HOKUTO編集部
1ヶ月前
成人T細胞白血病/リンパ腫 (Adult T-Cell Leukemia/Lymphoma: ATL) は、 HTLV-1ウイルスに関連するまれな末梢性T細胞リンパ腫であり、 なかでも急性型およびリンパ腫型は予後不良である。 ATLに関しては、 日本のガイドラインの方が詳細な点も多いが、 諸外国の診療方針も参考になる。 近年、 NCCNガイドラインにはsIL-2Rを用いたリスク分類や、 解説医師 (藤重夫氏) の研究グループによるmodified ATL-PI (70歳以下の予後指標) が取り入れられた。 一方で、 mLSG15レジメンが掲載されていないこと、 抗ウイルス療法に関する記載があること、 救援療法において十分な臨床的根拠が示されていない薬剤にも言及があることなど、 日本との違いにも留意が必要である。 本記事では、 NCCNガイドラインに基づき、 ATLの診断および治療に関する最新の知見を概説する。
ATLの診断には、 HTLV-1抗体検査陽性を必須とし、 臨床所見、 血液検査所見 (リンパ球数、 異常リンパ球の割合、 LDH、 補正Ca値)、 病理組織所見 (リンパ節生検など) を総合的に評価する。 末梢血中の異常な免疫表現型を示すTリンパ球が5%以上存在する場合も診断根拠の一つである 。
NCCNガイドラインでは、 日本の分類と同様に、 以下の4つの臨床サブタイプに分類される。
急性型は進行の早い病型であり、 白血病様細胞の出現、 高LDH血症、 高Ca血症、 臓器浸潤などを伴うことが多い。
無症状の場合は経過観察とし、 皮膚病変や腫瘍、 日和見感染などの症状がある場合には、 以下の治療を検討する。
予後指標 (Prognostic Index for Chronic and Smoldering ATL) に基づき、 患者は以下の3つのリスク群に分類される。
いずれのリスク群においても、 臨床試験への参加および抗ウイルス療法 (ジドブジン+インターフェロン) が推奨される。
一方、 高リスク例では全身化学療法も適応となり、 治療反応が得られた場合には、 同種造血幹細胞移植 (Allo-HCT) の実施を検討する。
急性型およびリンパ腫型はアグレッシブな経過をたどるため、 速やかな治療介入が必要である。
予後予測指標 : ATL-PIに加え、 70歳以下の患者を対象としたModified ATL-PIがある。
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初回治療 : 臨床試験への参加に加えて、 以下の治療が推奨されている (Preferred regimens)。
急性型およびリンパ腫型ではCNS再発のリスクがあるため、 髄腔内化学療法による予防が推奨される。 初回治療で奏効が得られた場合には、 治癒を目指した治療選択肢としてAllo-HCTを考慮する。
救援療法 : 臨床試験への参加に加えて、 以下の治療が推奨されている (Preferred Regimens)。
なお、 レナリドミドおよびモガムリズマブは、 Allo-HCT後の移植片対宿主病の発生率上昇と関連する可能性がある。
VCAP-AMP-VECP療法 (mLSG15) は、 日本の造血器腫瘍診療ガイドラインにおいて、 初発若年者のアグレッシブATLに対する標準治療として推奨されている。 一方、 今回紹介したNCCNガイドラインでは本レジメンへの言及はなく、 治療方針に差異がある点に留意が必要である。
📝 レジメン
📖 造血器腫瘍遺伝子パネル検査
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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