海外ジャーナルクラブ
1年前
Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group (EBCTCG)は、 1980年代以前と以後に行われた乳癌患者への局所リンパ節放射線療法の無作為化比較試験における有効性をメタ解析で検討した。 その結果、 1980年代以降の試験では局所リンパ節放射線療法が乳癌死亡率および全死因死亡率を有意に減少させたが、 それ以前の試験では有意な低下は認められなかった。 本研究は、 Lancet誌において発表された。
少しふわっとした印象を持つ解析結果かと思います。 著者らの言いたいことがLancet特有のimplication of all the available evidenceに記載されていましたので紹介します。 Our findings have implications for policy and for patients. Implementation of regional node radiotherapy could improve breast cancer survival at little or no additional cost.
1980年代以降、 放射線治療の安全性と有効性が改善され、 乳癌の局所リンパ節への放射線療法は再発と死亡のリスクを減少する目的で用いられている。 この療法の効果は1980年代以前あるいは以後において、 無作為化比較試験で研究されてきた。
あらゆる部位の再発、 乳癌死、 非乳癌死、 全死因死亡
17試験が特定され、 16試験 (被験者総数:1万4,324例) が解析対象となった。
1989~2008年に開始された8件の試験では、 局所リンパ節放射線療法により再発が有意に減少した。 主に遠隔再発が減少しており、 局所リンパ節再発はほとんど報告されていなかった。
率比 (RR) :0.88 (95%CI 0.81-0.95、 p=0.0008)
局所リンパ節放射線療法は乳癌死を有意に減少させたが、 非乳癌死に対する効果は見られなかった。 しかし結果として、 全死因死亡は有意に減少した。
試算例では、 15年乳癌死の推定絶対減少率は、 腋窩リンパ節転移のない女性で1.6%、 腋窩リンパ節転移が1~3個の女性で2.7%、 同4個以上の女性で4.5%であった。
1961~1978年に開始された8件の試験では、 局所リンパ節放射線療法による乳癌死への影響はほとんどみられず (RR 1.04、 95%CI 0.91-1.20、 p=0.55)、 非乳癌亡は有意に増加していた (RR 1.42、 95%CI 1.18-1.71、 p=0.00023)。 このリスクは主に20年目以降に現れ、 全死因死亡率も増加した (RR 1.17、 95%CI 1.04-1.31、 p=0.0067)。
1980年代以降の試験では局所リンパ節放射線療法が乳癌死および全死因死亡を有意に減少させたが、 それ以前の試験では効果が認められなかった。 これは1980年代以降の放射線治療の進歩を反映している可能性がある。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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