インタビュー
25日前

医師・医学生に特化したマッチングアプリ 「iCoi (イコイ) 」。 医学生時代に同アプリをリリースしたiCoi代表取締役で医師の小倉健太郎氏に、 起業したきっかけなどを聞いた。 (全2回の第2回)
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――医師を目指した理由をお聞かせください。
「正直に言えば、 子どもの頃から『難しい進路に挑戦したい』という気持ちが強かったことが大きいです。 同時に、 小学生の頃から『家族に1人くらい医師がいたほうがいい』と漠然と感じていたので、 進路を考えるなかで、 医学部は早い段階から有力な候補になっていました
「また、 人体の仕組みへの興味は当時から強く、 生物や化学の勉強が純粋に面白いと感じていました。 『挑戦したい気持ち、 知的好奇心、 家族を守れる仕事への漠然とした憧れ』の3つが重なった結果、 自然と医学部を選んでいました」

――東京大学時代に力を入れたことを教えてください。
「1年生の終わりごろから、 創業まもないスタートアップで3名の小さなチームの一員として、 1年ほどインターンシップをしました。 大学の授業がない日は朝からプログラミングを勉強し、 夕方まで業務に取り組む日々でした。 この時、 技術責任者の方からコーディングだけではなくシステム設計の考え方まで教わったことが、 後にiCoiを開発する上でのエンジニアとしての基礎になっています」
「2年生の夏頃からは、 救急医療の電子カルテシステムを手がけるTXP Medical株式会社でインターンとして、 データ解析やデータ構築に携わりました。 医療データを活用した論文執筆のご指導もいただき、 実際に病院のデータ部門に入ってカルテとの連携部分にも関わる貴重な機会をいただきました」
「2年生の終わり頃には、 ある方とのご縁もあり、 2年間休学してWebメディアの立ち上げ・運営を手掛けました。 多くの方に支えていただきながら、 『ゼロから事業を立ち上げて伸ばしていく面白さ』を初めて知った経験です。 一方で、 事業運営の難しさにも直面しました。 最終的には株式譲渡という形で会社を手放すことになり、 当初目指していた場所には届かず悔しさも残りました。 しかし、 その経験は後の挑戦を支える礎となり、 今の起業家としての原点につながっています」

――初期研修先に日本赤十字社医療センターを選んだのはなぜですか。
「2度見学に伺い、 働いている医師やコメディカルの方々の雰囲気がとても良かったこと、 当時志望していた脳神経外科の症例の幅広さ、 優秀な研修医が集まる病院として評判だったことなどを総合的に判断しました。 実際に研修を始めてからも、 期待を裏切らない恵まれた環境でした」
――iCoiを事業として始めた理由はなんですか。
「始まりはかなり学生らしい動機でした。 CBTやOSCEが終わって少し時間ができたタイミングで、 身近に感じていた『医師の出会いの課題』に対して、 自分たちで何か作ってみたい、 そんな気持ちで友人3人と始めたんです。 最初から大きな事業を目指していたわけではなく、 手を動かしながら課題を理解していく実験のような感覚でした」
――起業家としての道を歩もうと思った理由をお聞かせください。
「研修中、 患者さんの喜ぶ姿や上級医の素晴らしい指導、 人の力ではどうにもならない不条理まで、 医師の仕事の価値を本当にたくさん経験させていただきました。 それでも大学時代から、 事業作りの方が自分の興味として強いことに気づいてしまっていたんです」

「医師のレールというのは、 本当に強力です。 医学部に入ると、 実習、 国家試験、 初期研修、 後期研修、 専門医、 留学、 サブスペ——次々と目標が設定されていて、 各段階に尊敬できる先生方がいて、 自然と導かれていく。 そこから一度外れることの活性化エネルギーは、 想像以上に大きい。 専攻医のルートに進みたい気持ちも強くありましたし、 医師のレールを外れることが『逃げ』なのではないかという疑念も最後まで残っていました」
「最終的に背中を押してくれたのは、 何人かの先生方の言葉でした。 出身大学の医局の先生からは『まずはやりたいことをやったほうがいい。 1年後でも2年後でも、 医局に入ってくれていいから』と言っていただきました。 研修先で大変お世話になった指導医の先生にも『先生の選んだ道で頑張りなさい』と言っていただいて。 妻や家族の応援もあり、 一度レールを外れて、 事業に集中する道を選びました」
――医師と起業家の二刀流を実現する上で苦労した点はありますか。
「研修医時代は、 とにかく時間との戦いでした。 朝5時に起きて始業までの数時間と、 18時ごろ帰宅してから就寝までの時間に、 事業のタスクやミーティングを詰め込む毎日です。 それでも、 こなせるのはルーティン業務や細かい対応ばかり。 自分はディープワーク——腰を据えて深く考える時間こそが必要なタイプなので、 常に『何かをやり残している』という感覚が消えませんでした」

「事業を一歩進めるには、 市場や戦略を深く考える時間が不可欠です。 でも研修医として臨床に出ている以上、 まとまった時間を取ることがどうしてもできない。 先輩医師の中には、 バイトで週3日臨床・週3日事業という形で始めた方もいますが、 結局はバイトもやめて事業に専念せざるを得なくなったケースが多いと聞きます。 両立の難しさは、 想像していた以上でした」
――今後はどのようなキャリアを歩んでいきたいと考えていますか。
「医療業界の問題を一つでも解決することが大きな目標です。 アプローチには臨床・研究・行政・事業の4つの方向があると考えていて、 私は事業を選びました。 まずはiCoiでやれることをすべてやりきることが当面の目標です」
「その後は、 ここで得たつながりや資金を活かして、 ジャンルを変えてスタートアップエコシステムに再参入したい。 育てきった事業を次のステージに渡し、 自分はまた新しい問題に向かう。 そうやって一つずつ、 解決できる課題を増やしていきたいと考えています」

――起業を考えている医師に向けてアドバイスをお願いします。
「起業は手段の一つにすぎません。 長期的な価値を生み出すために、 自分にとってもっとも楽しく、 もっとも合っているアプローチがどれかを問い続けることが大事だと思います」
「同期や友人を見ていても、 USMLEを学生時代から受けてアメリカでレジデントになった人、 医学部を途中で離れて起業した人、 大企業や投資の世界に進んだ人——本当にさまざまな道があります。 彼らに共通しているのは、 他に目もくれず、 選んだ道で一つずつ困難を乗り越えていること。 迷っている先生方には、 まずいろいろなことにチャレンジしてみて、 自分が何に熱くなれるかを問い続けてほしいと思います」

>>ご相談はこちら Email:kentaro.ogura@i-coi.jp」

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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