 チーム医療が円滑に進んでいる要因ではないでしょうか」

――働き方改革が進む中、 チームのあり方も変化していますか?

「医療現場での働き方改革は急務ですが、 医療水準を絶対に落とすわけにはいきません。 そのためには従来の医師中心の業務を見直し、 多職種へのタスクシフトの推進が不可欠です」

「当院では早期より、 特定行為研修を修了した看護師などの専門人材を育成し、 様々な職種がさらに一歩踏み込んで患者さんのケアに介入する体制を構築しています。 医師のみが行う仕事とチームで分担する仕事を明確にし、 全員の協力で乗り切ることで、 質の高い医療の提供と労働環境の改善を両立させています」

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TAVI1000症例目の手技の様子

――今後の展望についてお聞かせください。

「日本はこれからますます高齢化していきます。 その中でも高知県は、 特に高齢化が進んでいる地域です。 従来の開胸手術よりもTAVIの方が適切なケースも増えてくるでしょう。 ひどくなってから治療するよりは、 早いうちに治した方が全身状態がよくなり、 健康寿命も延びます。 単に患者さんの寿命を延ばすのではなく、 自分で畑を耕したり買い物に行ったりと、 これまで通りの日常生活を長く送れるようサポートしていくことが最大の目標です」

「現在当院には、 TAVIの指導医が6人、 そのうちプロクター (他院の指導も行うインストラクター) が1人います。 今後ますます増加するであろう高齢の弁膜症患者さんに対応するため、 指導施設として若手医師やスタッフの育成にも注力し、 地域医療の最後の砦として、 常に進化を続ける循環器医療を提供していきたいと考えています」

プロフィール

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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