【H0648g試験】HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブ+化学療法
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5ヶ月前

【H0648g試験】HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブ+化学療法

【H0648g試験】HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブ+化学療法
HER2を過剰発現する進行性転移性乳癌に対し、 従来の化学療法へのトラスツズマブ上乗せ効果を化学療法単独を対照に検証した第III相ランダム化比較試験H0648gの結果より、 無増悪期間 (TTP) に対する有効性が示された。

原著論文

解析結果

Use of chemotherapy plus a monoclonal antibody against HER2 for metastatic breast cancer that overexpresses HER2. N Engl J Med. 2001 Mar 15;344(11):783-92. PMID: 11248153

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H0648g試験の概要

対象

HER2を過剰発現*する進行性転移性乳癌患者

*IHC 2+または3+

方法

469例を以下の2群に1:1で割り付けた。

  • トラスツズマブ+chemo群 (235例:シクロホスファミド投与143例、 パクリタキセル投与92例 )
トラスツズマブ 初回4mg/kg、 2回目以降は2mg/kgを週1回投与 (病勢進行が認められるまで) +化学療法*
  • chemo単独群 (234例:シクロホスファミド投与138例、 パクリタキセル投与96例 )
chemo群で病勢進行が検出された時点で、 患者にはトラスツズマブを同用量で単独または他の治療法と併用する非無作為化非盲検試験に参加する選択肢が与えられ、 66%がこの試験を選択した。
*化学療法:ドキソルビシン60mg/m²またはエピルビシン75mg/m²+シクロホスファミド600mg/m² (アントラサイクリン系薬剤の投与歴なし) またはパクリタキセル175mg/m² (術後療法としてアントラサイクリン系薬剤投与歴あり) を3週毎に6サイクル実施

評価項目

主要評価項目:TTP

副次評価項目:奏効率 (ORR) 、 奏効期間治療成功期間 (TTF) 、 全生存期間 (OS) 

H0648g試験の結果

患者背景

  • 両群で同様であった。
  • 年齢中央値は51-54歳

治療状況

  • 投与期間中央値は、 トラスツズマブ+chemo群40週、 chemo単独群25週
  • トラスツズマブの投与回数の中央値は36回

追跡期間中央値

30ヵ月

TTP中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:7.4ヵ月
  • chemo単独群:4.6ヵ月
RR 0.51 (95%CI 0.41-0.63)、 p<0.001

シクロホスファミド投与集団

  • トラスツズマブ+chemo群:7.8ヵ月
  • chemo単独群:6.1ヵ月
RR 0.62 (95%CI 0.47-0.81)、 p<0.001

パクリタキセル投与集団

  • トラスツズマブ+chemo群:6.9ヵ月
  • chemo単独群:3.0ヵ月
RR 0.38 (95%CI 0.27-0.53)、 p<0.001

ORR

  • トラスツズマブ+chemo群:50%
  • chemo単独群:32%
p<0.001

奏効期間 (中央値) 

  • トラスツズマブ+chemo群:9.1ヵ月
  • chemo単独群:6.1ヵ月
p<0.001

TTF中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:6.9ヵ月
  • chemo単独群:4.5ヵ月
RR 0.58 (95%CI 0.47-0.70)、 p<0.001

OS中央値

  • トラスツズマブ+chemo群:25.1ヵ月
  • chemo単独群:20.3ヵ月
RR 0.80 (95%CI 0.64-1.00)、 p=0.046

chemo単独群では、 病勢進行後にトラスツズマブの非盲検投与を受けた患者も含まれた。

OSのサブグループ解析

IHCが3+の患者は、 2+の患者よりもトラスツズマブによる効果が大きかった。

有害事象 (AE)

  • 約25%でトラスツズマブの初回点滴中に悪寒、 発熱がみられたが、 注入速度を遅くすることで改善した。
  • 感染症は、 トラスツズマブ+chemo群47%、 chemo単独群29%に発生した。
  • トラスツズマブ+chemo群のうち、 25例 (シクロホスファミド投与集団19例、 パクリタキセル投与集団6例) がAEのため、 トラスツズマブの投与を中止した。

心臓毒性

  • 独立評価委員会が、 心機能障害の症例をレトロスペクティブに分析した。
  • 症候性または無症候性の心機能障害を有する患者は、 63例であった。
  • トラスツズマブ+chemo群:シクロホスファミド投与集団39例、 パクリタキセル投与集団12例
  • chemo単独群:シクロホスファミド投与集団11例、 パクリタキセル投与集団1例
  • 内科的治療を受けた44例のうち、 33例は状態が改善し、 5例は変化がなく、 4例で悪化し、 2例が死亡した。

著者らの結論

HER2を過剰発現する進行性転移性乳癌において、 トラスツズマブを従来の化学療法に追加することで、 TTPを有意に延長させ、 ORR、 奏効期間、 OSを改善させることが示された。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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