東京女子医科大学「乳腺外科」新設――明石定子教授に聞く
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HOKUTO編集部

2年前

東京女子医科大学「乳腺外科」新設――明石定子教授に聞く

東京女子医科大学「乳腺外科」新設――明石定子教授に聞く
日本における乳がんの罹患率は、 以前は欧米に比べて比較的少ないとされてきたものの、 最近は少子化・食生活の欧米化などにより年々増加している。 こうした背景をもとに、 東京女子医科大学では、 2015年の第二外科学講座 (一般外科) と内分泌外科との統合を経て、 2021年に「乳腺外科」として独立し新たな体制となった。 
さらに昨年(2022年)9月には、 同科の教授・基幹分野長として、 明石定子氏 (前・昭和大学病院乳腺外科教授) が就任した。 明石氏といえば、 その腕を頼って全国から患者が訪れるほどのまさしく乳腺外科のプロフェッショナルであり、 これまで約3,000件の乳がん手術に執刀してきた実績を持つ。 
新体制のもとでの新たな挑戦について、 同氏に話を聞いた。 

2つの診療科が1つになったことで臨床研究に注力できる体制も整備

―東京女子医科大学では、 2021年に「乳腺外科」が新設されたそうですね。 その経緯や背景を教えてください。

本大学では、 以前は乳腺診療を「乳腺内分泌外科」と「第二外科」(一般外科)の2つの診療科で行っていました。 その体制が、 その後臓器別の診療体制に変わり、 さらに「乳腺外科」として独立しました。 昨今の国内の乳がん患者の増加を背景に、 本大学でも乳腺外科診療により注力するようになったためと思われます。 また女子医大としてブレストセンターを作ることは悲願だったと聞いています。

そのため、 現在の当科には、 もともとは乳腺内分泌外科に所属していた医師と第二外科に所属していた医師が集まっているかたちになります。

―新たな体制となり、 特に変化した点、 また注力されている点はありますでしょうか。

変化した点については、 まず私が就任後、 手術件数が増えていることが挙げられます。 有り難いことに、 受診患者数も増えており、 現在は手術も約二カ月待ちの状態です。 どの病院でもそうだと思いますが、 当院でも手術枠を増やすことはなかなか難しいのですが、 なんとか工夫しながらさらに手術件数も増やしていきたいと思っています。

またこれまで乳腺診療を2つの診療科で分担していたものが1つに統合されたことで、 乳腺外科医が一緒に取り組めるようになりました。 これにより医局の人員体制が充実し、 臨床研究に取り組む余裕も出てきました。 臨床研究については、 今後より注力していきたいと思っているところです。

学会発表や論文掲載含め、 学位の取得まで責任をもって指導

―貴科の教育内容や研究内容の特徴やアピールされたい点がありましたら、 お教えください。

学会単位の話になりますが、 実は現在、 日本乳癌学会の会員数は漸減しています。 会員の年齢層を見ると最も多いのが50〜60歳代であり、 若手医師の新入会者は年々減っています。 一方で、 国内の乳がん患者は著しく増加しており、 乳腺外科医の育成が当院だけではなく学会としても重要な課題となっています。

私自身も「すごく育ててきてもらった」という思いがあるので、 まずはそれを若い世代に伝えていきたい。 そのため当科では、 乳腺専門医の取得は当然のことながら、 学会発表や論文掲載を含め、 学位の取得まで責任を持って指導することをモットーに教育に力を入れています。

―現在の医局のメンバーもご紹介ください。

現在の医局のメンバー (常勤医5人、 非常勤医4人) は、 当院でもともと乳腺内分泌外科、 第二外科に所属していたメンバーが中心ですが、 外科診療全般で研鑽を積むなかで乳腺外科を専門とするようになった医師や、 救急医療や肝胆膵から転科してきた医師など、 さまざまなキャリアの人が集まっています。 私も双子の男の子の育児をしましたが、 現医局員もママさん外科医がいて、 家族ぐるみで仲良くしています。

東京女子医科大学「乳腺外科」新設――明石定子教授に聞く

ベテランのスタッフも多く、 私も当科に着任後、 まず感じたことが「非常にしっかり患者を診ているチーム」であるということでした。 まさしく「患者に優しい診療」を行えていると思います。

ベンチャー企業や理工学部との連携による新たな開発も挑戦

―今後新たに取り組んでいきたいことや挑戦されたいことはありますか。

実は最近、 ベンチャー企業と共同で新しい乳がんの早期診断法の開発に取り組み始めました。 呼気を用いた診断法で、 まだ現状では今後開発の見通しも十分に立っていない状況ではありますが、 実現できれば、 「マンモグラフィは痛い」と検診を敬遠するような方にも低侵襲で手軽な診断法になるのではないかと期待を寄せているところです。 現在でも、 乳がん検診の受診率は50%をなかなか超えないのが現状であり、 検診率の向上も課題になっています。

また当大学では、 早稲田大学との連携による教育施設 (通称:「ツインズ (TWIns) 」) において、 工学の技術と医療の技術を組み合わせ、 新しい医療機器などの開発にも取り組んでいます。 今後はこのような医工学の連携の取り組みも重要だと思っています。

具体的に取り組んでみたいと考えているのは、 乳がんの日本人患者のリスクモデルの構築です。 現在の日本には、 実はまだ乳がんのリスクモデルが構築されていません。 個人のリスクに応じて検診の頻度を変えるというようなことも今後の検診体制には必要になってくると思います。

乳腺外科は働き方の選択肢が多様なことも魅了

―最後に、 乳腺外科診療に関心を寄せている、 または貴科への入局を検討しているHOKUTO医師会員にメッセージをお願いいたします。

まずは乳腺外科に興味を持っていただけたらと思います。 乳腺外科の魅力は、 手術だけでなく、 診断から治療、 緩和医療までトータルで携わることができることも当然ありますが、 それに伴い、 最終的にどのように働くかの選択肢も幅広いということも挙げられます。

最近では乳がん患者が増加していることを背景に、 乳腺専門のクリニックを開業する方も増えてきました。 もちろん、 大規模な病院で手術をメーンに仕事をするという選択肢もありますし、 検診業務をメーンに携わるという選択肢もあります。 このように、 働き方としてさまざまな選択肢があることは、 若い世代の医師にとっては魅力になるでしょう。

また当科に入局いただければ、 手術指導から専門医取得、 学位取得、 論文執筆指導までしっかりとバックアップできる体制が整っていますので、 興味が少しでもある方はまずはぜひ見学にいらしてください!


乳腺外科説明会

下記の日程で、 専門医取得過程および研修システムについての説明会を開催いたします。 乳腺外科にご興味をお持ちの先生方は是非お気軽にご参加ください。 

日時

・5月26日 (金) 18:00~

・6月14日 (水) 18:00~

開催方法

オンライン開催 (zoom)

参加方法

ご希望の日時を乳腺外科事務の長井 (nagai.wakako@twmu.ac.jp) までお知らせください。 URLをお送りいたします.

こちらの記事の監修医師
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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