【EMERALD】HER2陽性未治療乳癌へのトラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン、 標準治療への非劣性を証明
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HOKUTO編集部

4ヶ月前

【EMERALD】HER2陽性未治療乳癌へのトラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン、 標準治療への非劣性を証明

【EMERALD】HER2陽性未治療乳癌へのトラスツズマブ+ペルツズマブ+エリブリン、 標準治療への非劣性を証明
HER2陽性進行・再発乳癌の1次治療における抗HER2抗体トラスツズマブ+抗HER2抗体ペルツズマブ+微小管阻害薬エリブリン併用療法について、 標準治療であるトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン系抗癌薬併用療法に対する非劣性を検証する第III相多施設共同非盲検並行群間無作為化比較試験EMERALDの結果より、 無増悪生存期間 (PFS) における非劣性が示された。 神奈川県立がんセンター乳腺外科部長の山下年成氏が発表した。 

低毒性・同等効果の治療開発が課題

トラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン系抗癌薬は、 再発または転移性のHER2陽性乳癌に対する標準治療である。

しかし、 タキサン系抗癌薬の毒性によって生じる有害事象は患者のQOLを低下させることから、 毒性は低く、 少なくとも同薬と同等の効果を有する代替療法の開発が必要とされている。

エリブリンは転移性乳癌患者の全生存期間 (OS) を改善することが示されており、 進行性乳癌に対する治療の鍵となる薬剤である。

446例を無作為化比較試験で検証

対象

トラスツズマブ エムタンシンを除いた化学療法歴がなく、 局所進行または転移を有する20-70歳のHER2陽性乳癌患者

ECOG PS 0/1、 左室駆出率 (LVEF) ≥50%、 主要臓器機能が保たれていることを条件とした。

方法

446例を以下の2群に1 : 1の割合で無作為に割り付けた。

  • エリブリン群 : 224例
エリブリン1.4mg/m²を1日目、 8日目に投与+トラスツズマブ+ペルツズマブを1日目に投与
  • タキサン群 : 222例
タキサン系抗癌薬 (ドセタキセル75mg/m²を1日目、 またはパクリタキセル80mg/m²を1日目、 8日目、 15日目に投与) +トラスツズマブ+ペルツズマブを1日目に投与

評価項目

主要評価項目

PFS

副次的評価項目

客観的奏効率 (ORR)、 OS、 患者報告によるQOLおよび神経障害、 安全性など

主要評価項目のハザード比 (HR) の95%CIの上限が1.33である場合に非劣性が証明され、 かつHRの95%Cl上限が1.25未満である場合に優位性を検証することとされた。

エリブリン群の非劣性を確認

患者背景

両群で概ね同様だった。

  • 年齢中央値 : 56.0歳(範囲29-70歳)
  • 閉経前 : 22.1~28.6%
  • ECOG PS0 : 82.1~84.2%
  • ER陽性 : 57.1~58.1%
  • 内臓転移あり : 65.2~65.8%
  • Stage4 : 58.0~59.9%
  • 周術期のタキサン系抗癌薬投与あり : 30.2~31.7%

主要評価項目

PFS中央値

  • エリブリン群 : 14.0ヵ月
(95%CI 11.7-16.2ヵ月)
  • タキサン群 : 12.9ヵ月
(同10.8-15.6ヵ月)
HR 0.95(同0.76-1.19)、 Log-rank検定 p=0.6817
事前に規定した非劣性の基準 (95%CIの上限<1.33) を満たしていることから、 エリブリン群の非劣性が確認された。

サブグループ解析の結果

少人数のサブグループを除き、 明らかに両群のいずれかが優位を示したサブグループはなかった。

副次評価項目

ORR

(完全奏効+部分奏効)
  • エリブリン群 : 76.8%
(うち完全奏効11.6%)
  • タキサン群 : 75.2% 
(同13.5%)

臨床的有用率

(完全奏効+部分奏効+長期間の病勢安定)
  • エリブリン群 : 88.8%
  • タキサン群 : 86.9%

OS中央値

  • エリブリン群 : 未到達
  • タキサン群 : 65.3ヵ月
HR 1.09(95%CI 0.76-1.58)
Log-rank p=0.7258

安全性評価

Grade3以上の全有害事象の発現率

エリブリン群 : 58.9%

タキサン群 : 59.2%

Grade3以上の各有害事象の発現率

(エリブリン群、 タキサン群の順に記載)
  • 発熱性好中球減少症 : 4.9%、 8.7%
  • 末梢感覚神経障害 : 9.8%、 4.1%
  • 末梢運動神経障害 : 1.8%、 0.5%
  • 皮膚関連事象 (爪疾患を含む) : 1.3%、 4.6%
  • 下痢 : 2.7%、 6.9%
  • 浮腫 : 0.4%、 6.9%
  • 心血管イベント : 0.4%、 1.4%

エリブリン併用が1次治療の選択肢に

山下氏は 「本研究はHER2陽性の局所進行または再発乳癌の1次治療において、 2種のHER2阻害薬との併用において、 タキサン系抗癌薬に対するエリブリンの非劣性を示した初めての試験である。 エリブリン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法は、 同疾患に対する現在の標準治療であるタキサン系抗癌薬+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法に比べて毒性は低いが同等の効果を示すことから、 同疾患の1次治療における選択肢となり得る」 と報告した。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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