HOKUTO編集部
4日前
医療での生成AI活用のトップランナー、 大塚篤司先生によるChatGPT講座。 今回は、 日常診療で最も頻繁に行うカルテ作成業務に焦点を当て、 すぐに使える実践的なプロンプトを紹介します!
カルテ作成は医師の日常業務の大きな部分を占めているが、 ChatGPTを適切に活用することで、 記載の質を保ちながら効率を大幅に向上させることが可能である。
ただし、 第1回で強調したように、 患者の個人情報は絶対に入力せず、 生成された内容は必ず医学的妥当性を検証することが前提である。
活用シーン
患者の主訴・現病歴から鑑別診断を整理し、 カルテ記載のための構造化された文章を作成する。
プロンプト例
以下の症状情報を医学的に整理し、 カルテ記載用の構造化された文章を作成してください。 また、 主要な鑑別診断を3~5つ挙げてください。
症状情報 : [匿名化された症状情報をここに入力]
以下の形式で出力してください :
1. 主訴 :
2. 現病歴 : (時系列で整理)
3. 主要な鑑別診断 :
4. 今後の検査・治療方針 :
活用のコツ
● 患者名や生年月日などの個人情報は絶対に含めない
● 「50代男性」 「中年女性」 などの、 匿名化された情報を使用する
● 生成された鑑別診断は、 必ず最新のガイドラインで確認する
活用シーン
診察で得られた身体所見を系統的に整理し、 見落としがないかチェックしながらカルテ記載を支援する。
プロンプト例
下の身体所見を系統的に整理し、 標準的なカルテ記載形式に構造化してください。 また、 追加で確認すべき所見があれば提案してください。
診察所見 : [具体的な所見をここに入力]
以下の形式で整理してください :
1. 全身状態・バイタルサイン :
2. 頭頸部 :
3. 胸部 (心音・呼吸音) :
4. 腹部 :
5. 四肢・神経学的所見 :
6. 皮膚・その他 :
7. 追加で確認すべき所見 :
活用のコツ
● 所見は客観的事実のみを入力する
● 「正常」 「異常なし」 の所見も含めて入力すると、 より系統的な記載が可能になる
● 生成された 「追加確認項目」 は、 診察の質向上に活用する
活用シーン
診断と治療方針を整理し、 カルテ記載用の治療計画と患者説明用の文章を同時に作成する。
プロンプト例
以下の診断・治療方針について、 カルテ記載用の治療計画と患者説明用の分かりやすい文章を作成してください。
診断 : [確定診断または臨床診断]
治療方針 : [具体的な治療内容]
注意事項 : [副作用や注意点]
以下の2つの形式で出力してください :
【カルテ記載用】
治療計画 :
経過観察項目 :
次回受診目安 :
【患者説明用】
病状の説明 : (専門用語を避けた表現)
治療内容 : (分かりやすい言葉で)
注意事項 : (日常生活での注意点)
活用のコツ
● 薬剤名や用法用量は必ず添付文書で確認する
● 患者説明用の文章は、 患者の理解度に応じて調整する
● 重要な副作用や注意事項は、 必ず医師自身で補完する
一度にすべての情報を入力するのではなく、 「主訴→現病歴→身体所見→検査結果」 のように段階的に情報を追加していくことで、 より精度の高い出力を得られる。
よく使用するプロンプトは自分なりにカスタマイズし、 テンプレート化しておくことで、 さらなる効率化が図れる。
生成された文章の精度を評価し、 プロンプトを継続的に改善していくことが重要である。
カルテ作成でChatGPTを活用する際も、 医学的な思考プロセスを放棄してはいけない。 AIは、 あくまで文章作成の効率化ツールである。
生成された内容をそのまま使用した場合でも、 カルテの内容に対する医学的・法的責任は担当医師にある。
医学知識は常に更新されるため、 ChatGPTの出力内容も定期的に最新の知見と照合する必要がある。
本稿で紹介したプロンプトは理論的には有効であるが、 実際の運用には技術的なハードルが存在することも認識しておく必要がある。
多くの医療機関では、 電子カルテシステムと外部のAIツールとの連携が技術的に困難な場合がある。 ChatGPTで生成した情報をカルテに貼り付ける作業自体が、 システムの制約やセキュリティポリシーにより制限される施設も少なくない。 そのため、 本稿で紹介した手法を実際に活用できる施設は現状では限られているのが実情である。
しかし近年、 電子カルテに生成AI機能が直接組み込まれたツールが登場し始めている。 これらの統合型ソリューションを利用することで、 セキュリティを確保しながらAI支援機能をシームレスに活用することが可能になる。 今後はこのような電子カルテ統合型のAIツールが普及していくことが予想され、 技術的なハードルは徐々に解消されていくと考えられる。
現時点では、 各医療機関のIT環境と規定に応じて、 実現可能な範囲でAI活用を検討することが現実的なアプローチといえるだろう。
カルテ作成業務を効率化するための3つの実践的プロンプトを紹介した。 これらのプロンプトは、 情報セキュリティと医学的妥当性を確保しながら、 記載の質と効率を同時に向上させることを目的としている。
重要なことは、 ChatGPTを 「思考の代替」 ではなく 「文章作成の支援ツール」 として位置付けることである。 医学的判断は必ず医師自身が行い、 生成された内容は十分に検証した上で活用していただきたい。 継続的な学習と適切な活用により、 AI時代の医療の質向上に貢献していただければ幸いである。
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医師による医師のためのChatGPT入門
ChatGPTに苦手意識のある医師に向け、 基本的な使い方から日常業務での活用法までを、 会話形式で丁寧に解説。
医師による医師のためのChatGPT入門 2
GeminiやClaudeなどの登場で広がる最新の活用法を網羅。 前作に続き、 実例とともに理解が深まる構成。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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