HOKUTO通信
1年前
2024年度の診療報酬改定を巡る議論が大詰めを迎えている。 財務省側が診療所 (20床未満) の報酬単価を5.5%引き下げる案を示したことについて、 医師の7割弱が 「理解できない」 と考えていることがHOKUTO編集部のアンケートで明らかとなった。
アンケートは11月30日~12月4日、 HOKUTOアプリ上で実施。 診療所の報酬単価引き下げについて 「理解できる」、 「理解できない」、 「どちらともいえない」 の3択で尋ね、 医師会員1,561人から回答を得た。
「理解できる」 も2割ほどいた。 HOKUTOには 「診療所を守ることが病院の負担軽減にもつながることを分かっていない」 という意見も寄せられた一方、 ある男性勤務医 (30代男性) は、 「開業医は勤務医より給与が高く、 コロナ禍でも病院に比べて優遇されていた面はある」 と明かす。
財務省は、 医師らの人件費などに当たる診療報酬の 「本体部分」 を減らそうとしている。 医療費を抑制し、 岸田政権が掲げる 「異次元の少子化対策」 の財源を捻出するためだ。
いわゆる 「マイナス改定」 を主張する根拠としているのは、 全国の財務局が入手した約2万法人の事業報告書などを集計した独自調査。 11月20日の発表によると、 診療所の経常利益率 (2022年度) は8.8%で、 2020年度の3.0%から急増し、 全産業やサービス産業 (経常利益率3.1~3.4%) と比較して 「儲け過ぎ」 だと指摘している。
財務省は診療所の報酬単価を5.5%引き下げることで、 国民の保険料負担が年間2400億円程度軽減されると見込む。 これは改定率のマイナス1%程度に相当する。
一方、 厚労省は11月24日、 2022年度の 「医療経済実態調査」 で一般病院の利益率は前年度比1.2㌽悪化し、 6.7%の赤字だったと公表。 今年度は物価高の影響や医療従事者の賃金上昇分の反映などにより、 赤字が10.2%に広がるとの試算も示した。
コロナ関連の補助金を含めると、 一般病院は1.4%の黒字に転じるが、 補助金は2024年度になくなる見通し。 厚労省関係者は 「実態調査の公表によって、 医療界全体で見れば診療報酬の増額は必須だと訴えた形」 と解説する。
日医も 「財務省側の意見書は医療従事者の心を折るもの」 と反発。 インフレや賃金上昇に対応するため、 自民党が政権復帰した2012年以降、 最大の0.73%を上回るプラス改定を求めている。
日医を含む約40団体が参加する 「国民医療推進協議会」 は今月4日、 診療報酬のプラス改定向けた決起集会を東京都内で開催。 自民の田村憲久政調会長代行は 「報酬の引き下げは日本の医療全体が崩壊していく」 と強く反発した。
「物価高が続く中、 国民負担の軽減につながるマイナス改定が現実的だ」 (霞が関関係者) と見る向きもある一方、 「今後の選挙に向けて業界団体と良好な関係を維持するべき」などの理由でプラス改定を求める声もあるという。 医療職の賃上げに対応する原資を診療報酬とは 「別枠」 で確保する案も浮上している。
「診療報酬の議論は、 財務省か厚労省どちらか一方の希望が100%通ることはなく、 議員の顔ぶれが影響することもある」 (全国紙の厚生労働担当記者) といい、 最終的には 「政治判断」 の要素が色濃い。 年末まで熾烈な綱引きが続きそうだ。
財政制度等審議会:令和6年度予算の編成等に関する建議
厚生労働省:第24回医療経済実態調査の報告 (令和5年実施)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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