HOKUTO編集部
2年前
HOKUTOユーザーの医師75名に聞きました
アンケート結果:食道癌が最多で、 次点は非小細胞肺がんとなりました。
解説医師:山本 駿先生 (国立がん研究センター 中央病院 頭頸部・食道内科)
悪液質はタンパク質異化の異常な亢進により、 骨格筋の分解促進や糖質、 脂質の代謝異常を来し、 疲労感や食欲不振、 るい痩、 低アルブミン血症を引き起こす病態で、 進行がんを有する症例で時に初期より認められる。
がんに伴う悪液質に関しては、 欧州で発表されたガイドラインでは、 「前悪液質」、 「悪液質」、 「不可逆的悪液質」の三つの状態に分類され、 特に「不可逆的悪液質」の状態に陥ると、 予後は3カ月以内とされている¹⁾。
長らく悪液質に対する有効な薬剤は乏しく、 悪液質の状態に陥るとがん薬物療法などの治療介入が難しくなるケースがあった。 そのような中、 グレリン様作用を有する初のがん悪液質治療薬アナモレリンが開発された。 アナモレリンは視床下部では食欲亢進を促し、 下垂体では成長ホルモンの分泌を促進し、 肝臓でインスリン様成長因子-1を分泌することで、 筋蛋白の合成を促進することで悪液質改善に寄与する薬剤である²⁾³⁾。
本邦で行われた悪液質を伴う非小細胞性肺がんを対象に行われたプラセボ対照ランダム化比較試験では、 主要評価項目である12週の除脂肪体重変化量において、 プレセボ群の-0.17kg (95%CI -0.50-0.16kg) に対しアナモレリン群では+1.38kg (同1.04-1.73kg) と有意 (P<0.001) に改善していた²⁾。
また悪液質を伴う消化器がんを対象に行われた臨床試験では、 主要評価項目である除脂肪体重の維持/増加を認めた割合が63.3% (95%CI 48.3-76.6%) と下限が事前に規定した閾値 (30.7%) を上回り、 アナモレリンの有効性が示された³⁾。
有害事象に関しては、 心電図異常や高血糖、 肝機能異常等が報告された²⁾³⁾。
消化器がんを対象とした臨床試験では、 胃がん、 大腸がん、 膵がんが登録された³⁾ことから、 現状でアナモレリンが保険診療下で使用可能ながん種は、 非小細胞肺がんと胃がん、 大腸がん、 膵がんとされている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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