寄稿ライター
1ヶ月前
医局ウォッチャーこと、 コアライ ミナトです。 連載21回目のテーマは、 「派遣医師の引き揚げ」 です。
2024年4月に医師の働き方改革が始まりました。 労働環境の改善は良いことですが、 規則を守るために医師の集約化が起こり、 関連病院から医局員が引き揚げられるのではないか、 という懸念もありました。
実際にはどういった影響があったか、 厚労省が調査結果を発表しました。
【資料1】を見て下さい。 厚労省の調査によると、 働き方改革が原因で派遣を減らされた病院は、 約5%とのことでした。 これは 「影響はあったものの、 医療が崩壊するというほどのものではない」 という数値かと思います。
ただ制度開始から1年未満での結果であり、 これから人事の時期を経ていく過程で影響が大きくなっていくかもしれません。
僕自身、 医局員時代に関連病院からの撤退を何度か目にしました。 ここからはその経験をもとに、 医局員視点での影響を解説していきます。
医局員にとって一番のメリットは、 「不人気なポストから削られていく」 ということです。
どこのポストを残すかは医局側に選択肢があるわけなので、 どうしても希望者の少ない、
といった病院は削られやすいです。
もちろん当初の目的である 「集約化された病院での労働環境の改善」 も大きなメリットです。
デメリットは、 「上のポストが詰まってしまう」 ことです。
大学などでバリバリ出世したい人は多くないかもしれません。 ただ、 そうはいってもある程度役職が上がっていかなければ、 給料も上がりません(ただでさえ安いのに)。
近隣の関連病院に出ようにも、 「希望者が列を作っている」 という状況になりかねません。
「経験を積みにくくなる」 のもデメリットでしょう。 人数が多くなれば、 症例を分け合うことになります。 人手が多いとサポートも手厚くなるのは良い点なのですが、 「冷や汗をかきながら、 腹をくくって自分一人の判断で切り抜ける」 ような経験は得にくくなります。
「医局外でも生きていける!」 と自信を持てるタイミングが、 これまでより遅くなるかもしれませんね。
経験上、 関連病院からの撤退は一時では終わりません。 撤退予備軍の病院を、 複数抱えている医局も多いのです。
例えば以下のような状況です。
「新たな希望者は出てこなさそうな僻地だから撤退したいけど、 あの病院の先生は現地で家を建ててしまっているんだよな。 当面は維持するけど、 あの人が引退したら撤退だな」
ちなみに、 今回の統計はあくまで、 引き揚げがあった医療機関数です。 今年は1人減、 来年は2人減…といった変化は反映されにくいでしょう。
「制度が固まったからそこで完了」 ではなく、 今後も少しずつ医局派遣の撤退は続くのではないかと予想しています。
関連病院からの医師の引き揚げについて、 医局員の立場から解説しました。 「不本意な異動が減る代わりに、 ステップアップする機会も減るのでは」 と考えています。
さて、 今回は以上です。
>>著者が運営するブログはコチラ : 「勤務医のマーチ」
厚生労働省 : 令和6年度医師の働き方改革の施行後状況調査 調査結果
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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