【IBDマニュアル】クローン病の肛門病変(水島 恒和先生)
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【IBDマニュアル】クローン病の肛門病変(水島 恒和先生)

【IBDマニュアル】クローン病の肛門病変(水島 恒和先生)
本コンテンツでは原因不明で治療が困難な炎症性腸疾患 (IBD) について、 疫学・病態・治療などの観点から解説を行います。 最新のエビデンスを基にしておりますので、 是非臨床の参考としていただければ幸いです。

監修:水島恒和先生 (大阪警察病院消化器外科)


1.クローン病の肛門病変の特徴

肛門周囲は回盲部と並ぶクローン病の好発部位とされる。 その特徴を以下に示す¹⁾。

(1) 合併頻度

クローン病診断時に48.2%の患者さんが肛門病変を合併。 特に40歳未満で診断される患者さんに肛門病変の合併率が高い。

(2) 経過

肛門病変は難治化することも多く、 疲労感や日常生活の制限など患者さんのQOLを大きく低下させる。 肛門病変が先行する患者さんも多く、 Ulcerated edematous pile、 Skin tagなど特徴的な外観がクローン病の診断契機となることもある。

(3) 評価と分類

以下のHughesらの分類²⁾が良く用いられるが、 痛みなどのため通常の診察室では十分な診察が難しい場合も少なくない。

Hughesらの分類
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Perianal disease in Crohn's disease. Allan RN(ed): Inflammatory bowel disease(2nd ed). New York. Churchil Livingstone, 1990, p351-631を基に作図

2.治療マネジメント

それぞれの症例に応じて、 ドレナージと薬物治療、 外科的治療で対応する¹⁾。

(1) ドレナージと薬物治療

肛門部瘻孔、 膿瘍に対しては先ず切開排膿による膿瘍のドレナージを行う。 軽症例 (日常生活に支障のない程度) では、 切開排膿とともにメトロニダゾールや抗菌剤投与 (ニューキノロン系、 セフェム系など) を行う。 一方、 中等症 (持続性の疼痛、排膿) ~重症では、 seton法によるドレナージ (図)¹⁾が第1選択である。

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厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業. 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」 (久松班) . 令和4年度分担研究報告書. 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和4年度 改訂版を基に作図

下部大腸に活動性病変がなく単純な瘻孔であれば瘻孔切除術が考慮される場合もあるが、 術後創治癒に時間がかかること、 再発率の高いことから一般にはあまり行われない。 なお、 複雑多発例や再発をくり返す場合は、 seton法によるドレナージを継続する。

参考:薬物療法の選択について

Primary lesion (原発巣) の治療として免疫調節剤、 生物学的製剤を導入する場合も、 あらかじめドレナージによって局所の感染巣を制御しておく必要がある。

2021年にヒト (同種) 脂肪幹細胞製剤であるダルバドストロセル (アロフィセル®注) が再生医療等製品として承認され、 少なくとも1つ以上の既存治療薬による治療を行なっても効果が不十分なクローン病複雑痔瘻に対する治療選択肢となった。 ダルバドストロセル (アロフィセル®注) 使用に際しては適正治療指針を遵守する必要がある。

(2) 外科的治療

人工肛門造設術 日常生活を制限する程の高度症状 (重症例) を諸治療によっても制御できない場合には人工肛門造設術を考慮する必要がある。

大腸癌の合併の場合 日本のクローン病患者に合併する大腸癌は直腸肛門部に好発し、 散発性大腸癌に比べて予後が悪いという特徴がある。 肛門部狭窄に対してはブジーを用いた拡張あるいは経肛門的拡張術を行い、 適切なクローン病関連大腸癌サーベイランスができる状態を維持する必要がある。

参考文献

  1. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業. 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」 (久松班) . 令和4年度分担研究報告書. 潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和4年度 改訂版. 2022
  2. Perianal disease in Crohn's disease. Allan RN(ed): Inflammatory bowel disease(2nd ed). New York. Churchil Livingstone, 1990, p351-631

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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